悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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ウェヌス改めボンズの現在

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「シエラ様が……結婚する」



「ええっ!そうなのですか!?」

「いつ!?」



シエラとリュカエルの婚約パーティーの招待状は勿論グレンにも届いた。


シエラがグレンの恩人だという事はもうジェレミアにもリヒトにも知られている為に、友人を呼んだところで今更怪しまれやしないだろう。



ウェヌス改め、ボンズの皆はシエラからの吉報に盛り上がっている。



「で、グレン様。シエラ様はいつご結婚を……!?」


「勿論、リュカエル陛下ですよね!」


「きゃー!もどかしいと思っていたの~!」



「いや、今はまだ婚約パーティーという事だが近いうちに成婚するだろうと手紙には綴られていた……リュカエル陛下の妻になるそうだ」



すっかりとお祝いモードで仕事にならなさそうなボンズを今日はたたむことにしてカシージャスへと共に向かう者を決める会議へと予定を変更した。


テハードを目立たせぬ為に、カシージャスから招待する友人達へと船を寄越すと書いてあった。


久々にシエラやリンゼイ、ミンリィ達と会えると思うと楽しみで心が落ち着かないグレンは「皆、落ち着いてくれ」という言葉を発してから少しおかしくなって少し笑った。


(それは、俺のことだな)


「もう、日にちが無い。選ばれた者は早速準備に取り掛かってくれ」


「「「「はい」」」」


いよいよ迫る日にちに、皆それぞれの想いを抱えながらもカシージャスへの招待状を手にパーティーまでの日にちを過ごした。



そして、その日は来る。

カシージャスへと足を踏み入れたグレンは、小国ながらも豊かなカシージャスに驚愕する。


(帝国よりも豊かじゃないか?)


「とても、素敵な国ですね!グレン様!」

「ああ……カシージャスといえば暗いイメージだったが、豊かな国だな」




「温かい人ばかりなのよ、それに気候も暖かいわ」


「「「シエラ様!!」」」


久々に見たシエラの表情は、帝国にいる頃よりも遥かに穏やかで活き活きとしている。


乏しかった表情は、少し豊かになったようにも感じる。


「ますます、美しくなられましたねシエラ様」


「グレンったら、いつからキザになったのかしら?」


「そんなつもりは…….っ!」


「冗談よ、ふふっ」



「……安心しました」

「ありがとう。心配ないと書いたでしょう?さあ貴賓室を用意してあるわ、王宮の馬車に乗って頂戴」


「モンド…….!」


「グレン様!お久しぶりでございます!」


ウェヌスから連れて来た馬丁のモンドが今もシエラの側で仕えている事を知りグレンはまたホッとした。


それを感じとったようにリンゼイはグレンに伝える。


「リュカエル陛下の計らいで、影共々皆シエラ様のお側におりますよ。陛下は身分や生まれではなく実力と忠誠心を買って下さいました」



「そうか……本当に良かった」


「あら、何をしているの?早く馬車に乗って頂戴。皆は用意した馬車へ……リンゼイとグレンは私の馬車に乗って」



「「はい」」



そして、王宮で待つリュカエルの執務室にもまた知らせが届いた。


「陛下……ジェレミア皇帝陛下の船と、マッケンゼン公爵家の船が到着致しました」


「そうか……では、星の宮へ帝国の貴賓方を案内してやれ」


「御意」



「よく来て下さった、ジェレミア皇帝」


「ああ、こちらこそご招待感謝するよ」



(ひぃぃ……火花が見える……)


執事達は二人の唯ならぬ雰囲気に、身を縮める。



「ふっ」

突然、ふと笑ったリュカエルは雰囲気を和らげた。


「……?」


「よく似ている、どうも憎めんな」


「……僕たちは異なるが同じものを持って生まれた」


「事情は知っているが、問題ない。どんな事も些細なことだ」


「僕を姉様に会わせてもいいの?」


「少し無知な所があるのは弟君の所為か、けれど……些細な事だ」


「何故……」


何故、そんなにも大らかに寛大で居られるのか、リュカエルはシエラをそれ程愛していないのか?ジェレミアは彼の思考が分からなかった。



自分もきっとそうであるように、さすが王たるもの表情からその感情は分からない。

けれどもすぐに、その疑問は解消することとなる。



「遅くなってごめんなさい、リュカ……ジェレミー?」


「姉様……っ」


リュカエルもまた、シエラを見た瞬間に涙を堪えるような切ない表情に崩したジェレミアを見て彼が本気で愛しているのだと感じたが、ジェレミアの瞳からは弟として姉を慕う気持ちも感じられるのが不思議だった。



「シエラ、大丈夫だ。弟君は俺が出迎えた」



「ジェレミー、久しぶりね。……少し疲れた顔をしているわ」


「姉様が……っ、姉様が居ないからだよ」


「ごめんなさい。けれど……とても幸せなの」


ジェレミアはシエラの柔らかくなった雰囲気と剣の取れた笑顔にどきりと胸が大きく高鳴り、彼女の微笑みが温かく心に沁みる感覚がした。


ふと、リュカエルが気になって視線を向けると彼は嫉妬に狂う訳でも、姉を愛する男を牽制するわけでもない。

シエラだけをその視界に捉えて、シエラが家族ぼくに向ける情愛を微笑ましげに見守っているだけだった。


余計な事は考えない人だと思った。

ただ真っ直ぐにシエラだけを見つめるリュカエルが羨ましく感じた。


噂に聞く、冷酷で残虐な王は、誰も触らぬ不敗の男は、純粋にシエラを愛する誠実な青年だった。

「……っ、安心したよ。姉様、僕を軽蔑している?」


「いいえ、貴方は今もたった一人の弟よ。家族としてずっと愛しているわ」


「けど、彼のように誠実には……、悪い弟だった」


「それでも、最後まで私を守ろうとしてくれたでしょう?」


「!」


「ジェレミー、改めて紹介するわ。私の愛する人……リュカエル・カシージャス王よ。私に安らぎをくれる人なの」


「シエラ」


「あっ…‥.リュカ」


お互いに少し照れたように見つめ合ってから視線を逸らす様子を見て、ジェレミアは「はぁ」とため息を吐いてから微笑んだ。



「もう、お腹いっぱいだよ。二人ともいい大人が初心すぎる」



「なっ!」

「ジェレミーっ!」



「義兄様、姉様……おめでとう」


目尻の涙を拭ってからキラキラとした笑顔で言ったジェレミアを、抱きしめて頭をぐしゃぐしゃに撫でて「ありがとうジェレミー」と戯れ合うシエラ。


「姉様、なにするんだ」と不服そうな二人の微笑ましい様子を見ながら、やはりリュカエルは言わずにはいられなかった。



「に、してもそっくりだな……」










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