元カレの今カノは聖女様

abang

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出戻り、暗闇

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ランベールへと連行されたセリエはまたもや百一階の地下の牢獄へと逆戻りした。

この一件でケルエンに大勝したランベールはケルエン国王とその妻の身柄を確保していることもあって、今件の表向きの首謀者であるケルエン王太子を召集し尋問することとなった。


「わ、私達は何も知りません!まさか息子がその様な事をするなんて……」


ケルエン王妃は弱々しく縋る様に国王に弁明するが、嘘は明白。

事実上、戦争に勝った形となる今回の件では裁判や同意なく属国となったケルエンの王族を絶ってしまうことなど簡単だったが、国王はこの件を両国民に対して、白日元に晒したいと考えていた。

目の前の年老いた愚かなケルエン国王は、今も尚妻の顔色と尻ばかりを見ている。

この王にとっては魅惑の魔女であるケルエン王妃も、自らの妻の前だと安っぽいなと感じた。



(私も相当だな、気をつけなければ)



けれど自らが骨抜きになった所でこの王妃、ましてや近頃の王妃なら尚更この国を正しく導く為に尽力するだろうと目の前で私利私欲、保身の為に態とらしく、浅はかな言葉を並べる若いケルエン王妃を冷やかに見た。


「ケルエンには、立派な塔がありましたな」

「陛下、あそこは元々人が住んでいたらしいですわ」


意を汲んだ王妃が口元を微かに吊り上げて言うと、ケルエンの王妃は顔を青白くして「あんな、古い所なんて」と呟いた。



「処遇は決まった」

「ちょ、ちょっと待ってください!」



そして、ケルエンの王太子


ある者と同室となったケルエンの王太子イスルカは、暗く冷たいところに連行されて来た。


裁判では「ただ、父と母に認められたかった」「自分だけの為に努力し、誠実に愛してくれる有能な妻が欲しかった」とだけ言った。



そんな息子をケルエンの王妃は保身の為に差し出して

年老いたケルエン王もまた幽閉後も彼女達と居たいが為に妻と自らの命の為にイスルカを売った。


「わかっていた」とイスルカは少し笑ってから、狂気のをも含む瞳でイブリアの方を見ると、彼女がまだルシアンの婚約者だった頃何度も会った事があると話した。


「それから、遠くからいつも見ていた。ルシアン殿の為に必死で身を削り心を削り王太子妃に相応しい者として振る舞うイブリア嬢を……私にもそのような人が欲しかったのだ。貴女がほしかった」




国を取って親に認められ、自分だけを愛す有能で美しい妻が欲しかったと言う王太子は、ディートリヒとイブリアの美しい絆と愛を羨んだ。



「暗いな……」

「此処に収容される者は二名、同室です」



重要犯罪者である二名、最下層にて刑務作業も免除され実質の軟禁状態となった。


セリエに関しては処刑が決定しており、その日をただ暗闇で待つ日々が待っていた。


ガクガクと震えながら、呟く恨み言。

噛んだ爪はギザギザになっており、思わず「何をしているんだ?」と引き攣った表情でイスルカは尋ねた。



「……るさ…ぃ」


「な、何だ?」


「許さない……」


「もう、終わった」


「まだ……っ!」


「どうするって言うんだ!?」


「元々はアンタが話を持ちかけたから……!」


「もっと使えると思った……!」


「なッ!?私を王太子妃にするって……!」


「そんな訳ないだろう!お前の行ないを忘れたのか?」


「はっ!?」


「お前は聖女だぞ?皆知ってる、男を漁って公女に害を成した。聖力を失い呪いが宿った!しかも……半端な」


「ーっ!?」


セリエは自分が特別だと信じて疑って来なかった。

けれども近頃、上手くいかなくて苛立っていた。

それは全てがイブリアや、王妃、周りの人間の所為だと思っていたが尽く実感させられるのは自分が大して特別ではないと言うことで、思ったよりも大それた力を持っていないことばかりだった。



目の前の男もまた、セリエは取るに値しない。

イブリアだけが目的だったと人々前で話した。



彼にどれほどの刑期が課されたのかは知らないが、きっと王族と伯爵令嬢では処遇は違うだろう。

そして、処刑が決まっているセリエの方が先に此処から居なくなるだろう。


それなのに、どこか毒の抜けた目の前の男の方が覇気を無くして全てを受け入れてるいる様だった。


それが余計にセリエの心を逆撫でした。


「は?努力が何?牢に入れられたからなに?私が何をしたというの?」



「欲張っただろう。対価以上のものを」



「は?」

「私も、お前も。けれどホッとした」



イスルカは睨みつけるセリエが返事をしない事を確認すると続けた。



「あの場では、誰に殺されても酷い目にあっただろう。特にあの侯爵の目は……っ」


ブルブルと震えて言うイスルカにセリエの頭は段々と冷えて、あの時の光景を思い出していく。



また、身体が震え始めまるで闇を纏ったあの夜空のような瞳と、桃色の怒りに燃える瞳、ふたりの王族の金色の瞳は軽蔑を宿していた。



「あの場で、死ん……でっ!?」


「考え無かったのか、私は怖くて仕方が無かった」



セリエはそれでもあの星空の様な瞳が羨ましくて欲しいと、金色の瞳に見つめられたいと、思ってしまう自分自身が恐ろしいのか、


彼ら自体が恐ろしいのかもう分からなかった。



ただ、死への恐怖とイブリアへと嫉妬の念だけが彼女を支配した。





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