悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
19 / 69

どこかおかしい関係

しおりを挟む

急いで追いついたリンゼイと、邸を出ると予想した通り邸の外にはジェレミアがお忍びで出る時に使ういい馬車だが至ってシンプルな金の装飾の施された馬車が停まっていた。



(ジェレミーの使いだと一目でわかる。やはりスパイ….いや、護衛はすぐに伝えに戻ったのね。)





「リンゼイ、馬車に乗ったらすぐに身なりを整えるわ。」


「はい、皇女様。」


心配そうにシエラを見つめるリンゼイに「大丈夫」と少し微笑んだ。





「シエラ皇女!」


(もう追いついたのね…)




急いで追って来たのだろう。シャツを正す事も程々に上着を適当に羽織ったリヒトがシエラの手首を取った。



「マッケンゼン公爵…これでは誤解を招きます。」


「俺達は婚約者だ、別に問題はないでしょう。」


「……とにかく離して下さい。」


「メリーの言った事は気にしないで下さい。」


「ふふ、相変わらず優しいのね。大丈夫、気にしてませんから。さっきの事も全部忘れました。」


「…そう言う意味じゃないっ、ちゃんと話を…」






「姉様。」



中々馬車に乗らないシエラに痺れを切らしたのだろう。


馬車から降りてきたジェレミアがシエラを呼ぶと、シエラも、リヒトもやっと追いついて来たばかりのメリーもが目を見開いた。




「ジェレミー、何故あなたが…?」



「姉様が心配で迎えに来たんだ…迷惑だったかな?」



ジェレミアは俯き加減にそう言って、申し訳無さそうにシエラを覗き見る。

どうやらシエラは弟としてのジェレミアに甘いようで、「いいえ、そんな事ないわ。」と咄嗟に否定している。



「皇太子殿下が直接お迎えに…?」


メリーが思わずポツリと口に出してしまうと、リヒトが諌めるようにチラリとメリーを見た。




「あぁ、姉様は皇宮の外をあまり知らなくてね。心配だったんだ。」



「殿下…マッケンゼン邸でシエラ皇女に危険が及ぶことはありませんのでどうぞご安心下さい。」



「そうかな?…姉様、。」


ジェレミアはシエラの乱れたドレスと、リヒトの乱れたままの装いを観察するように見て、睨むように目を細めた。


(ふーん、でもどうやら何か問題があったようだ。原因は…アレメリーかな….。)




「マッケンゼン公爵、離して。」




「リヒト、何があったかは分からないが…姉様を解放してくれるかな?」



「…。」


「マッケンゼン公爵、お願い。」



「おや?そこの御令嬢はどうやら噂のメリー嬢に見えるね。」



「はい、殿下。お初にお目にかかります。」


「皇女にもそっけないリヒトが唯一大切にしているマッケンゼンの姫と呼ばれている令嬢だね。」


「い、いえ…リヒトとは幼馴染で…周りが勝手に…っ皇女様の婚約者だというのに恐れ多いです…。」


「いや、僕も姉様も気にしない。



「殿下っ!」


リヒトが慌ててジェレミアを呼ぶ、その隙に腕を振り払ったシエラは早足でジェレミアの元へと移動する。


そんなシエラを抱きしめてから、腰に手を回して彼女の頭に口付けると少し乱れた髪を整えてやるように撫でた。



「姉様、姉様もそう思うだろう?」


「ええそうね。




そう言って感情の読めない微笑みを向けたシエラにリヒトは胸がざわついた。


「俺の婚約者は貴女です。」


「…。ジェレミー、帰りましょう。少し疲れたみたい。」


「…っ誤解しないで下さい。俺は魔がさしたからとはしません。」



「…!マッケンゼン公爵…」



シエラの言葉を遮ったのは意外にもジェレミアであった。



「リヒト。僕達は案外忙しくてね。そろそろ帰るよ。」


そしてリヒトにだけ聞こえるように小声で耳打ちした。


「どうやらようだね。あとは僕に任せて。姉様はお前の事はすぐに忘れるよ。」



そしてシエラを促すように馬車に乗せたジェレミアをリヒトはもう見送る他なかった。


いつもは何も感じないメリーのリヒトの服の裾を掴む手が何故か疎ましく感じた。


シエラの腰に添えられた手、姉弟というにはあまりに不自然に絡めて繋がれた指先、馬車のカーテンに映った影が一つになった瞬間。




全てがリヒトにとって耐えがたい拷問のようにすら感じた。


(キスはあえて俺に見せつける為か…)


もう見えなくなった馬車を見つめたままのリヒトを心配そうにメリーが引っ張るのであった。






「ねえ、もう中に入りましょうリヒト、あの方々は少し変よ…まるで姉弟ではなくのようだったわ。」



しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...