そして503号室だけになった

夜乃 凛

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第二章 現場捜査のツインキャッスル

どこで、死んだのか?

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「しかし、現場に来たものの、それなりの収穫はあったのかな?」

 桜が加羅と刀利に尋ねた。

「ほぼ無いです」

 刀利は真顔だった。考えているときの表情である。人間は思考しているとき、ぼーっとしているように見えるか、あるいは真顔かのどちらかかもしれない。

「アイスコーヒーは?」

 加羅の反応がそれだった。

「ん?アイスコーヒー?」

 桜が首を傾げた。

「ルームサービスを、なんらかの手段で風間が頼んだんだろ?じゃあ、ルームサービスで注文した品が、この部屋のどこかにあるはずだ。しかし、現状見当たらない。本当にルームサービスなんて頼んでいたのか?証言者、西山慎太の嘘ではないのか?まあ、確たる物証も無いが……刀利に影響されたか」

「なんか、悪影響を受けたように感じるんですけど?」

「はは。すまんすまん。しかし実際、ルームサービスがかなり怪しい。たまたまドアが開いていたとしても、中に入るか?躊躇すると思うが」

 加羅は苦笑していた。刀利に対して。

「うーん、ホテル側の指導が、そういう方向性だったとか。お客様第一なんじゃないですか?」

「そうかもな。しかし、冷静に証言出来ているというのも、おかしな話だ。刺殺体だったのだから、それなりに動揺していてもおかしくないと思うが。冷静な証言者だったのかもしれないな」

「あ、それは私も思います。なんか、引っかかるんですよね。西山慎太さんの証言……そもそも、風間さんは死んでいたのだから、誰がルームサービス頼んだのかって話で」

「フロントの通話記録」

「ん?ああ、ルームサービスの正確性を調べろってことですね。確かに……通話記録が残るのであれば、もしかしたら、ルームサービスなんてそもそも頼んでない可能性が」

 加羅と刀利の議論。桜も考え込んでいる。

「それに対しても、いい意見だと思う。まあ、部下に確認させてみるよ。何か他に気づいたことはある?二人とも」

「無いです」

 刀利が即答。加羅が少し遅れて、言った。

「ダクト」

「ダクト?」

 刀利と桜が同時に反応した。

「凶器の在処。考えてみたが、可能性は三つだけだから、今のうちに確認しておいた方が良いと思ってな。冷静に考えて、凶器が発見されていない。三つの可能性。犯人が持ち去った。しかし、血濡れの凶器を持ち歩くというのは、かなり怪しい。二つ目。窓から投げ捨てた
。これも可能性の話で、目撃者が出来てしまうし、通行人に直撃なんてことになりかねない。よって三つ目の可能性として、ダクトに投げ入れた。そうだろう?他の可能性は無い。一つくらいは、あるが……」

「教えてください!」

「そもそもここで殺されたわけではない可能性」
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