私の愛しい婚約者はハーレム体質

abang

文字の大きさ
35 / 44

最期はちゃんと……




「旧国、エレオドーラに変わって新たに新ルナエリア帝国はここに新たに、アシェル・ヴォルヴォアを皇帝として任命する」





シンとした観衆は少しの間を開けて、ヘスティアを信仰する者達から徐々に轟く歓声となる。



聖女の贅沢の為に、民に苦心を課すエレオドーラとは違うことを願っての期待でもあった。



そして、仮にも英雄であるアシェルだ。

その隣にはこの国の美の象徴ともいえるヘスティアの加護を受けたティアラが微笑んでいる。




公爵位を授かり、静かで広大な領地に宮を建てたエバンズは彼の母の旧姓、シルヴァンダを名乗りこの政権交代の功臣として、またアシェルやティアラの良き友として新帝国への忠誠を誓った。



そしてじきに、力を失ったにも関わらず聖女を偽り私利私欲の為に皇宮の兵を常日頃から酷使していたアイリーンの裁判が行われる。



その後は元皇帝の裁判である。



この戦いによって政権だけでなく勢力図は一気に変わり、


親ルナエリア帝国の皇族として、アシェルとその実の両親であるゼファー、セレスティーヌが認められた。


新しい政権では、功臣グラウディエンスは陞爵し公爵に、

同じくウィンザーも異例の陞爵で公爵となり


親ルナエリア帝国を支える三つの公爵家となり、旧国より着いてきた各傍系家門で上位貴族は固められた。


功績を残した騎士に、子爵位や男爵位を与え、同じく著しく功績を残し帝国に忠誠を誓った傭兵には騎士として騎士爵を与えた。




貴族達は一新され、健全な貴族のみが旧国より残る形となった。



「魔法院は私が預かろう」


「父さん、本当なら僕がそっちをしたいんだけど」


「お前はもう皇帝だ、仕方ないよ」


よく似た柔らかい響きの話し方、「親子なんだなぁ」と実感してティアラはおもわず少し笑った。


同じことを考えていたのか、セレスティーヌも笑っていて目が合う。


彼女こそ、容姿はまさにアシェルと瓜二つで少しだけドキリとする。



「ティアラ、あなたも皇帝の婚約者などと面倒な事になってしまって……後悔していないかしら」



「いいえ、私とアシェルのことはちゃんと私達の意志で考えていきますから、ご心配をなさらないで下さい……」



「え"っ、考えるって言うのはティアラ……っその……」

「別れるとは言っていません。きちんと向き合っていく必要があると言っているだけよ」


突然、ぐりんと顔を勢いよく回してこちらを見た顔面蒼白なアシェルに呆れたように言ったティアラにゼファーとセレスティーヌは可笑しそうに笑った。



「お前……一体何をしたんだアシェル」


「……父さん、聞かないで」


「しっかりと許しを乞うのよアシェル」


「か、母さん……わかってるよ」


しゅんと叱られた子犬のように身を縮めたアシェルに仕方なさそうに息を吐いて、ティアラがそっと彼の額に口付けをした。



「!!」


「あなたはまず、皇帝として国を導かないと。傍に居るわ、きっと大丈夫よ」




アシェルの脳裏にはひどい後悔が巡る。父と前皇帝の戦いがキッカケになったとはいえ、一人でなければこんなにも簡単に自由になれたのかと自分の無知と無力を悔いた。



けれども、もう違う。


「今度は間違えたりしない。君たちのおかげだけれど僕はもう無力じゃない……それでもこれからの僕の優先順位は常にティアラ、君だよ」


「アシェル…….」



「君だけの僕で居る、それでも大切なものは全部守ってみせる」




「……ええ、もう誰の元へも、どこへも行かないと約束して」


「約束するよ、ティアラ……左手を」


ティアラが、アシェルの言われるがままに左手を差し出すと、彼は彼女の白く滑らか手に自らの左手を絡め取るようにして口付けた。


すると、アシェルの左手の薬指とティアラの左の薬指に魔法の紋様が出現する。



「これは……誓約魔法」


心から信頼し合える者同士にしか使用できないという誓約魔法、それも最高位のものだった。


けれども、と言う事はと言う事、セレスティーヌは目を見開いてアシェルへと声を上げた。


「アシェル……誓約魔法はお互いの命をかけるものよ!?勝手に……」


「待ってください、セレスティーヌ様。これは……」


「驚かせてごめん、僕が改良したんだ。紋様の色が違うのが証拠だよ。この誓約はあくまでを縛る誓約」


「アシェル……そんな事までしなくても私は」


「そうやって信じてくれたティアラを裏切って来たんだ、簡単に僕を信じる事は難しいよねきっと、だから僕なりの誠意だと思って欲しいんだ」


「僕がティアラを裏切った時、ティアラが僕に裏切られたと感じた時に魔法は発動する。ティアラに対しての発動条件はない」



「アシェル、あなた……」



「ティアラ嬢、どうか息子の想いを受け取ってやってくれないか?……かなり重いが」


苦笑しながらいったゼファーに、気が抜けたようにふぅっと息を吐いてティアラはゆっくりと頷いた。



「……分かりました。けれど、アシェル沢山話をしましょう、誤解やすれ違いで貴方を失ってしまわぬように」


「ティアラ……いつも勝手でごめん」



「何度も言うように、別れるつもりなどないもの。今更アシェルに振り回される事も嫌とも思わないわ」


「ティアラっ!!!ごめん!!」


抱きしめたアシェルの腕は、二度と離すもんかといわんばかりに強くて


ティアラもまた、同じように抱きしめ返した。



「……もし貴方が二度私を裏切ることがあれば魔法より先に私が大丈夫よアシェル」


ぼそりと耳元で囁かれた、甘く柔らかい声に似合わぬセリフに一瞬青ざめ、身を堅くしたアシェルはすぐに笑顔になり「そうならないよ」と彼女が自分への関心を失っていない事に少しだけ嬉しそうに言った。



「「約束」」



迫り来る、残酷な決断の時を前に堅く愛を誓った二人にかつての自分達を重ねて微笑んだゼファーとセレスティーヌは今目の前に愛する人達がいることを噛み締めるようにそっと手を握った。


















感想 227

あなたにおすすめの小説

どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。 それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。 もう誰も私を信じてはくれない。 昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。 まるで人が変わったかのように…。 *設定はゆるいです。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。 しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。 「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」 屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え―― 「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。 「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」 愛なき結婚、冷遇される王妃。 それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。 ――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。