悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
55 / 69

許されると思ったの?

しおりを挟む


「ジ、ジェレミア!悪かった!頼む、話を聞くんだっ」




ジェレミアは、父が収集していたシエラやシエラの実母への執着の塊を自らの手で処分した。


保存されているものには、ジェレミアとシエラのものもありそんなものを見ながら一人昂っていたのかと思うと気分が悪かったが、


それよりももっと気分が悪かったのは、父のコレクションに映るまるで父と同じようにシエラに執着の視線を向け服従させようとする狂気に満ちた当時の自分の姿だった。



何度も、身体が空になるまで嘔吐した。



皇宮では肩身が狭く常に命を握られ、世間を知らずに恐怖に震えながらもジェレミアだけが家族だと従うシエラのその時の様子を見て酷い罪悪感と、胸糞の悪さに夢の自分と重なり、こみあげてくるものを抑えきれなかった。


せめて他の誰にも穢されぬように、自分の手で一つ残らず処分しようと決めたものの、シエラを監視する材料の多さに父親への怒りが湧いた。



(姉様は、幸せになるべきだ。だからせめて僕が全部消すんだ)






気がつけば冷たい地下牢だった。


どこを整理しても汚職、汚職、汚職……

どの道、父上は刑が執行されるまでのもうないに等しい命なのだ。




牢を開け、入ると入るなり僕の顔を見て命乞いをする父上。



「僕が許すと思うの?それに、姉様を売ったのは驚いたよ」



結果的に幸せであるのなら、もう良かった。

いつか姉様が僕を許してくれるのならまた会いたいと思った。



けれども、監視し、覗き見ては散々慰みものにしていた上に実の両親まで殺した癖に最後は下らない理由でまるで物のように簡単に売ってしまった父をジェレミアは許す事が出来なかった。



父と母から感じる圧倒的にシエラの尊厳を無視した様子はいつもジェレミアを苛立たせていたからだった。




自分が愛故の狂気だとすれば



父は欲望と前皇后への叶わなかった想いへの八つ当たり。



母は、自分の息子ぼくを傀儡にして自分が頂点に立つ為の駒とし、シエラを前皇后への嫉妬の捌け口にしていたのだった。




「それはっ、仕方なかったんだ!!」



「屈辱と痛みを父上達も知った方がいいね……」



「ジェレミア、よく考えるんだ…….っ」



「命が惜しいの?」



「……っ」 



「安心してよ、父上からと縋るはずだよ」



「ジェレミア!!!」



「父上は、姉上に情けをかけたの?」



「シエラなら必ず買い戻す!!」






(父上にとってあくまで姉様はモノと同じ……きっと変わらない)



「あ、違う!連れもどす!」


「もういいよ、僕は暇じゃないんだ



怒りに満ちた皇帝の表情、幼い頃はあんなにも恐ろしくシエラと震えた手を握り合ったというのに今はとても滑稽に見えて鼻で笑った。


かつての自分達のように小さく震えて、縋る父の姿が小気味よく感じた。




「ホットワインを持ってきてくれ」



「姉様…….」


(償う方法が分からないよ……)



「父上の食事を暫く抜いて」


(かつて姉様が反抗した際に母がよくそうさせていた、父は飢えに苦しみ泣く姉上の表情にさえも恍惚とした表情を浮かべていたな)






「同じ苦しみと、相応の罰を……」



「受けるべきは僕も同じ……か」




その場で蹲って膝に顔を埋めた。


子供のころは、そうしているとシエラがおそるおそる覗き込んできては抱きしめてくれたものだった。



「姉様……会いたいよ」



ジェレミアの声を拾うものは誰も居なかった。




しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...