八年間の恋を捨てて結婚します

abang

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認められない婚約

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マルグリス前侯爵夫妻の馬車が到着したと言う知らせにメーデアは冷や汗が噴き出た。


心拍数が上がり、執務室で気怠そうに「出迎えてくれ」と大して忙しくもないのに自分に命じたアルベルトに少し苛立つ。


仕込んだ避妊具を何個も使って夜を過ごした。
お酒で理性を失ったアルベルトとは避妊具を無しで交わったりもしたし、たった一日半程度だったがかなりの回数を重ねた筈だ。

(まぁ、二日酔いってわけね)

気怠そうなアルベルトの要因の半分はそのせいかと仕方なく文句を飲み込んで落ち着かない自分を心の中で宥めながら二人を出迎えに向かう。



「お帰りなさいませ、大旦那さま、大奥様」



馬車から降りて来た二人の複雑な表情にどきりとする。
大奥様こと、アルベルトの母親はまるでメーデアを突き刺すような瞳で見てから「ルージュさんは?」とだけ言葉を発した後は一度も目が合わない。

何も前からこうではなかった。
二人はもっと穏やかな表情で「いつも悪いわね」と労ってくれていたのに。


「ルージュ様は近頃お越しになっておりません」

「噂は聞いているわ。勿論

「カミレア、アルベルトが先だろう」


視線こそ冷ややかなものの、穏やかな口調のアルベルトの父に安堵する。これならなんとか乗り切れそうだと考えながら応接室までの気まずい時間を耐えた。

けれど実際にはこの二人こそが直々に離縁状に承諾し、ルージュとアルベルトの婚約解消に一役買っているのだ。
そんなことを知る由もないメーデアはどう時間を稼いで、その間にどうやって印象を良くしようか。だなんて甘い考えを巡らせていた。



「父上、母上、お久しぶりです」


先ほどのだらしなさが嘘のようにキラキラしたアルベルトに半ば呆れながらも、ルージュはアルベルトのこういった外面に自分も惚れていたことを思い出した。


(いつもこうしていると素敵なのに……)


「ああ、元気そうで何よりだ」

「アル……貴方本当に大丈夫なの?」

母親の不安げな表情に首を傾げたアルベルトは父親の厳かな雰囲気に少したじろぐ。


「い、家の事なら俺とメーデアがちゃんと……」

「本当にか?」

「はい!前よりもマルグリス家を繁盛させたじゃないですか。俺達ならきっとこの苦境も乗り越えてみせます」


「俺達とはまさかそこの秘書殿のことか?」


「はい。彼女は有能な秘書ですし、ルージュだって今はへそを曲げていますがすぐに戻ってくるでしょう」


彼の両親は意味深に顔を見合わせて残念だという風に小さく頭を左右に振るとちらりとメーデアを見てまた溜め息をついた。

自分達よりも高価で華美なドレス。

マルグリス侯爵家の給料がいくら良いとはいえ、秘書の稼ぎだけではこんなに高価なドレスや宝石を身につけられる訳がない。

二人はそんなメーデアを見てルージュが離縁を申し出たことに納得をした。そしてとある決心をした。

前侯爵は、その「とある決心」の為にアルベルトとマルグリス侯爵家の様子を確認しに来たのだ。


「……少し休ませて貰うよ」

「父上……!!」

「アル、私達少し疲れたみたい。休ませて頂戴」

「はい……」


アルベルトとメーデアは知る由もないだろう。

ただ一人、この邸で知ることになるのはセントリックのみーー。


「大旦那様、大奥様、お休みの所申し訳ありません」


「いいや。要件は大体検討がついている。今までよく頑張ってくれたね」


アルベルトの父、ジーランドはセントリックからの辞表をゆっくりと裏返して「これは受理する、だが君をまた雇いたい」と申し訳なさそうに笑った。


「私の養子の教育係として領地に一緒に来て欲しい」


「よ、養子ですか!?」


「念の為だ。このままならアルベルトの廃嫡を考えている」



セントリックは慎ましやかだが誠実に昔ながらのやり方でマルグリスを守ってきた自らの主人に敬意を持って頭を下げた。


「承知しました。旦那様のお心のままに」

















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