私の愛しい婚約者はハーレム体質

abang

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エバンズの決心と解放

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「結界は私とアシェルで貼り直しました」

「これで、僕達以外は入れない筈だよ」




皇帝にセレスティーヌの復活と、ヘスティアの加護がティアラにある事を悟らせぬ為にヒスタリシスには結界を張り外側は今までの荒れた姿に見えるように細工をした。



あれこれと、試してみたもののティアラはあくまでルナエリアの守護でたる美の女神の力を授かったのであってではないので、



汚れたものや、朽ちたものを姿浄化する事は出来ても、聖力のように治癒や蘇生は使えず元々治癒の魔法が苦手なティアラにとっては膨大に膨れ上がった魔力量以外は特に変わった実感は無かった。



暫くは、ゼファーとセレスティーヌの姿を隠す為に彼らをアシェルの邸に匿う事にしいつも通りにティアラはアシェルの邸で落ち込んで暮らす姿を装う事にした。


「これならば私が通っても不自然ではないだろう」


「そうね……。でもエバ様はそれでいいのですか?」


「ああ、寧ろその方がいい」


そう言って微笑んだ表情は何処か解放されたような、ほっとしたような表情だった。


「……僕はなんで」



「貴方の存在もまだ露見する訳にはいきませんだから、ティアラ嬢の父君に協力してもらうのですよ」




ティアラと一緒に住めるのだとばかり思っていたアシェルは、ウィンザー伯爵の元で、に備えよという自らの配置に肩を落としていたが、アシェルの姿を見たウィンザー伯爵がなりふり構わず駆け寄り彼を抱きしめた瞬間に、アシェルは初めて涙を流した。




「アシェル……よく戻った!」



「ウィンザー伯爵……僕っ」



「全部聞いた、……本当に生きていて良かった」



「パパ、暫くは手筈通りにお願い」


「ああ…….お前達、いや。野暮な事はやめよう」



「ちゃんとケジメをつけます」


「アシェル、」



「ティアラを傷つけてばかりだったから……僕は僕の無知や無力をどこかで境遇の所為にして投げやりに生きていたんです。僕の為に傷ついてくれる人がいる事に自分の居場所を求めてしまう程に歪んでいた」




「……次に、ティアラを傷つける事があったらいくらお前でも許さんぞ」



「ティアラが受けれてくれたなら、誓って幸せにします」



「アシェル、私は……」


「ティアラ。きちんと考えて返事をしなさい」


「パパ……、えぇそうね。私達はまず全てを終わらせないと」



(エレオドーラの王侯貴族は腐敗している)





エバンズは皇宮に戻り、長く暗い廊下を歩いていた。

少し前まで賑やかだった所為か、とても冷たく寂しく感じる皇宮では頭を下げてすれ違う使用人以外とは言葉を交わす事もなくそれが更にアシェルやティアラと居た時間とのギャップを感じさせた。


皇后を護衛する第二騎士団や、彼が率いる第三騎士団。

多くの使用人がエバンズを慕っているし彼もそんな人々を大切にしてるが、皇帝や聖女であるアイリーンを支持する者の方が圧倒的に多い。




「殿下、皇帝陛下がお呼びですが……」


「すぐに行くと伝えてくれ」


エバンズを慕う使用人が控えめに皇帝からの呼び出しを伝えると、あっさりと聞き入れたエバンズはどうみても平常通りの彼だった。



皇帝は今の時間帯は大抵がな時間帯であり、まだ薄ら明るいにも関わらず酒に溺れ、椅子にだらけてもたれかかる姿はいつ見ても皇帝としては目を背けたくなるほど愚かだった。


「エバンズ……、やっと来らか。このノロマめ」



「申し訳ありません、用事がありましたので」



「生意気らな……まぁいい、あの小娘は手に入れられたのか」



「いえ、良き友人です」




「アイリーンが使えない以上、あれくらいの魔力の女を掴まれねばならんぞエバンズ」




「ええ、もうすぐ父上の気苦労も無くなるでしょう」




エバンズは含みのある笑顔で皇帝に言った。


まさか、自分に歯向かう訳がないと信じている皇帝はそれは愉快そうに笑ってエバンズを初めて褒めた。


「ハハハハハハハハ!!!!初めてお前を息子だと感じたぞ!!!」





「そうですか」



「よい、しっかりとあの忌まわしきウィンザーを獲ってこい」



「さて、獲られるのはどっちか」


「ん?何か言ったか?」




「いえ。



皇帝に背を向けて歩き出しエバンズの表情は憑き物がとれたかのような清々しい表情だった。


無礼にも、エバンズに挨拶をすることなくすれ違った皇帝の部下である男が気にもならない程に。



「陛下っ!大変です!!!アイリーン様がっ……!」




「!」

(アイリーン?)


「また騒いでおるのか、離宮にでも閉じ込めておけ。処分は後々考えることにする、面倒な役立たずだ全く」



「皇后陛下の体調も思わしくありません……どうがご指示を」


「あー、あの孕み袋か。エバンズに任せている、


そうエバンズの背中に投げかけたどうでも良さそうな声のの意味が分かるエバンズは吐き気すらするほどだった。



「ええ。任せてください、私の母ですので」



「ハッハッハッ!アイリーンの影に隠れていたか!皇太子らしくなったなエバンズ!期待しているぞ!」


「はい」


「ヘマはするなよ、妹のように」



(ヘマをしたのはそっちだ、父上)

「はい。では、父上……





「ああ、さっさと行け」

























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