此れ以上、甘やかさないで!

abang

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高梨律の初恋

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昔から律は穏やかな性格とその容姿も相まってよくモテた。
だけど本人は恋をした事はなく、その気持ちが分からず周りの感情に振り回されていた。


「なんで、律は私の事本当は好きじゃないでしょ!」


(それでもいいから、付き合ってみてよって言ったのに…)


勿論、好きになる努力はしたし。彼女を律なりに大切にしたつもりだった。


「理沙…「もういい!別れよう。」」


女性というものは本当に分からない生き物だと思った。


「…つかれた。」ドンッ


「あ、すみません。」
「すみません。」

その子を初めて見た時は美しい子だな、と思った。


「あれ…少しお疲れですか?って余計な事ですよね。」


と、苦笑いしながらバッグの中からエナジードリンクを取り出して手渡した。


「知り合いがいつも忙しそうなので、よく買うんです。」


そう言って笑った彼女はその人の事を大切なんだなぁと分かる表情をしていた。


「羨ましいな…」

「え?何がですか?」


思わず口に出た、こんなに大切そうな顔をしてくれるこの子に想われている相手が羨ましかった。


「なんでもないよ、ありがとう。」


「  」

「こんなとこに居たんですね、」


「愛慈、来てたの?すみません、もう行きます。」




彼女の言葉を遮るように少し離れた場所から此方に声をかけた男性の声に急いでカバンを持ってかけて行った。


(名前…きけてない)

そして、少し経ってから彼女が新入生だとわかった。


「藤堂 天音さんっていうんだ…」

「え、律が興味あるなんて珍しいね、」

「いや、そんなわけじゃ…」

「俺の好きなこ、その子と仲良いみたいなんだ。ダメ元で飯でも誘ってみる??」


そうして、陽翔にセッティングしてもらったが結局あの日も連絡先も聞けずじまいで後悔していた。


そしたら珍しく、電車に乗っている彼女を見つけて思わず強引に引き止めてしまい、すごく反省した。

が、花のような笑顔で断らずに連絡先を交換してくれた彼女に、律の心臓の音は落ち着かなかった。


(彼女の事を知りたい…この機会を大切にしよう。)



「高梨先輩?」

物思いに耽っていると、声をかけられてハッと気がついた。



「と、藤堂さんっ、」


「たまたま見つけたので声をかけたんですが…ご迷惑でしたか?」


「それは絶対にない!会えて嬉しいよ」


「そんな、大袈裟ですよ…ふふ」


小さく笑う藤堂さんがとても可愛くて、気づけば先に口が動いていた。



「あの、もしよかったら後で少しだけ付き合ってくれない?」


「へ…?あ、私ですか?」


「うん、甘いものでもどうかな?」


天音にとって帰りに友人と甘い物を食べてかえるなんて、ずっと憧れであった為、楽しみで目を煌めかせた。


「ぜひ、行きたいです!」


「じゃあ、あとで連絡するよ」


律は天音の姿が見えなくなると小さくガッツポーズをして、噛み締めるように蹲っていた。



ーー

「遅くなってすみません!」


「いや、全然大丈夫だよ。お疲れ様。」


「高梨先輩も、お疲れ様です、」


にこりと笑って言った天音だがどこか緊張しているようにも見えた。

学校から少し歩くと、女の子がいかにも好きそうな可愛いカフェがあり、天音はとてもわくわくした表情だった。



「俺も来てみたかったんだけど、男だけだと入り辛くて助かったよ」


「なんか…少し可愛らしいですね、ふふっ」


気が抜けたように笑った天音に律も安心した。




可愛いケーキと、紅茶が出ると二人は顔を輝かせてスマホで撮って、少し恥ずかしそうに笑った。


「すみません、行儀が悪くて…」


「いや、俺もつい撮ってしまったよ」


食べながら沢山の事を話し、天音は家の事もきちんと話した。
だが、律の答えは案外、拍子抜けしたものだった。


「へぇ、何かピンとこないけど。藤堂さんに偏見なんてもたないけどなぁ、たまたまそこが家なだけでしょ。」


って言われたのでまるで任侠の家に生まれたことがさほど、珍しく無いような気持ちになって、楽になった。



「あの、藤堂さん…その、名前で読んもいいかな?」


「えっ!あの……はぃ…どうぞ。」


「じゃあ、天音ちゃんで!俺の事も、律って呼んで欲しいな?」


にこりと笑ってキラキラした目で言うので、断れず、天音は恥ずかしそうに彼を名前で呼ぶ事にした。


「律先輩…?」

「うわ、どうしよう。めっちゃ嬉しい!」



それから店を出て、なんやかんやと攻防した末にいえまで送ってもらうことになった。




(どうしよう、愛慈に会ったら…ってなんで愛慈にびびってんのよ、しっかりして天音、絶対に恋をするのよ!)


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