悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
66 / 69

横取りを味わうなんて

しおりを挟む


「リヒト……結婚したですって!?そんなの嘘よ!!」











リヒトはメリーをできる限りすぐに訪ねた。

律儀な性格なのは相変わらずで、きちんと説明するべきだと不運な目に遭ったメリーに罪悪感を少なからず感じすぐに訪問したのだが、


リヒトは自分がすっかり忘れていたことに驚いた。


メリーが


すっかり辛い目にあって苦しんでいるだろうとさえ考えていたリヒトが目にしたのは使用人に跨るメリーで、案内した侍女も知らなかったのか悲鳴をあげて扉を閉めた。



「もっ申し訳ありません!つい先程公爵様の訪問をお伝えしたのですが……」

「俺には関係のない事だ」

「で、ですが……」


犯人を捕まえた際に、どのような経緯でメリーが攫われたのかは知った。

だからこそ、こんな事が無くとも決して身持ちの固い女性ではない事はもう知っていた。


「いや……ずっと前から知っているな」

「何か仰りましたか?」

「何でもない。別の部屋で待つ。どうしても今日伝えておきたい事があるんでな」


そう言って応接室に座ったリヒトを聞きつけてやってきたメリーの両親は酷く老け込んだように感じた。


「貴方に、謝らなければならない……」



メリーの父親が言ったのは衝撃的な言葉だった。



「メリーとの婚約がご両親の意志だというのは娘の嘘だった……私達も一方的に娘の話だけを信じて君を追い詰めてしまった……」

「ごめんなさい……ご夫妻は娘を気に入って下さっていたから、疑わなかったの……」



「ーっもう、良いんです。父と母が俺に言わずにそんな約束を取り付ける訳がないと思いながらも無下にできなかった責任は俺にありますので」




「実は、貴方の結婚が決まった時はホッとしたの……愛する人と引き離されて傷ついてしまった貴方がやっと伴侶を見つけたのだと」


「それが、私達の娘出ない事にも。……本当に申し訳無かった」



「……貴方達を責める理由はありません。それに今日、俺はメリーに結婚した事を伝えに来ました。酷く傷付けるでしょう……」



メリーの両親はふっと哀しそうに笑った。


「貴方はやはり、優しいんですね。娘のした事の責任はできる限り私共がとります」


「はい、あの子は私と夫で一生面倒見るつもりです」



すると、ドタバタと令嬢らしからぬ足音が聞こえて湯浴みしていたのか少し髪が湿ったままのメリーが部屋に飛び込んで来た。


久々に見るメリーの明るい笑顔に両親は涙したが、現実は残酷だった。




「リヒト……っ!!!やっぱり来てくれたのね!会いたかったわ!!!」



リヒトはメリーを素早く避けると、感情の無い声で伝えた。


「メリー、俺は結婚した。もうお前の婚約者ではない」


「え……っ」


リヒトの言っている事が飲み込めずに、放心状態になったメリーを置いてリヒトは席を立った。


「なので、もう会う事もない。」



去っていくリヒトの背中はずっと変わらないのに、

彼の声はまるで別人のように冷ややかだった。


「リヒト……結婚したですって!?そんなの嘘よ!!」



邸を酷く散らかしてしまう程に暴れたメリーは、その日から毎日マッケンゼン邸を訪ねたが門前払いだった。



「リヒト様と、お通しする事は禁じられています」


「なんでよ!!!通しなさいよ!!!!私が来たのよ!」




「また来たのね」

「ああ、そのようだな」


「貴方はいつまでソレを眺めているつもり?」



リヒトに眉を顰めて言うのは、元ミリエーヌ・シェメロン伯爵令嬢であり今はミリアーヌ・マッケンゼン夫人である艶やかな黒髪の女性だ。


彼女もまた、数少ないシエラを支持する令嬢だった。

寧ろ、支持というよりは隠れたファンのような存在だった。


彼女は伯爵位では行き詰まった実家の栄光の為にと、国を出たシエラの無念を果たす為に利害の一致でジェレミアと手を組み、リヒトと契約結婚した。



リヒトがシエラとの手紙の数々や些細な贈り物をを眺めている間も特に嫉妬する訳でもなく、壊れたものを見るような目でリヒトを見るだけだった。



「すまない」


「いいのよ、愛なんて無いんだから。で?あれが例の令嬢ね?」


ミリアーヌは伯爵位と今まではそう簡単にシエラらリヒトに近づける立ち位置では無かった為に弁えていたが、中々頭のキレる令嬢だった。


そして、シエラへの無礼な振る舞いを許して居なかった。

「私は皇女殿下が悪女であろうが、何でも良かった。ただ直接会ったあの人の人柄が好きだった、憧れだったの。だからここに立てて光栄よ」


「……」


「私は皇女殿下ほど、優しくないの」


そう言って降りていったミリアーヌはメリーのいる門へと向かった。



「な、何よアンタ!」

「あら……下品な娼婦だこと。夫とはお帰りなさって?」

(勿論嘘だけれど、仮にも夫だし良いわよね)



「なっ!?」


「もう、貴女の居場所はないのよ。それに……身持ちの緩さが災いして慰み者になったのですってね?恥ずかしく無いのかしら……大人しく身を潜めてなさいな」



「…….っ!!」

メリーは言い返す事が出来なかった。

けれどとても屈辱的な気分だった。


自分がシエラから横取りしたと思っていたリヒトは

ミリアーヌに横取りされてしまったのだ。


そして、ずっと痛感していた。

気品も、聡明さも、全てがシエラには敵わないのだと。


そして……


(この女にすら、私は敵わない……)

「どうせ、アンタもシエラ皇女には敵わない」



「ふふっ、そうね。けれど私は幸せよ?



ミリアーヌの不敵な笑みに、もうメリーは返す言葉が無かった。









しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...