悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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弟というには少し…

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馬車に乗ると、心配そうにシエラの頬を包み込んで「大丈夫?」と尋ねると頷いたシエラに口付けをしたジェレミア。


カーテンを閉めているとはいえ影で気付かれるだろう。



「あ….の、ジェレミー?」


「なに?姉様、リヒトに何かされなかった?」



「いえ、大丈夫よ。けれども…姉弟でははしないと聞いたの…。ジェレミーは私の弟だからキスしたり触れたりするのはおかしいのよ。」



「愛する恋人達がすることだと聞いたわ。」



ジェレミアは内心でリヒトに舌打ちした。


外に出せばいずれは知ることだが、今ではない筈だった。


シエラが逃げられぬほど、ジェレミアを欲し、離れていかなくなってから知るはずだった。



(リヒト、余計な事を…。)



「え…そうなの…?僕、姉様を愛しているから…僕は普通じゃないのかな……」



それなりの年齢でこれは多少無理があるだろうかと探り探りで可愛い弟の姿を演じるジェレミアは内心ドキドキしながらも、寂しそうに首を傾げた。




(姉としてよね…?ジェレミーはいつか私を殺すのだもの…)



「そうね…おかしくはないけれど、少し控えましょう。変な噂が広まるとジェレミーの妨げになるもの。」



「……。分かった。」



ジェレミアは納得はいかないものの、リヒトとはどうやら仲違いをした様子のシエラに安心していた。


(ニヤニヤと表情ひとつ隠せないバカな女だが、いい仕事をしてくれたみたいで助かったよメリー。)




「けれど、姉様…僕から離れて行く事は許さないよ。」



「…っ、ええ。勿論わかってるわ。」



どうやらリヒトと険悪だった事に機嫌のいいジェレミアの様子に、シエラはふと気付いた。


(安心させていれば、監視も緩くなるかもしれない。)




「姉様、リヒトとは本当に婚約解消を?」


「ええ、そのつもりよ。」


「そう。ならいいんだ。」


「ジェレミー、貴方は公爵との婚約を反対していたのね。てっきり、マッケンゼンの力が手に入るから貴方の将来にとってもいい選択だと思っていたのだけれど…」



ジェレミアは初めから反対だった訳では無かった。


どのみちリヒトはシエラを嫌っているし、シエラはジェレミアの言いなり。


婚約した所で、今の状況が変わるわけではないだろうと思っていたし、勿論自らの勢力を増やすと意味でもマッケンゼン公爵家の後ろ盾は皇帝になる上で一番の近道とも言えるものであったからだ。


(けれど…もうやめだ。リヒトあいつに姉様を奪られる位なら、マッケンゼンの力など要らない。)


「当たり前だよ、姉様。彼奴はずっと噂になっている女性がいるし、僕は姉様が心配なんだ…。」


「!」


「ただの噂だと思っていたけど、まさかマッケンゼン公爵家から彼女が出てくるなんて、しかも婚約者の来訪日に。リヒトは信頼に値しない。」



「ジェレミー、心配してくれていたのね…」


シエラは混乱した。前の人生でのジェレミアであれば決して彼の不利益になる破談などさせなかっただろう。


前世と現在の自らが違うように、ジェレミアもまた違うのだろうかと改めて感じた。



(それでも不安は拭えない。ジェレミーは純粋に私に姉として懐いてくれていても、いつか邪魔になれば私を殺すわ。それまでに…。)




「姉様、結婚がしたいなら僕が見繕ってあげるし、まだ急ぐ事はないんじゃない?もう少し僕を手伝ってよ。」



「ええ…勿論私が貴方の力なれるなら喜んでそうするわ。けれど…結婚は当分しないから相手は探さなくっていいわ。」



「…良かったよ。じゃあ姉様は僕が独り占めできるわけだ。」



そう言って無邪気に笑った筈のジェレミアに何故かいつもなら感じない違和感を覚えた。



(公爵とあんな話をしたからかしら…)


シエラの指先に自らの指先を愛おしそうに絡め、そっと身を乗り出すとシエラの唇に小鳥が餌を欲しがるかのように、浅く絡めては唇を離してを繰り返した。



純粋な筈のジェレミアの妖艶な瞳に何故だかやはり、何かが違うような気分になる。




そう、どうしてだか彼はまるで…

(弟というには、少し違う。恋人に束縛をされているような感じかしら…)



リヒトとは今まで形式上の婚約者ではあったが、恋人らしい事をした事はなく、恋人というものがどういうものなのかはシエラには分からなかったが、何故だかそう思った。



「殿下、到着いたしました。」


外から声が聞こえると、一瞬舌打ちしたようにも見えた。


「ジェレミー?」


「ああ、何でもないよ。……マルス、少し待っていてくれ。」



「はい、殿下。」



そう言ってシエラから離れると少しだけ苦しげに椅子にもたれて、深く深呼吸すると何かを鎮めるように目を閉じた。


「ふー、…姉様。今はあんまりじっと見ないでくれない?」


「あ…御免なさい。どうしたの?大丈夫?」



(誰の所為でなってると思ってんだか)


「大丈夫だよ。……っと、さぁ姉様行こう。」


あっという間にいつものジェレミアに戻った彼は、エスコートの準備が整ったようで馬車の扉を開けて、手を差し伸べた。



「…?ええ、ありがとう。」



そんな仲睦まじい様子の二人を感情の読み取れない笑顔で見つめる者がひとり……






「陛下、どうかされましたか?」



「気にするな、続きを、」


「はい。では陛下……-」
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