悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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カシージャスへの招待状

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「ジ、ジェレミア陛下っ……これを!!」



執事が持ってきた手紙にはカシージャスの紋章、そして微かに香るこの香りはシエラの香りだった。


「……婚約パーティーの招待状?」



今更なんだと言うのだろう、形式的な一枚目の紙を捲り二枚目に目を通すとシエラの字で丁寧に書かれていた。


結婚式と、即位式を控えている事。


その前に正式に世界中に婚約を発表するという事、どうかジェレミアが今幸せでありますようにと綴られていた。


翌日に訪ねてきた酷い顔をしたリヒトの手にもまた、招待状が握られていたが彼のは一枚だけだったらしい。


(リヒトに送ったのはリュカエル王だね)



形式的な文字ですらこんなにもダメージを受けているのに、実際に婚約パーティーなどに行けばリヒトは正気でいられるのだろうか?

呆れた顔で、リヒトを見るジェレミアは「やめといたら?」と鼻で笑ったが「メリーへの招待状もあるんだ」と項垂れた。


「ふうん、とうとう来たね」

「はい……」


ジェレミアにとっても、メリーをリヒトと同伴させる事にはとても意義がある事だった。


(幸せな姉様と、愛されないあの女しかも高貴な者ばかりが集う場で味わう惨めな思い)


「しっかりと身の程を知らせてやろう」


ジェレミアの恐ろしくも愛らしい笑みを見て、リヒトはゾクリとした。

ジェレミアは身内側は大切にする。それはシエラがそうだったからでもあるが、信頼のおける者は傷つけない。

あくまで今、リヒトはジェレミアの身内側だがそれでもシエラ皇女を傷つけた全てをまではリヒトですらもその駒にすぎないのだ。


一方、メリーはカシージャス王宮からの手紙を受け取るなり不愉快そうに声を上げた。



「はぁ!?シエラ皇女の婚約パーティーですって!?」


「はい……カシージャス王に見初められたそうで」


「ほんっと、憎たらしい女ね。リヒトが駄目なら他所の王妃を狙うつもりなのね!?」



憤慨するメリーを使用人達は宥める。


「で、ですがリヒト様はもうメリー様の夫君ですし!」

「カシージャス王は残虐で冷酷な方だと噂が……」



「……へぇ」


(ずっとリヒトの心を私に返さない皇女など、残虐な王に殺されでもすればいいのよ!あの女せいで陛下にまで目をつけられて……)



「し、しかも……これは噂ですが……」



「前陛下が皇女を売ったですって!?」


「前皇后陛下に仕えていた者からの情報ですので確かかと……」



「ッあはははははは!いいわソレ、惨めな姿を見にいこうじゃないの」



(私はマッケン公爵の未来の妻として、皇女……アンタは残虐王に売られた惨めな、婚約者という名の奴隷として!!)





リヒトはてっきりヒステリックを起こしていると考えていたメリーが、ご機嫌に邸を訪ねて来たことに驚いた様子だった。



「何だ」


「あの……皇女の婚約パーティーの衣装なんだけど揃いのものが良いかなって思うの……」


「その必要はない」


「リヒト!いつまでヘソを曲げているの!?いい加減目の前の私を愛してよ!!」



「エスコートはする。現地までも一緒だ。それで充分だろう」



(ジェレミア陛下の許可がなければ、離縁できないだけの話)



「どうしてよ!私たちもうすぐ夫婦になるのよ!?」



「その穢れた身を、俺に寄越すのか?この間の事を忘れたか、メリー」


「……っそれは、看守が無理矢理にっ……でもリヒトは離縁しないでいてくれたじゃないッ」


「……とにかく揃いの衣装はいらない、だが予算は奮発しよう。好きなのを選んでくるといい」



「え……っ!?」

(リヒトったら照れているのね?やっぱりどんな事があっても幼い頃から愛し合ってきた私を捨てられないのよ!)



(また下らない勘違いをしているな、近頃は表情でわかる)

「なのになぜ気付かなかったんだろうな……」


「なに?リヒト」

「いや、もう帰ってくれ」



「皆の前では仲良くしてよね!それでなくてもこの間の事で噂がたって肩身が狭いんだから」



例の看守は元々、余罪があった為に島流しの刑に合ったらしいが、メリーが下劣な者に純潔を捧げたという噂はどこからか社交会に流れ肩身の狭い思いをすることとなった。


少しの間部屋に閉じこもったものの、メリーはすぐに気を持ち直しただけでなく、女の悦びに目覚めたようで穢れた身でリヒトを誘うようになり、リヒトはうんざりしていた。



「厚顔、羞恥心は無い上に、無能、色ボケまで……マナーはいつまで経ってもおぼろげなのに妙なことばかり覚える始末」


妹のようなに慕っていた純粋で弱々しいメリーは一体誰だったのだろう?

家族のように付き合っていた筈の彼女はこんなにもドロドロとした感情をいつから胸に秘めていたのだろう?

ずっと、他の女性達を牽制し貶め妹の顔で隣に居続けたメリーの本性に今更ながら恐怖心を感じた。


「シエラ皇女……」

どうして彼女だけを優先し、守るべき女性だと誠心誠意向き合わなかったのか、後悔してももう彼女はリヒトではなく、カシージャス王の婚約者だった。



「リュカエル・カシージャス……残虐な孤高の王」






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