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夢の中のあなたは…?

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見慣れた、皇座に王冠。


だがそこに座って居るのは父ではない。


(僕?)


「シエラ姉様は?」


「ご健在です」


「よし、では姉様に会いに行く」



(どう言う事だ?姉様は何処にいるんだ)




いつの間にか居たのは暗く冷たい地下牢だった。


何故か目の前の僕から感じる感情は複雑に絡み合い共鳴しているのを感じた。


酷く暗い闇に、深い哀しみ、それに狂気。



ただ、今から姉様に会える。と言うことだけは分かった。



最下層の奥、どうやら僕しか入れないようでまるで犬の様に鉄の首輪で繋がれた姉様は逃げないように両足首を拘束され、ひどく薄着のまま




ふつふつと怒りが込み上げる。

喉を潰されているのか、掠れた殆ど声にならないような声で「だれ」と言うのが精一杯なのか、意識が朦朧としているのかもう彼女は何も話さない。



(僕の姉様に、



「姉様…」



目の前の僕が姉様の頬に触れた瞬間に僕の中に流れ込んでくる様々な情景。


「母上!何故…ッ、そんな無茶な事をなさったのですか!?」


「ジェレミア…貴方がモタモタしているからよ。もうすぐ貴方の駒はマッケンゼンのモノとなるわ。もしマッケンゼンがに付いたら……シエラは私達を恨んでいる筈よ」



「どうかしています!姉様は僕から離れられない!僕のだ!!」



「どうかしてるのは貴方よジェレミア。私が邪魔者達を始末してやったのだから、さっさと即位なさい」



「そんな、強引な手法では…」


「シエラは貴方の為に皇女として育てたのよ。意味が分かるわね。」



「…っ」



「貴方は皇帝になる為に生まれてきた筈よ。この事が明るみに出れば貴方がしてきた事も少なからず知れるでしょう。それでいいの?」



「私の手にする権力と、支持する者達の後ろ盾はこれからも必要な筈よ。」




「姉様だって…僕に必要だよ…」



「マッケンゼンのモノになる姉様がそんなに大切?」

「貴方から逃げていく姉様が?




「….僕から、逃げる?」




「ええ。そうね…貴方の身代わりにして、地下牢にでも閉じ込めておきなさいな。ずっと、貴方のモノとして。」



「僕のモノ?」



「そうよ。シエラを身代わりに…貴方は皇帝になるのよ。」



ジェレミアはかつてない憤りを感じていた。



(何故だ、しっかりしろよ僕!そんな事しなくても姉様は皇女としても、姉様としても充分な存在だろう、それならば母上を…っ!?!?)



感じる、憎悪、悪意、流れてくるのはシエラを蔑み、嫌う多くの者達。

そんな状況すら姉様を独占する為のチャンスだと思う狂気なまでの僕。



皇帝になる為には手段を選ばない僕。






「あの子はジェレミアに気に入られる為ならなんです、ふふ。」


母が茶会で皆にそうふれまわる姿、




「り…リヒトに近づかないで下さい。皆貴女の嫌がらせに恐怖を感じていますっ…わ、私も!」


「シエラ…メリーは家族だと説明した筈だ。」



「私、何もしていません。」



「ひどいわ!皇女殿下ったら私が嘘を言ったと仰るのね!?」


「リヒト…ほんとよ。信じて…」


号泣しながら訴えかけるメリーと、困ったような縋るような瞳でリヒトにそう言った、僕の知る姉様よりかなり弱々しい姉様。

そして、考える様な仕草の後「後で聞こう。」とメリーを連れてシエラに背を向けたリヒト。



そしてまた流れてくる、母上やメリーの情景。


(ああ…姉様を嵌めたんだ。母上は僕を得る為に、メリーはリヒトを得る為に…なんて醜い)




そして、まるで狂気の怪物となった自らの姿。




「~っジェレミー、お願いやめて!」

「喉を潰される前に、僕に愛してると言って」

「駄目よ、それだけはリヒトに……ッ」

「五月蝿い!!!!!!」

「キャア!ーっ痛い!」

「大丈夫、初めてだからだよ。すぐに良くなる。」



何度も何度も、姉様が気を失うまで。

正気を失うまで何度も何度も抱いた。



「リヒト」とばかり言う姉様の喉を結局潰したのは僕だった。

僕は目の前の光景に吐き気がしたし、

それでも僕にしがみつき、耐える姉様を愛おしく思った。

そんな僕が目の前の僕と重なって怖くなった。




掠れた声で僕の名を呼ぶ姉様は、とうとう愛してると言わなかった。


そんな姉様はもう、笑顔を見せる事もなく遮られた視界の中で僕からの快感と冷たい地下牢での孤独だけを感じていた。


どう見たって虚ろで正気など失っていた。


それでも目の前の僕は満足しているようにさえ見えた。





(これは夢だ。僕は姉様を閉じ込めたりしない。)



「姉様…、愛してるよ。これで最初から僕だけの姉様になった。姉様が逃げるから殺すんだ…、姉様はずっと僕のだ。」



「そうだ、最期は僕の姉様をリヒトにも見せてやろう。」



「安心して。姉様を傷つけた奴らは。」




(夢だ、夢だ!僕はこんな風な姉様は望んでない!!)


だけど、熱くなる身体、大きくなる心臓。

目の前の壊れたシエラにすら感じる独占欲、

僕ならもっと優しくしてやれるのに、なんて目の前姉様は今にも弱っていっているのに…



僕は僕が怖くなった、僕が嫌になる、


(姉様姉様姉様姉様、お願いだから笑って、逝かないで)






「殿下!殿下!!!!」


メイドだろうか?大きな声で僕を呼ぶ声が聞こえる。


「…っは、姉様!!」



「殿下っ!お目覚めになられて良かったです!酷くうなされておられたので…」



見慣れた部屋にいつものメイドが心配そうに覗き込む。



「姉様は?」



「自室でお眠りになられています。」





ホッと胸を撫で下ろした。


やはり夢だったのだと安堵した。




けれど、夢だとわかっていながらも僕は姉様に会いたくなった。

そしてあんな姿の姉様に対しても反応してしまう、妙に姉様に触れたくなる僕は夢の中の僕そのものだと怖くなった。



(姉様…早く目覚めてよ、僕はいい子だと抱きしめて。)


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