悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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愛した貴女はカシージャス王妃

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カシージャスに来てます驚いたのは、帝都よりもはるかに豊かである事だった。

隣ではしゃぐメリーにうんざりとするが、確かにこの小さなはずの国の豊かさには目を見張るものがある。


「見てリヒト!凄いわ!あんな乗り物は初めて見た!」

「はしたない行動は慎め」

「……わかったわよ」



ジェレミアは一足先に到着し王宮にてシエラに迎え入れられているだろう。

彼女に会いたいと願えど、状況に現実を突きつけられる。

更には隣で大声を出してやっぱり騒ぐメリーに気分は下がるばかりだった。



ジェレミアはある意味とても、効率的な罰をリヒトに与えたのかもしれない。


彼はとても現実的な人だと思った。


家臣として政治的な意味でリヒト・マッケンゼンを信用しているが、シエラの元婚約者としてのリヒトを許しては居ないのだ。


例の夢を見てからジェレミアによってシエラが傷つくのではないかと、ずっとそう思っていた。

けれど実際にシエラを傷つけたのは自分自身だった。


「メリー、公爵家は王宮に招待されている。粗相のないようにしてくれ」


「ええ、私だって貴族令嬢よ?安心して頂戴」


それらしく返事をするが、リヒトにとっては不安だった。

その不安は、王宮に到着するなり見事的中する。




リヒトだけでなくメリーがシエラとどう言う関係性の人間なのかは、もてなす上で聞いているだろう使用人達は見事に表面上は完璧にこなしてくれた。


実際ならばメリーや自分に対しての扱いが他と違ってもおかしくはないにも関わらず、他国のとしてきちんともてなしてくれるのだ。



メリーはすっかり調子に乗ったようで、偉そうに部屋のカーテンが気に入らないとケチをつけている。


「やめろ、メリー」

「だってこんなに派手な柄じゃ休まらないわ!」

「カシージャスの伝統的な織物だ」

「えっ……そうなの?」


「そうだ、このような上等なものは初めて見たが……礼儀だけでなく学までもないとバレる。やめておくんだ、これは有名な品だ」


「り、リヒトっ!貴方ひどいわっ!!」

布団に潜り込んで啜り泣くメリーを放って、明日の婚約パーティーの準備を連れてきた使用人に淡々と伝えた。


(妹として見れば目を瞑れる幼稚な所も、女性としては……)

日に日に悪化するメリーの素行に頭を抱える。


そして夜は性懲りも無くリヒトを誘うメリーのせいで眠れずに、部屋を出て少し歩く事にした。


(こんな所もあるのか……)


美しい花が丁寧に手入れされた庭園は夜でもその美しさが分かる。

所々、照明で飾られた花と、殆どが海に囲まれるカシージャスならではの景色と波の音は安らぎを得るにはとっておきだった。




ふと、淡い光に照らされる金髪が目に入る。


(妖精、もしくは女神か……)



人の気配を感じたのか少し驚いたようすで振り返った彼女が、立ち上がりおそるおそる自分の名を呼んだ声に身体中に急に血が巡ったような感覚がして、熱くなる。


丸くした碧眼はたしかにリヒトを捉えており、動けなかった。


「リヒト・マッケンゼン……」



「シエラ皇女っ」



「貴方も来たのね……何故此処に……」



「眠れなくて……邪魔したようで申し訳ない」


「そう、早く戻って」


「シエラ皇女……ほんとうに此処で生きるのか?なぜ何も言わずに……」


「私と貴方はあくまで皇帝ジェレミーを支える同志。私の恋愛に口を出す仲ではないでしょう」


「俺と貴女は婚約者……」


「解消すると言ったはずよ」


「……せめて貴女を幸せに出来なかった事を謝りたい」


「なら早く戻ってリヒト……明日私におめでとうと言うの」


何故かリヒトは動けなかった、シエラを抱きしめたくて仕方なかった。

メリーの元へ戻るのだと思うとゾッとしたし、もうこのようにシエラと会える事はないのだと思うと苦しくなった。


「……やはり」

リヒトが一歩踏み出そうとした瞬間、背後から声がする。


背丈はそう変わらないが何故か大きく見える彼の情熱的な赤い髪が夜でも燃えているように目立って目を引く。


金色の瞳もまた爛々としていて、端正な容姿は冷たを感じるが何故か太陽のような男だと思った。


「やはり、美しいだろう?


「リュカ」

目を細めて、まるで愛おしい人を見るかのようなシエラの瞳にギクリとする。このように安心し、相手を信頼したような笑顔をリヒトは見た事が無かった。



「……婚約者ではなく?」



「あぁまずは順序を踏んで発表しようと言う事になったんだ」



「私はリュカと結婚するわ、マッケンゼン公爵」


「それと申し訳ないが此処はシエラの庭園なんだ。許可なく入ることは禁止している」





(目が笑っていないな。けれどもこの余裕……)


カシージャスの王とはこれほどまでに壮大なのかと、帝国で生まれ育ち公爵として立つはずのリヒトはそう感じた。


そして、あまりにも……


(シエラ皇女に彼の隣は似合っている)



「失礼しました」


「ああ、入り口に人を立たせた。案内してもらてくれ」


「お気遣いありがとうございます」



背を向ける最中に見えた、シエラがリュカエルの胸に抱かれる光景は、現実を突きつけリヒトの心をズタズタに引き裂いた。



「遅かったわね、リュカ」


「義弟が我が儘でな」


「仲良くなったようね」


「ああ、中々面白い」

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