悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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さよなら愛しかった人

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シエラとリュカエルの訪問を知ったメリーは、雪辱を晴らすチャンスは今回しかないと壁に飾っているナイフを持って出かけた。


勿論リヒトやミリアーヌも来るだろう。



この際だからミリアーヌも傷物にしてしまおうと、目に入った果物ナイフもバッグに入れた。


誕生日の近いジェレミアの為に帰省したらしいシエラは相変わらずリュカエル王と仲睦まじい様子でメリーを苛立たせた。



貸し切られている近頃出来た、恋人達の聖地ルイスガーデンはリヒトと行こうと何度も調べた為に偶然詳しかった。


ふと、身を隠していると平民らしい貧そうな八~十歳ほどの女の子を見つけて声をかける。


「ねぇお嬢さん」

「なぁに?お姉さん貴族の人?」

「ええそうよ、お願いがあるんだけど……」



メリーはお菓子と僅かな宝石を差し出して、その女の子にシエラ達を騙して一芝居打たせようとしたがナイフを差し出すと女の子は青い顔で首を横に振る。


「い、嫌です。貴族を傷つけたら死刑だって……」

「大丈夫、お姉さんも貴族だから守ってあげれるわ」

「で、でも……いやだ」

「この宝石があればご両親はとても楽になるんじゃない?」

「……いやです」


メリーは突然怒って数回少女をぶつと、「だまって、これでやりなさい」と凄んだ。


「う、ひっく、嫌だ」

「貴族に逆らっても死刑なのよ」


平民からすればメリーは貴族、ましてや相手は子供である。

泣きながらメリーに着いていくと子供しか入れないくらいの薔薇の垣根の間を通らせて紛れ込ませる。


親しい者たちと、近しい貴族達だけでする小規模なガーデンパーティーは和やかな雰囲気だった。


その中に突如、紛れ込んだのかぽつんと平民の子が会場に現れた異様さにシエラが近づき目線を合わせようとすると、隣にいたリヒトの妻ミリアーヌが「私が」と少女に近づき屈んだ。


子供は泣きながら「ごめんなさいっ」と震えた手でミリアーヌにナイフを刺そうとするが思いの外早くて咄嗟にシエラはミリアーヌを抱え込むように庇うのが精一杯だった。


「ミリアーヌ嬢!!」

「し、シエラ様……っ何故」

ナイフで肩を擦り、裂けた切り口から血が滴る姿には痛々しいものだったがどうやったのか騒ぎに紛れて侵入したメリーの叫び声に皆振り向いた。

「使えないわね!こうするのよ!!!」


走ってくるメリーがシエラをより深く刺そうとするが、咄嗟に出てきたリュカエルに受けられ守るようにシエラを抱え込まれてしまう。

シエラの傷ついた姿に頭に血が昇り、もう正気ではないジェレミアは躊躇無く剣を抜くとメリーの顔に深い切り傷を作ってしまう。


仰け反って倒れたメリーの心臓めがけて剣を突き刺そうとしたジェレミアに叫ぶシエラの声にピタリと動きを止めたジェレミア。


「ジェレミー!だめよ!!」

(真の犯人が居なくてはこの子が死刑になってしまう)



ナイフよりもジェレミアの様子に畏怖しガクガクと震えるミリアーヌが心配でシエラは視線をリヒトに向けた。


リヒトはシエラに駆け寄ろうとしたもののリュカエルとジェレミアの二人に出遅れ、その後も契約とはいえ先に妻に駆け寄るべきか、気持ちのままシエラに駆け寄るべきか……


どちらにまず駆け寄るべきか悩むリヒトの姿にシエラはリュカエルに支えられながらリヒトの元へと歩み寄り言う。




「あなたは変わらないわね」


「え……」


シエラは昔こそ何を考えているのか分からなかったリヒトが、今は何を考えているのか手に取るように分かった。

二度の人生で人間の汚い面にも美しい面にも触れた。

温かい皆の心を知って、大切な人ができた。



人は変わってく、時に良くもなるし悪くなるときもある

全部合わせて自分自身を愛してあげられる人になりたいとシエラは思った。


不安げに治療班を案内するグレンも、取り押さえるリンゼイも子供を保護しているミンリィも……

震えて「姉様、血が……」なんて言って肩を押さえるジェレミアも、今にもメリーを殺しそうなリュカエルの金色の瞳も。


泣き顔を見られまいとシエラの背後で俯くミリアーヌも……他にも、


「私は大切な人が沢山できたわ」


「シエラ皇女……」



「貴方達は契約結婚だって知ってる。けれど貴方も近くにいる人を大切にして、ミリアーヌ嬢は素敵な女性よ」



「シエラ皇女……私は平気です」


「いいえ、幸せを譲ってはダメよ。大切な人には幸せになって貰いたいの私は……ミリアーヌ嬢も貴方にも」



「貴女は、残酷な人です……貴女の口からそのようなことを言われる日が来るとはあの時の俺は思ってもいませんでした」



「ええ、そうね。帝国の悪女は早く消し去るべきよ」




そう言ったシエラの笑顔は清々しかった。


「あぁそうだな、帝国の悪女などもう居ないのだから……」


「リュカ?」


「カシージャスの至宝、シエラ王妃よ」


バタバタと痛いと暴れるメリーを拘束する中見つめ合う二人、もう半分泣きながら叫ぶジェレミア。


「義兄上!早く姉様の血を止めろ!」


「ふふ、ジェレミーかすり傷よ貴方のお陰でもう止まってるわ」


「あ……」


「義弟殿はまるで悪魔のようだったな」


「リュカ、やめてよ」


三人を次々と囲むシエラの大切な人達、それを眺めるリヒトに手を伸ばしたのはミリアーヌだった。



「愛は無いわ、けれど戒めなさい。私はシエラ様の期待を裏切らない」


「……」


(消せません、シエラ皇女けれども俺も貴女を裏切らない人になりたい、もう二度と)




(さよなら、愛しかった人リヒト


(さよなら、愛する人シエラ















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