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第28話 テレビ収録

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「トライアングルアルファさん入ります!」

 歌撮りのスタジオはトライアングルアルファのためにセットされていた。
 三角形がたくさん散りばめら、黄色青色緑色が使われたセット。

「よろしくお願いします!」
「バミり確認お願いします」

 トライアングルアルファの3人は定位置につく、シュンくんがセンター左右にリクくんエイジくん。
 土曜日のライブで見た、『telepathy rhythm』の陣形だ。

「それじゃリハーサル始めます!」

 合図とともに3人が最初のポーズを取る。
 イントロが始まる。
『telepathy rhythm』のダンスはそこまで激しくない。
 歌がその分、繊細だ。

 今回のはライブでやったフルバージョンではなく、ショートバージョンのようだった。

「はい、オーケー! Vチェック!」

 瀬川さんが再び、モニタに移動する。

 手で振り付けを再現しながら、瀬川さんがリクくんに話しかける。

「リク、サビのこの手の振り抑えろ、シュンの顔にかかってた」
「はーい!」

 普段とは違うステージ。確認事項がいくつかあるようだ。
 私は何も口出しすることが出来ず、それを眺めていた。

「エイジ、バク転のスペース、大丈夫か? 足りたか?」
「はい! いけます!」
「シュン、テレパシーリズムの音程また狂ってた」
「……はい」

 シュンくんが目を閉じた。
 どうやら、普段から苦手な部分らしい。
 音を取っているのか、シュンくんが指をクルクルと宙で動かす。

「一回音確認します?」

 番組スタッフさんが声をかけてくれる。

「お願いします! 二回目のテレパシーリズムです」
「了解! 歌入り音源流してー」

 流れ出す『telepathy rhythm』。
 シュンくんは目を閉じて、リズムに乗って、口ずさんだ。

「テレパシーリズム~」

 声が、トライアングルアルファの3人と瀬川さんの声が揃った。
 素人が聞いても分かる、音程が合っている。

「オーケー! 汗拭いてー! メイク直してー! よし、行こう!」

 現場の責任者らしき人から指示が飛ぶ。

「お願いしまーす!」

 再び、3人が定位置につく。
『telepathy rhythm』のイントロが流れ出し、ライトが点滅する。



 3人は『telepathy rhythm』を歌いきった。

「本日はありがとうございましたー!」
「ありがとうございました! オンエア楽しみにしてます!」
「はーい!」

 控え室に戻ってきて、皆はどっと疲れたように畳に転がった。

「うあー! テレビ緊張するー!」
「ほら、メイク落として着替え!」
「はーい! あ、フカミン振りありがと」
「いや、あれが俺の仕事だから」

 私は急いで控え室に用意されていたメイク落としの封を開ける。

「ありがと由香ちゃん」

 受け取ってリクくんがにへらと笑う。
 エイジくんシュンくんもメイクを落とす。

 3人が豪快に着替え出す。
 私はまたも目をそらした。

 そんな私に苦笑しながら、横で瀬川さんが口を開く。

「と、まあ、こんな感じでスピーディーなのがテレビの現場です」
「あっという間でしたね……」
「生放送だともっと過酷です」

 瀬川さんが衣装をまとめる。

「えーっと次に衣装使うのは土曜だからクリーニング出すか」
「よろしくお願いします!」

 エイジくんの大声に思わずそちらを見ると半裸で頭を下げていた。
 筋肉すごいな、エイジくん。
 その隣でリクくんがパンツ一丁で首をかしげる。
 早く履いてほしい……。

「あれ? スポーツバラエティーは何着てくん?」
「ジャージ。それ用に3人揃いのジャージ作った」
「おー! じゃあさ、シュンも着ていっしょに写真撮ろうぜ! スケジュールの都合で番組には出れなかったけどお揃いです! ってSNS上げよう!」
「いいな。でも、それは放送後だな、変にファンに期待させるのも悪いし」
「そだね! ジャージ楽しみー!」

 リクくんが鼻歌を歌い出す。
『春空の色』だった。

「卒業の歌……ですよね、『春空の色』」
「はい。3人がちょうど高校卒業なので、記念になるだろう、って。作詞は社長です」
「社長さんが……」

 そういえば三角社長は演歌歌手だったか。歌詞なら問題なく作れるのだろう。

「よし! 着替え終わったな! 忘れ物ないな! 撤収!」
「はい!」

 5人で控え室を後にし、私達はテレビ局から撤収した。
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