私の愛しい婚約者はハーレム体質

abang

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断罪、哀しい覚悟


「ご、誤解しているわ!!私は紛れもなくこの国の聖女よっ処刑なんてすればよく無いことが起きるわよ!!」



「アイリーン、君の聖女としての力は元々微々たるものだよ。それすら失われた君はもう聖女とは言えない」




「今だけよ!きっとすぐに戻るわ!!」



「アイリーン様、いえ……アイリーン」


「ティアラ!!貴女誰に向かって言っているの?」


眉間に皺を寄せて、口元を歪ませたアイリーンの瞳は深い闇を抱えたまま、エメラルドグリーンの瞳でまるでティアラを取り込んでしまうのではないかと思うほどに負の感情をあからさまにぶつけている。


「憎い」と語る瞳に思わずティアラの喉がヒュッっと鳴ったが、咳払いをすると落ち着いた様子で話を続けた。



「聖女の力とは、素質に始まり精神に繋がるものです。そう単純に上辺だけを取り繕ったとしても無駄です」



「うるさい!!今更アシェルを手に入れたつもり!?アシェルはもう私と……」



「ふ、勘違いじゃない?僅かでもある魔力の使い方すら知らない者を騙すのは僕にとっては簡単だったよアイリーン」



ティアラが取り出した魔道具でただ、アシェルのベッドに一人眠るアイリーンとそれを冷ややかな視線で見下ろすアシェルが映される。


集まった貴族達や、市民達はガヤガヤとざわめき立つ。


「え……アイリーン様って、あれ」

「じゃあアシェル様は……」


「あの手口に騙された令嬢は多いみたいよ、寧ろ誰が本当にアシェル様を手に入れるのか躍起になっていたほどだもの」



「じゃあ寝たと言うのは牽制の為に……?」


「皆同じ手口を使っているからバレバレだけどね」




令嬢達は、嘲笑うようにアイリーンを見て噂話を繰り広げる。
その内容は解体された一部の令嬢たちにも当てはまる上に、安全な家門に嫁いだり、侍女になって逃れた令嬢達にとって屈辱でもあった。



「…….アシェル、ただの玩具だったのに!」


(私達は落ちぶれて、アイツは皇帝ですって!?)




そんな気持ちすら、見透かして軽蔑するようなアシェルの視線が令嬢達やアイリーンに向けられると顔色を失って俯く。




「アシェルが、どうかしましたか?….…」


「ーっ!!!!」




「聖女という立場を利用して国庫を私的に散財した挙句、拘束されている身であるにもかかわらず騎士団との淫らな行為。特定の令嬢達を虐げるように指示を下し、婚約者のいる男性に言いよる聖女とは思えぬ行動の数々、その他貧しい民達への差別的な暴行罪、その他にも罪状は数えきれない程あるけれど……うーんどうしようか?」



「あ、アシェル!私達とても良い関係だったでしょう?貴方に尽くしたわ!」


「上辺ではね?僕の事を平民の癖にとまるで犬扱いしてただろう。呆れるよ」



「積み重ねた罪の数が多いからな……最低でもは免れないだろう。元聖女、アイリーンをとする」



「「「!!!」」」



想像もしていなかった言葉だった。


アシェルは驚愕する貴族達を横目に、エバンズと元皇后へとまっすぐに視線を向けて言葉を続けた。



「異論は?エバンズ、君に功臣として発言の権利を特別に与える」




「お兄様!!お願い!!たったひとりの妹でしょう!助けなさいよ!!」




「……判決を待つ間、アイリーンとの関係の修復と妹の更生を母と共に懸命に試みましたが……改善の余地はありませんでした」



静かに涙ながしたエバンズの母はハンカチで涙を拭うと、そっと、そっと頷いた。



「アイリーン……それでも愛していたわ」



「アンタなんか!母親と思った事ないの!黙っててよ役立たず!!!助けてよ!お兄様!!エバンズ!!!言う事を聞きなさいよ!!!」



エバンズはぎゅっと堪えるように唇を結んで、母を気遣うように席に座らせるとどこか赤く潤んだ目のままアシェルを真っ直ぐに見て、首をゆるく左右に振った。



「エバンズ……!!!」


アイリーンの命令するような甲高い叫び声は彼を虚しくさせた。



「……アシェル陛下、




シンと全体が静まり返った。



かつて、帝国中を虜にしたアイリーンの呆気ない最期だった。





「さようなら、アイリーン。生まれ変わっても君とは出逢いたくないなぁ」



そう言って解放されたように美しく笑ったアシェルはあまりにも残酷で、


皆の背筋が凍っただろう。


ただ凛々しく背筋を伸ばして、しっかりと見届けるティアラの姿は皇后に相応しくあまりにも高尚で皆がティアラに未来の皇后の影を見た。




「やめっ……!!キャァァ…………っ!!!!」







「見ているか?殿



「……」



別室にいるだろうエレオドーラ元皇帝に向かって呟くと、彼から伝わるものは声ではなくガチガチと歯のぶつかる音だけだった。











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