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金だけを置いてホテルを出たあと、自宅に戻った村沢は窓枠に肘をつき、満月を眺めながら煙草をふかしていた。
夏が近づいてきているのか、外は少し蒸し暑い。

そういえば、もう少しで学生は夏休みが始まる時期か。
街明かりで薄明るい空をみながらふとそんなことを思った時、携帯から通知音が鳴った。
三橋だろうかと画面を確認すると、通知は亮からのものだった。

あいつから連絡が来ることなんて予想していなかった村沢は、内容が気になってすぐにトーク画面を開いた。

すると、麗華を心配するような内容のメールが何件か来ていた。何を期待していたという訳でもないが、少しガッカリした自分に頭を捻る。

この時間だとまだ家にも着いていないだろうに、真っ先に麗華のことを心配して連絡してきたあたり、あいつは見た目によらずお人好しなのかもしれない。

そんなお人好しの為に
『あいつは数年前に不妊治療を受けているから心配いらない』
と丁寧に説明する文を返してやったというのに、あいつから返ってきたのは『クズ』という短い一言だけだった。

村沢は一人静かに額に青筋を浮かべ、携帯を尻衣嚢ポケットにしまうと煙草の日を消して窓を閉めた。


⥤ ⥤ ⥤

呼び鈴がなり、モニター付きのドアホンで応えると、ドアが開いて重い足取りの亮が部屋の中へと入ってくる。
鍵は開けてあるから勝手に入って来いと伝えているのだが、亮は毎度律儀に呼び鈴を鳴らす。

「面倒だからいい加減一々呼び鈴鳴らすの辞めてくれないか?」

「なんか……他人の家に勝手に入るのは気が引けるし…わざわざ来てやってるんだからそのくらいいいだろ」

「…お前のその生意気な口の利き方もどうにかならないのか」

「いいからさっさとしろよ変態おやじ。今日は早く帰りたいんだ」
まるで態度の悪いデリヘルのような舐めた態度が頭にくる。ついこの間あんなことをされておいて、まだ自分が俺と対等の立場にいると思っているのだろうか。いや、これは下手したら俺の方が下に見られている気がする。


「手加減しすぎた俺が悪かった」
唐突にそう呟いて怪しげな表情を浮かべる村沢に、亮は顔を引き攣らせた。

「急に何の話……」

「痛い目見せてやらねぇと分からない馬鹿みてぇだから、今から俺が教えてやるって話」
亮はニコッと薄っぺらい笑顔を浮かべる村沢に後退るが、もう既に遅く、腕を掴まれてソファーの上に押し倒された。

「うっ…ちょ、何の話だよ!」

「暴れんなよ。早く終わらせたいんだろ?だったら大人しくしてろ」
服を脱がしていくと、先程までスカしていた顔が余裕なさげに引き攣る。
今日は来いとしか連絡しなかったはずだが、中はもう準備が出来ていた。この間は面倒が無くなるという理由で準備をしてこいと伝えておいたが、これはこれで面白くない。

気分が少し萎えたが、手間が省けていいと考えることにして、腕を頭上で組ませて拘束する。
「縛らなくてもいいだろ」と抵抗する亮を無視し、専用の拘束具で足をM字に開脚した状態で固定した。

ローションでヌメった尻穴も、乱暴な言動とは裏腹に期待して硬くなった肉棒も、何もかもがよく見える。

「随分と恥ずかしい格好だな」
小馬鹿にするように喉で笑うと、亮は顔を赤らめて「お前がやったんだろ!」と声を荒らげた。


うるさいので先に猿轡で口を塞ぐと、尻衣嚢ポケットからスマホを取り出し、ワイヤレスのイヤホンと繋ぐ。
それを亮の耳に付けようとすると、これからされる事の察しがついたのか必死に抵抗した。と言っても、きつめに拘束しているので身動ぎ程度にしかなっていないが。


音を流す前に目を布で覆って後頭部で縛ると、この間ホテルで撮っておいた動画を再生した。
必要のない部分はカットしてあるので、動画はちょうど亮が俺に挿入された所から始まる。
突然自分の喘ぎ声がイヤホンから聞こえてきて驚いたのか、音声を流した途端亮は体を跳ねさせた。

よく見ると尻穴が寂しげにひくついていたので、男のものを模した電動のバイブを奥まで突き刺した。すると亮はそれだけで軽く達した。

「はっ…変態はどっちだか」
そそり立った陰茎を軽く指で弾くと、大袈裟に体を跳ねさせる。
視覚も聴覚も塞いでいるから、敏感になっているのだろう。なにより、自分で自分が犯されている時の喘ぎ声を聞いているんだ。
隠れマゾのこいつのことだから、さぞかし興奮していることだろう。


胸の突起にも小粒のバイブを固定すると、上と下のバイブのスイッチを同時に入れた。

小腹が空いたので赤ワインと肴を用意し、艶のある声で呻く亮の隣に腰掛け、テレビを見ながらそれらを食す。
大して面白い番組は無かったが、隣にあられもない姿で体をビクつかせている亮がいるので退屈はしなかった。
途中からテレビの音がうるさく感じ、電源を切ると静かな部屋の中に微かなバイブ音と、亮の悶える声だけが響く。

暫くの間様子を眺めていると、一際大きく体を痙攣させ、苦しそうに喘ぐなんてことが何度かあった。
精液こそ出ていないが、中だけの刺激で達しているのだろう。

陰茎は可哀想なほどに先走りでどろどろになっており、まるで泣いているみたいだ。

そこでふと、まだこいつの泣き顔を見れていないことに気がつく。こいつを初めて犯した時、泣いているような様子はあったが、背中越しで見れていなかった。


“泣かせてやりたい”

頭がその事で一杯になった。

どこまですればこいつは顔を歪ませて泣くのか。
気になって仕方がなかった。

目隠しを取ると、亮は既に参っていた。
眉を歪め、酷く辛そうな顔をしている。
身体的ではなく精神的に辛いのだろう。

もう少し虐めてやれば泣くんじゃないのか。
そう思う程に弱って見えた。

現に、助けを求めるような目で俺を見つめてくる。

その表情を見た俺は、“楽しい”と心の底から思った。

もっと歪めてやりたい。

もっと傷つけてやりたい。

羞恥、屈辱、苦痛、快楽。
それらを持ってもっと、もっと

いじめたい。

泣かせたい。

ぐちゃぐちゃにして壊してしまいたい。



その時の俺は一体どんな表情をしていたのか分からないが、俺の顔を見た亮はお化けでもみた幼い子供のような表情になった。
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