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カシージャス王への忠愛
しおりを挟む「まぁシエラ皇女様だわ……相変わらずお美しいわね」
「この間は攻め込んで来た東部の制圧に一役買ったらしいぞ」
「けれど……そのような策士に国母を任せても大丈夫なの?陛下はとても皇女を愛されていると言うし……」
「く、国が乗っ取られるんじゃ……」
(聞こえているわよ……私がリュカを誠実に愛していて、無害だという事を強調する必要があるわね)
王宮にいると様々な言葉が聞こえてくる。
その分、どう立ち回るべきかどう見られているか判断する素材が簡単に手に入るのだ。
勿論、世論や噂だけを判断材料にはしないが、この件に関しては確かにシエラの噂を知る者ならば不安に思う筈、カシージャスにとって有益である上にリュカエルへ忠実な愛を捧げているのだと思われる必要があった。
(で、なければ帝国の関与を懸念し、側妃や他の婚約者候補を推しかねない。完璧に社交会を掌握するにはやはり……)
そこまで考えると、ふとリュカエルの顔が過ぎる。
どきりと波打った心臓に胸元をきゅっと軽く握った。
ありのままで居られる、ありのままで居てくれる。
今も、あの夜に一緒に歩いた時のままのただのシエラとリュカエルとして笑い合えることが本当に幸せだった。
最近では、彼の触れたところが熱く火照り、胸が騒つく。
切なくて、甘い、どろどろとした感情が身体を占めてリュカエルに会いたくなった。
「シエラ」
(そうそう、この声で呼ばれるとなんだか不思議な気持ちに……)
「って、リュカ……」
「ああ。お前のリュカが態々迎えにきたんだが?」
「……陛下。少し遅かったようで、お手数をおかけしました」
「ふはっ!珍しいな、人前では崩さないシエラがまさか」
「少し、考えごとを……」
「考えごと……?俺に気付かない程の考え事とは何だ?」
悠々としたいつもの笑みでそう意地悪に尋ねるリュカエルは余裕で、けれども真面目なシエラは少しだけ罰が悪そうだ。
「…….」
「気にしてない、シエラ行こう」
シエラの頭にポンと手を置いてそう言ったリュカエルの手を両手で包み込むように掴んで胸元でぎゅっと抱きしめた。
勇気を振り絞ったように、キッっと向けられた瞳とは裏腹にシエラの形のいい唇から出た声は思ったよりも小さい。
「……貴方の事を考えていたのよ」
「ーっ」
「近頃、貴方のことばかり考えてしまうわ。変なの……」
そう言って本当に困ったように、けれども少し恥ずかしそうに伝えたシエラにその場に居た者達は皆心の中で叫んだ。
(((それは恋煩いです、皇女様!)))
「ははっ!」
周りの者達のキラキラとした目を見渡して、リュカエルは笑った。
そして、嬉しそうにシエラを引き寄せて耳元で言った。
「俺も、ずっとシエラの事ばかり考えてる。だから同じだ」
そう伝えてからシエラの唇に触れるだけのキスをして、周りの歓声にバッと顔を上げて我に返ったシエラを連れて執務室へと移動した。
数日後、どうすればリュカエルへの忠愛を印象付けられるかはシエラにとって、何故かは分からないが解決しつつあった。
どこから出た噂かは分からないが、「皇女様は陛下に恋をしたから、カシージャスに来たのだ」と囁かれていたからだ。
微かに頬を染め、リュカエルと和やかに話す様子はやがて悪女シエラへの印象を、恋する年相応の女の子へと変えた。
シエラを知れば知るほど、カシージャスの民や、リュカエルの為にその頭脳を惜しみなく振るう姿が皆の目に写り、この国の者達のシエラへの疑念を薄めた。
「リンゼイ……まだ何もしていない筈だけど、何故か受け入れられている気がするのは気のせいかしら」
「ふふっ、シエラ様が恋をして変わられたからでは?」
「えっ?」
「リュカエル陛下に恋をしているでしょう?」
「なっ、何をいうの?リュカは親友………」
「それだけで満足ですか?」
「……」
「私共はシエラ様の幸せを願っていますよ」
「……前と違うの、前は苦しかったし一方通行だったから……消費ばかりで恋ってひどく疲れるものだって思ってた」
(リヒト様の事かしら)
「でも、全然違ったわ……とても切なくて幸せ」
「!」
「(静かに)」
たまたま部屋に入ってきたリュカエルがシーッと人差し指を唇に当てると、リンゼイはコクコクと頷く。
「私、きっと愛してるのかもしれない」
「ほう、誰をだ?」
「り、リュカ!?あなた、聞いていたのね!」
「で、誰を愛しているんだ?」
「……貴方よ、リュカ」
「ーっ、ならば俺も言わねばならんな」
「別に見返りが欲しい訳じゃ……っ!?」
シエラに深く口付けたリュカエルは、優しく熱い視線でシエラを見つめたあとに真剣な表情で伝えた。
「俺はシエラを愛してる、俺の妃になって欲しい」
泣きそうな、嬉しそうな複雑に感情が混ざり合う表情でシエラはゆっくりと頷いた後そっとシエラから唇を寄せた。
「私でいいのね?」
「シエラがいいんだ」
「私も…っ、リュカがいいわ……」
「私を貴方の妻にして下さい」
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