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手に入ったのは愛と家族
しおりを挟む正式な罪状が早急に発表され、メリーの死は両親にも届くこととなった。
全てが終わって穏やかな星空を見上げるジェレミアは今頃リュカエルとシエラは初夜を過ごしているのだろうかと考える。
「ふん。義兄上が嫉ましいよ」
そんなジェレミアの考え通りシエラとリュカエルの二人は初夜の為に緊張の残る面持ちでベッドの近くのテーブルで向かい合っていた。
「怖いなら、焦らずとも良いんだぞ」
「いいえ。早く貴方の妻になりたい」
「形など無くても、もう一生離してやる気はないが」
「ふふ」
穏やかだけど、思っていたよりも重量感のあるリュカエルからの愛は言葉を交わすほどにシエラに伝わってきたが、それすら心地良かった。
「少し酔ったわ」
「じゃあ、俺が運ぼう」
優しい表情だけど情熱的に絡まる視線と合わさる唇。
二人の影は一つに重なった。
ーー
その頃リヒトはシエラとの僅かな想い出に浸っていた。
「静かな夜だな……」
自分を慕うシエラの表情、突き放しながらも優しすぎる故に拒絶しないシエラ、境遇のせいで世間知らずのシエラ……今思えば全てが愛おしかったのに。
凛とした皇女としてのシエラも全部、彼女のまだ知らない一面も知りたかったのに。
「愚かだな」
青白い月を見上げながら一筋の涙を零した。
ーー
少し眠っていたのだろうか。
頭が真っ白になってリュカエルのことしか感じられなかった。
初めては痛いと聞いたばかりだったのに、そんなのは一瞬だけだった。
(とても、幸せな時間だった)
嘘だったのかしら。と考えながら気怠さの中手探りでリュカの腕に触れてからしがみつくようにしてもう一度眠ろうとしたら「ふ」と笑い声が聞こえて先程のことを思い出したのと、照れ臭いので頬が熱くなった。
「起きていたのね」
「あぁ少し無理をさせたか?」
「……とてもよかった。幸せ心がでリュカでいっぱいだったわ」
「!!」
結局お互い真っ赤になって枕を背にベッドの上に並んで座り直すが、そんなさりげないひと時さえも幸せに感じて触れる肩の温もりにホッとした所為かふと言葉が溢れた。
「私ね、一度死んでいるの」
「そうか」
「気が触れたと思わないの?」
「信じる」
「死ぬ前は貴方とは出会わなかったわ」
「うん」
「一人だと決め付けて、誰も信じなかった」
「今は、俺を信じてくれてるか?」
「勿論よ。逃げる為にリュカが必要だったんじゃなくて……」
(方法なら他にもあったし、今のジェレミーとなら他の選択肢もあった。けれど)
「私、出会った頃から知らずの内にリュカに恋していたの。ずっと会うのを楽しみにしてた。リュカに会いたかった」
「俺も、あの夜にはもうシエラしか居ないと感じていたのかもしれない」
「だからすぐに返事をくれたの?」
「気になって仕方がなかったんだ。会いたかった」
(その内、囲いこんで連れ帰ってやろうと考えていた事はまだ言わないでおこう)
「渋い顔ね?」
「いや、俺はシエラに鎖はつけない。自由で、晴れた笑顔で居てくれ」
「!」
(比喩だと分かっていても、まるで過去を塗り替えるような言葉に安心する)
「幸せにする」
「ーっ、私もリュカを幸せにするわ」
「可愛げないのかあるのか……泣くなシエラ」
「リュカが甘やかすからよ」
「ふ、もう忘れろ。シエラは今此処にいて全部変わった」
「……っ」
「二度目だろうと三度目だろうとこれからは俺が守る」
「うん、大好きよ。何度死んでもリュカだけを探すわ」
「ははっ!まずは俺と生きる事を考えてくれないか?」
「あ……っ、そうね」
子供は何人、二人の髪色のどちらに似るか、夫婦喧嘩のときも食事は絶対に一緒にしようだとか、この間侍女が転んだことや騎士が怖がって腰を抜かした事だとか些細な事を一晩中話した。
「何も聞かないの?」
「弟君か?」
「ええ……」
「シエラの未来が俺のものなんだ。他に望みはないよ」
"生きててくれてありがとう"
"だから出会えた"
「よく頑張ったな」
そう言ったリュカエルの瞳と声が優しかった。
自然に溢れる涙が止まらなくて、笑顔で「ありがとう」と伝えたいのにぐちゃぐちゃの笑い泣きで「愛してる」と言うのが精一杯だった。
「リュカ、愛してるわ」
「もっと聞きたい」
上質なベッドのスプリングが軋む音がして、柔らかいシルクが背中に当たる。
頭を支えるように添えられたリュカエルの手が熱くて、
聞こえる鼓動は少し早かった。
「生きてるのね」
「ああ」
「生きて良いのね」
「当たり前だ」
過去には直接ではなくても手を汚した事だってあった。
これからは幸せをちゃんと受け取って、
幸せを返していけるような人でいたいと思った。
二人にはこの先、様々な日常や王族としての務めを仲睦まじく乗り越えていく未来や、
少し先の未来には可愛い男の子ができるのだが彼らは今はまだ知らない。
今はただお互いの鼓動の音を子守唄に、抱き合って眠る為に深く深くキスを交わした。
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