悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
60 / 69

カシージャス王への忠愛

しおりを挟む



「まぁシエラ皇女様だわ……相変わらずお美しいわね」


「この間は攻め込んで来た東部の制圧に一役買ったらしいぞ」


「けれど……そのような策士に国母を任せても大丈夫なの?陛下はとても皇女を愛されていると言うし……」


「く、国が乗っ取られるんじゃ……」





(聞こえているわよ……私がリュカを誠実に愛していて、無害だという事を強調する必要があるわね)




王宮にいると様々な言葉が聞こえてくる。

その分、どう立ち回るべきかどう見られているか判断する素材が簡単に手に入るのだ。



勿論、世論や噂だけを判断材料にはしないが、この件に関しては確かにシエラの噂を知る者ならば不安に思う筈、カシージャスにとって有益である上にリュカエルへ忠実な愛を捧げているのだと思われる必要があった。



(で、なければ帝国の関与を懸念し、側妃や他の婚約者候補を推しかねない。完璧に社交会を掌握するにはやはり……)



そこまで考えると、ふとリュカエルの顔が過ぎる。


どきりと波打った心臓に胸元をきゅっと軽く握った。


ありのままで居られる、ありのままで居てくれる。


今も、あの夜に一緒に歩いた時のままのただのシエラとリュカエルとして笑い合えることが本当に幸せだった。



最近では、彼の触れたところが熱く火照り、胸が騒つく。


切なくて、甘い、どろどろとした感情が身体を占めてリュカエルに会いたくなった。



「シエラ」


(そうそう、この声で呼ばれるとなんだか不思議な気持ちに……)


「って、リュカ……」


「ああ。が態々迎えにきたんだが?」


「……陛下。少し遅かったようで、お手数をおかけしました」


「ふはっ!珍しいな、人前では崩さないシエラがまさか」


「少し、考えごとを……」


「考えごと……?俺に気付かない程の考え事とは何だ?」


悠々としたいつもの笑みでそう意地悪に尋ねるリュカエルは余裕で、けれども真面目なシエラは少しだけ罰が悪そうだ。



「…….」



「気にしてない、シエラ行こう」


シエラの頭にポンと手を置いてそう言ったリュカエルの手を両手で包み込むように掴んで胸元でぎゅっと抱きしめた。

勇気を振り絞ったように、キッっと向けられた瞳とは裏腹にシエラの形のいい唇から出た声は思ったよりも小さい。



「……貴方の事を考えていたのよ」


「ーっ」


「近頃、貴方のことばかり考えてしまうわ。変なの……」



そう言って本当に困ったように、けれども少し恥ずかしそうに伝えたシエラにその場に居た者達は皆心の中で叫んだ。


(((それは恋煩いです、皇女様!)))




「ははっ!」


周りの者達のキラキラとした目を見渡して、リュカエルは笑った。


そして、嬉しそうにシエラを引き寄せて耳元で言った。



「俺も、ずっとシエラの事ばかり考えてる。だから同じだ」



そう伝えてからシエラの唇に触れるだけのキスをして、周りの歓声にバッと顔を上げて我に返ったシエラを連れて執務室へと移動した。





数日後、どうすればリュカエルへの忠愛を印象付けられるかはシエラにとって、何故かは分からないが解決しつつあった。



どこから出た噂かは分からないが、「皇女様は陛下に恋をしたから、カシージャスに来たのだ」と囁かれていたからだ。



微かに頬を染め、リュカエルと和やかに話す様子はやがて悪女シエラへの印象を、恋する年相応の女の子へと変えた。



シエラを知れば知るほど、カシージャスの民や、リュカエルの為にその頭脳を惜しみなく振るう姿が皆の目に写り、この国の者達のシエラへの疑念を薄めた。



「リンゼイ……まだ何もしていない筈だけど、何故か受け入れられている気がするのは気のせいかしら」



「ふふっ、シエラ様が恋をして変わられたからでは?」


「えっ?」


「リュカエル陛下に恋をしているでしょう?」


「なっ、何をいうの?リュカは親友………」



「それだけで満足ですか?」



「……」


「私共はシエラ様の幸せを願っていますよ」


「……前と違うの、前は苦しかったし一方通行だったから……消費ばかりで恋ってひどく疲れるものだって思ってた」


(リヒト様の事かしら)



「でも、全然違ったわ……とても切なくて幸せ」




「!」

「(静かに)」

たまたま部屋に入ってきたリュカエルがシーッと人差し指を唇に当てると、リンゼイはコクコクと頷く。





「私、きっと愛してるのかもしれない」



「ほう、誰をだ?」



「り、リュカ!?あなた、聞いていたのね!」



「で、誰を愛しているんだ?」



「……貴方よ、リュカ」



「ーっ、ならば俺も言わねばならんな」


「別に見返りが欲しい訳じゃ……っ!?」


シエラに深く口付けたリュカエルは、優しく熱い視線でシエラを見つめたあとに真剣な表情で伝えた。






「俺はシエラを愛してる、俺の妃になって欲しい」



泣きそうな、嬉しそうな複雑に感情が混ざり合う表情でシエラはゆっくりと頷いた後そっとシエラから唇を寄せた。



「私でいいのね?」


「シエラがいいんだ」


「私も…っ、リュカがいいわ……」




「私を貴方の妻にして下さい」









しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...