婚約者が浮気を公認しろと要求されたら、突然モテ期がやってきました。

abang

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メルリアは認めない

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「ちょっと!どう言う事!?離しなさいよ!!!」



学園中に聞こえるのではないかと思うほどの大きな声が響き渡る。


グレーシスを罠に陥れている間に、ミハイルではない別の子息との逢瀬を楽しんでいたはずのメルリアは突然押しかけてきた王宮の衛兵達に捕らえられ激昂した。




「フォンテーヌ令嬢への暴行行為を示唆したとして拘束する。尚、一連の事件は未遂に終わった為に刑は調査後、裁判にて決定します。」


王宮の制服を来た厳格そうな衛兵がメルリアの前に立ちはだかるとメルリアは訴えかけるように叫んだ。



「何よ!私は知りませんっ!離して下さい!」




「それは出来ません。ご同行を。」




「嫌よ!これは何かの陰謀よ!!!!」



「失礼」



メルリアはひどく抵抗したものの呆気なく拘束され連行された。


すぐに駆けつけた彼女の父ボーデン男爵と母ボーデン夫人は物凄い剣幕でメルリアの無罪を訴えたが通じる訳もなく、二人は王宮のとある一室の前で自らの立場も忘れて騒ぎ立てた。




「何をしている!金ならいくらでも払う!早く娘を解放しろ!!」

「そうよ!うちのメルリアがそんなことをする筈が無いわ!!」




「落ち着いてください。御令嬢はまだ投獄された訳ではありません。」



「落ちついていられるか!!」


「でしたら、裁判のご準備をなさる方がご賢明だと…」



王城に仕えるものに身分の隔たりは無いが、貴族出身の者も勿論多い。


ボーデン夫妻の相手をしているこの騎士も伯爵家の子息であり、彼らがどれ程怒ろうが、お金にモノを言わせようが動じなかった。



「だ、だったら面会を…」

「確認して参りますので、別室でお待ちください。」



「お前は帰ってなさい。」

「あなた…私だってメルリアに、」

「きっと大丈夫だ。すぐに連れて帰る。」



ボーデン男爵は伯爵家と手を組んで、メルリアを担ぎ上げた事を妻に悟られまいと妻を先に帰そうと説得する。


彼女は日頃、男爵家の豊かな富を使って優雅な生活を楽しんでいるだけで政治的な事や、社交会の難しい話には疎いのだ。


だが、愛らしく生まれた娘を猫可愛がりしており、不安げに夫を見つめた後に戸惑いながらも頷き馬車に戻るのだった。



メルリアとの面会に与えられた時間は短く、突然の出来事に混乱したままのボーデン男爵にメルリアはそっと、小さな声で言う。



「伯爵家に伝えて下さい。」


「我々と同じだ。調査に入っているよ。」


「…んなっ!?ではどうすれば…」


「メルリア…行き止まりだ。なるべく刑が軽くなるように考えるしかない。上手くいけば学園を去る程度で済むかもしれん。」



「……その考えとは?」



「残りの公爵家の内から一人の心を掴むんだ。グレーシスへの気持ちを利用して仲違いさせ、我々側へ引き抜け。」



「無理よ!そんなのっ」



「しっ、もう人が来る。とにかくやるんだ!分かったな?」




「お父様っ!!」




メルリアは絶望した。だが、伯爵の力は思ったよりも役に立つもので、証拠となりそうな人物が次々と行方を眩ましたりとメルリアを直接紐付ける証拠を隠し上手く時間稼ぎをしていた。



その間、メルリアは王宮のこの一室で軟禁状態となった。
この機会を利用して何か行動すべきだと焦っては居るが、メルリアへの面会は自由ではなく制限があった。

勿論メルリアが自らの意思で動き回る事は禁じられていた。



「どうしよう…っ、」


けれどもそんなメルリアにも、すぐにチャンスは到来する。



「失礼するよ」


「どうぞ…」


「メルリア嬢、久しぶりだね」



「アイズ様…っどうして?」



「少し、手を貸して欲しくってね。」



(きっと、何か拗れたのよ!チャンスだわ!)

「アイズ様の気苦労はお察し致しますわ!…私なら貴方を選ぶのにっ」




突然見当違いな事を言い始めるメルリアにゾッと鳥肌が立ったアイズであったが、その意図に気付き内心でほくそ笑んだ。




「(へぇ、そう来たか。)は優しいね…」


「(メルリア?呼び捨てなんてっ)あなたの相談でしたら、いくらでもお聞きしますわっ」



アイズはただ、証人の隠し場所や協力者を全員割り出す為に尋問に来ただけだったのだが、妙な勘違いをしたメルリアは自らの都合のいいように考え、目の前で頬を染めて顔を緩めていた。


(僕がいちばん効果的だって、シヴァも見事的中するね。)



(私に惚れさせて協力を得るのよ。学園を辞めてもサンスネッグ家に嫁げればこっちのものよ!)





それから数日間、アイズは頻繁にメルリアの元を訪れた。

勿論それはアイズに与えられたという職務であり、自らの意思で彼女を訪ねた訳では無かったが、メルリアは全く人の話を聞かない上に勝手にアイズは自らに恋したものだと思い込んでいた。


グレーシスを巡って、シヴァ達と関係が拗れたのか、傷心したのだと思い込んでいるメルリアはアイズの心の隙間につけ込んでいる



だが、この閉鎖された空間で自らの自分勝手な思い込みによって、恋に堕ちたのは勿論アイズではなく、メルリアの方であった。



「アイズ様っ……私っ、アイズ様の事をすっかり好きに…」



「そう、ありがとう。でも僕、でね。」



「何でもお話しますわ!アイズ様、だから私をここから解放して下さいっ」



「うーん、何でもって言うけど、嘘がないってどう証明するの?」


「…っ、私、証人の隠し場所を話します。解決したら、私だけは助けてください。そしたら私貴方の為だけにずっと貴方の傍にいます!」



「…じゃあメルリア、君は僕とになろうと?」

 

目を細めて睨むようにメルリアを見つめた後に、メルリアの耳元でそう囁いたアイズに、蕩けたように目をとろんとさせたメルリアは、洗いざらい全部彼に話した。


すると、彼は始終呆れた様子で一通り話を聞いた後に、扉の向こうに声をかけた。



「だってさ。殿下。証言取れたよ。」


「え"?」



(殿下?どうゆうこと?仲違いしたんじゃないの?)


「アイズ様…?私の事愛してるのよね?嘘のない関係になろうって、」


「ああ、言葉の通りだよ。僕達は嘘のない関係になった。ただそれだけだよ、愛してる?どうしてそんな関係だと思ったの?」




メルリアはアイズの冷たい笑顔に絶望した。


「ボーデン令嬢、思い込みだ。アイズ卿は尋問に適任だと、職務で通っていただけだ。恋情ではない。」



「…っな!?」


冷静になって次々と思い出すアイズとの会話、


メルリアは羞恥と怒りで全身が火照るのが自分でも分かった。


「何ですって!?騙したのね!?」


「いや、メルリア嬢は話を聞かない上に、何か思い違いをしている様子だったのでね。………



「そ、そんなわけないです!!!!」




「では、メルリア嬢の証言を元に調査を再開する。」



「ご協力に感謝するよ、。」




メルリアは、アイズが憎くて、恥ずかしかった。


だが、彼をもう好きになってしまっていたのだ。


自分が弄んできた男たちは皆こんな気持ちだったのか?


ミハイルは、どんな気持ちだったのだろう。



初めて、自分以外の誰かの気持ちをメルリアが考えた瞬間であった。



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