26 / 69
婚約者でいる為には…
しおりを挟む「それって…グレンの事よね?」
「…。」
「見目が良いと言うなら貴方こそ、この国で一番セクシーな男性だと思うのだけれど…。」
「っ……なにを、」
「あっ…いえ、これに他意は無いの。ただその評判には共感したから….」
「ですが…、皇女殿下は俺に関心がない様に見えますが、」
「私はただ、余裕がないだけよ。多くの令嬢が貴方に想いを寄せているはずよ。」
シエラはふと思い出す、メリーと呼ばれたあの令嬢を。
前回の人生、最後にリヒトの隣に居たのは間違いなく彼女だ。
今はまだ時期が早いのか、去ろうとするシエラに興味を示しているがリヒトの大切な人は間違いなく彼女の筈なのだ。
「ならば、どうすれば…。」
「ただ、今の関係には満足しているわ。良い協力関係で居ましょう。」
「……。そうですか、」
(貴女の婚約者でいる為には、どうすればいいのだろう?)
リヒトにとってこのような感情も経験も初めてだった。
ただ、シエラに拒絶されるのが怖くて言葉を飲み込んだ。
自らにそのような感情があるのだと言う事に驚いたが、なにせ今はそんな事よりも少しでも彼女との関係を引き伸ばす方法を考えるのが先であった。
「…シエラ皇女。」
「なにかしら?」
「彼とはどういう関係で?」
「さっきも言った通り、友人よ。」
「…そうは見えませんでしたが。」
「貴方達もよ。気にしないでどの道解消する関係でしょう。」
「?」(貴方達も………メリーの事か?)
シエラにとっては、前回の人生からの想い人であったリヒトの言葉に心揺れるものの、シエラは命を脅かされた身。
身を滅ぼすかもしれないという時に、
婚約者であったシエラを簡単に見捨てたリヒトや、メリーに構っている時間は無いのだ。
シエラはジェレミーと円満なまま、皇后に打ち勝ち王宮を出る必要があった。
皇帝の病は軽く無い。今は無症状でも必ず数年の内に死ぬ筈なのだ。
(そうなれば事態は急変する。皇后の力を削ぎ取り駒では無くジェレミーの姉である必要がある….皇帝の庶子が見つかる前に立場を固めるのよ。)
険しい道を歩ませずに、ジェレミーを皇帝にすること。
皇后に手出しさせず、かつ彼女を弱らせる事。
それが唯一シエラの生き残る方法であるのだ。
(だから…こんな事に構っている暇はないの。)
「貴女の気の迷いに付き合えるほどの余裕はないのよ。貴方が嫉妬しようと、どう思おうと私は沢山の人の助けが必要なの。」
「なら、俺が…っ」
「不要よ。そう思うなら帰って可愛いお友達が余計なことをしないようにしっかりお相手して差し上げて下さい。私を煩わせないように。」
前世では気づかなかった。メリーの存在すら知らなかったのだから。
リヒトを無理矢理付き合わせている。や、
(まぁこれは前回では本当の事だけれど.。)
他の子息達を誑かしている癖に、リヒトを束縛している。
婚約者で居なければ、彼女の家門を潰すと脅している。
その他にも幼稚な噂は数え切れないほどであった。
シエラの評判が令嬢達に悪いのは彼女の所為であったのだ。
事実、権力にモノを言わせて得た婚約であったが前世でのシエラにリヒトを
束縛できる程の力は無かった。
それどころが、そっけなくあしらわれていた上に度重なる悪い噂や、ありもしない不義の噂にリヒトは段々とシエラへの嫌悪感を表していったのだ。
「どう言う意味でしょうか?」
「今のは悪かったわ。八つ当たりね、貴方には関係のない事です。」
「………なぜ俺を遠ざけるのですか?」
「では…貴方はなぜ私を遠ざけていたの?」
「!!」
「どう考えても私達は、何も知らなすぎるわ。…今日は帰るわ。お茶もお店もとても素敵だったわ。ありがとうございます。」
今のシエラには分かる。
リヒトを想うメリーの嫉妬と正義感からシエラは令嬢達の支持を失ったのだと。
そして、リヒトはそんなシエラへの噂やでっち上げを信じ、メリーや世間の言葉を信じた。
シエラの声も聞かず、シエラを信じなかったのだ。
(過去の話よ。今は良き友人。早くウェヌスへ戻らないと。仕事が山積みだわ。)
「シエラ皇女ッ…、」
「リンゼイ…馬車を。」
40
あなたにおすすめの小説
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる