私の愛しい婚約者はハーレム体質

abang

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赤い月と静かな終焉


黒々と立ち上がる黒柱、アシェルの魔力だと気付くには十分だった。

そんな事ができる者はこの国にそう居ないのだ。



そして皇帝は魔力こそ探知するのに鈍いものの、感じ慣れたこの背筋の凍るような感覚を憶えていたのだ。




「ああ、やはりゼファーに似ているな」



どちらかというと温厚でこのような魔力の使い方は苦手だった彼だが、ゼファーの強大で禍々しい魔力はいつも皇帝の脅威だったからだ。



だが、ゼファーのそれとは少し違うこの凶暴な魔力は絶対にアシェルで間違いなかった。




「い、生きておったのか!!必ず捕らえろ!!!!!!」


裏返る声など気にした様子もなく叫ぶ皇帝の様子に皆が情けないと感じ、不安に思ったが此処で命に逆らえばこの場で斬られるのは自分、「御意」と声を揃えて剣を抜いた騎士達は迫り来る脅威に備えた。



次々と来る伝令、


城の南門がグラウディエンスの裏切りによって陥落、北門からウィンザーの侵攻と占拠を報告する騎士の焦った声。


各所から、救援要請と敗北の報告が相次ぎあっという間に皇帝の居る本宮と僅かな騎士だけを残してアシェル側の手中に落ちた。


「ウィンザー家門とその傍系、グラウディエンス家門とその傍系、その他有力な貴族派の家門によるクーデターと思われます!!」



「何ッ!?小癪な……ッ!転移窓を開きヒスタリシスから兵を引き上げよ!エバンズ率いる第三騎士団に鎮圧を命じ、皇后宮の第二騎士団も参戦せよ!皇帝命令だ!!」



「陛下!丁度エバンズ殿下が第三、第四騎士団長と共に謁見を申し込んでおります!!」



「おお!流石はわしの息子だ!!通せ通せ!!」




「父上に拝謁致します、本日は……



「は?」




エバンズの合図で攻め入る騎士達はあっという間に王座のあるこの謁見室を制圧し両脇を護衛する第一騎士団長、副団長に剣を向けたエバンズの後ろに控える其々の騎士団長。



そして、扉を開けて入って来たのは……



「アシェルっ………」



「久しぶりだね、皇帝」



「誰に口を聞いている……ッエバンズお前、裏切ったのか!!」



「ふふ、彼を愛した事があるの?」


「……皇帝陛下、残念ながら私は残念ながら一度も貴方を父親だとは思っていません」



「エバンズゥゥ!!!……お前ら!何を押されている!殺せ!!!!」



怒りを露わにした皇帝が騎士達にそう告げると、ハッとしたように剣を握り直す第一騎士団長と、副団長。


流石と言った所か、剣士としての実力はさながら実戦での立ち回りも勿論かなりの手練れだ。


第二、第三の騎士団長であるサウルとマティアスは完全に押されているがかと言え時間さえあれば勝てても可笑しくない実力であった。


「流石は皇帝の両端を固める騎士だな、だが……」



「僕たちは正々堂々と剣の勝負をしに来たんじゃないからね……っと」



アシェルがちらりと第一騎士団のふたりと、倒れている騎士達に目を向けるとバチバチとまるで電気の流れるような音が鳴って、皇帝側の全員が痺れたように身悶え始め、倒れる。



「フフン」と語尾に音符でもつきそうなご機嫌な様子のアシェルは得意げにエバンズを見てまるで褒めてほしそうな表情をしている。



「何だ、褒めんぞ」


「えー、褒めて崇めてもらえるとおもったのに」


「馬鹿言え」


「じゃ……あとはひとりだね、?」




「うわぁああ!やめろ!そうだ!公爵位をやる!あ、アイリーンとも結婚させてやる!!」



「はっ?アイリーン?僕がアレを望んだことは一度もないが?それに……公爵位より手に入れる事になったんだ」



そういってアシェルが指差したのは、皇座。


命の危険を感じたのか、顔面を蒼白にしガクガクと震える皇帝はエバンズに「お、お前はそれでいいのかッ!は、早くそいつを殺せ!ゆくゆくはお前の椅子だろう!!」と騒ぎ立てたが、当の本人は寂しそうに俯いて、


「元々、皇位に興味はない。私は穏やかに過ごしたかった」


そう言うと扉の前に立つ者に合図を送り、ティアラとウィンザー伯爵がゼファーとセレスティーヌを連れて入室する。



「せ、セレスティーヌっ……!!私の、セレス……っ」




皇帝は腰が抜けているのか、四つ足で這うように皇座から滑り落ち、セレスティーヌの方へと近づこうとする。





「貴方のセレスティーヌだった事は一度もないわ、エレオドーラ王」



「もう、名を呼んではくれんのかセレス」


「何故?貴方は友である事すら拒んだというのに……ゼファーは長く変わり果てた姿で呪いと闘い、私も彼も大切な息子との時間を失ったわ」




「セレスは今も昔も私の妻だ。そして裏切りの果てにセレスを長く眠らせ、我が子を傷つけたお前をもう友とは言えないよ」



「た、助けてくれ……謝るよ、親友じゃないか……アシェルだって私のお陰で世の汚さを知り強くなっただろう……な?アシェル、」



「「「断る」」」



「あら…….パパ、ほんとに似ていますね」

「ふっ!ティアラ……今は笑っている場合ではない」

「パパも笑っているわ」




「エレオドーラ帝国は、ルナエリア軍に降伏する」



エバンズが静かにそう告げると、


ルナエリア国、最後の王家アシェルの母は淡々とした声で親友の最期を宣告した。




「盟約により、皇太子、皇后を対象とせずその他のエレオドーラの血族を処し、本日をもってこの国には旧国ルナエリアの名を取り戻す!」






その声は、帝国中に届くようにティアラの魔法によって細工されておりエレオドーラの降伏と、ルナエリアの復興が響き渡った。
























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