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第四章 多角的視覚の底辺の長さ
徳川幕府オンライン
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加羅たちは、レストランから出た。桜の奢りである。出る際、別れを惜しむように、刀利がピザをもぐもぐと食べていた。ピザ魔人である。
その刀利が切り出した。
「なんか、色々な情報を得られたような、そうでないような。志村さん?あの人、大分ゲームに染まってますよね。ゲームのためならなんだってやりそうな……それこそ、殺人さえ。でも、オンラインゲームにログインしていたっていう記録は、サーバー側にも残るでしょうから、犯行時刻に自宅にいたのだから、白ですかね」
その疑問には、加羅が答えた。
「いや、ログインしたまま、放置していたという可能性もある。したがって、志村友樹は完全なる白ではない。殺人犯の動機……今の所、持っているのは、志村友樹だけだな」
「アイテムが自分の手元に来るから、ってこと?」
桜は不満げである。なにしろ、彼女はオンラインゲームなど、やったことがない。
「その可能性は十分にあります。人間は、何に対して魂をかけているかってのが違うんだ。パッと見て、オンラインゲームは、そんなに魂をかけるものではない、そう思うかもしれない。俺も、オンラインゲームはやらないが……人と交流が出来るわけだ。強くなれば、プレイヤーも寄ってくるだろう。今、流行の、『繋がる』っていうのに直結しているのかもな。だから、人恋しさに、オンラインゲームに魂を売り渡すというのは、あり得ない話じゃないな」
「そういうものかな?アナログで、地に足の着いた交流をするのが、人の術だと思うけど」
「それが出来ない事情の者が、いるんだろう。確かに、人と人との距離は、近くなりすぎた。この時代はな。アナログに繋がっていることが、人の術だというのはわかる。だが、それが上手くいかない世の中だ」
加羅はフッとため息をついた。彼も、どちらかと言えば、アナログである。
「徳川幕府の時にインターネットがあったら、大混乱ですね」
刀利が言った。彼女の言葉の方が、混乱しているのではないか。
「それはいいとして」
加羅が遮った。
「何が、いいんですか!イマイチのギャグだって言いたいんですか!」
「イマイチだと言う気も起きない」
「徳川幕府オンライン」
食い下がる刀利。何と戦っているのかわからない。
桜は話題を事件に戻したかったので、呟いた。
「志村友樹には動機がある、か」
「あるっちゃある。しかし……」
加羅は手を軽く振った。
「何か、きな臭い。きな臭いのは、志村友樹ではなくて、別の証言者たちの方。コンビニ店員の伊藤。ブラックホテルの従業員の、西山慎太」
「なんでですか?ああ、西山慎太のアイスコーヒーが、怪しいと?」
「そう。現場に、アイスコーヒーなど残っていなかった。西山は、アイスコーヒーを持って行ったと、確かに証言している。それを踏まえると、じゃあ、そのアイスコーヒーはどこへ消えたのか。そういう話になる。おかしいだろう?現時点の推察だと、アイスコーヒーが存在しなかったのだから、西山はルームサービスの連絡なんて、受けてなかったんだ。そうだろう?」
「なるほど。となると、風間秀介が『生存していた時間』に、ブレが生じるわけですね?二つのホテルに対して、悪戯まがいの脅迫状が届いた。そして、事実として、ほぼ同じ時刻に通報があった。ここまで確定。しかし、通報された時間と、被害者が殺された時間は、一致するとは限らない。何もかもが限らない」
刀利はすらすらと語る。淀みが無い
「そう。鋭いな。さて、レストランも出たし、どこに行く?」
「正平さんの話も聞きたいような。後、もうちょっとだけ、ホテルの従業員さんとか。話、聞いてみたいですね」
刀利はニコニコしている。相変わらず回転の速い子だな、と思う桜であった。
その刀利が切り出した。
「なんか、色々な情報を得られたような、そうでないような。志村さん?あの人、大分ゲームに染まってますよね。ゲームのためならなんだってやりそうな……それこそ、殺人さえ。でも、オンラインゲームにログインしていたっていう記録は、サーバー側にも残るでしょうから、犯行時刻に自宅にいたのだから、白ですかね」
その疑問には、加羅が答えた。
「いや、ログインしたまま、放置していたという可能性もある。したがって、志村友樹は完全なる白ではない。殺人犯の動機……今の所、持っているのは、志村友樹だけだな」
「アイテムが自分の手元に来るから、ってこと?」
桜は不満げである。なにしろ、彼女はオンラインゲームなど、やったことがない。
「その可能性は十分にあります。人間は、何に対して魂をかけているかってのが違うんだ。パッと見て、オンラインゲームは、そんなに魂をかけるものではない、そう思うかもしれない。俺も、オンラインゲームはやらないが……人と交流が出来るわけだ。強くなれば、プレイヤーも寄ってくるだろう。今、流行の、『繋がる』っていうのに直結しているのかもな。だから、人恋しさに、オンラインゲームに魂を売り渡すというのは、あり得ない話じゃないな」
「そういうものかな?アナログで、地に足の着いた交流をするのが、人の術だと思うけど」
「それが出来ない事情の者が、いるんだろう。確かに、人と人との距離は、近くなりすぎた。この時代はな。アナログに繋がっていることが、人の術だというのはわかる。だが、それが上手くいかない世の中だ」
加羅はフッとため息をついた。彼も、どちらかと言えば、アナログである。
「徳川幕府の時にインターネットがあったら、大混乱ですね」
刀利が言った。彼女の言葉の方が、混乱しているのではないか。
「それはいいとして」
加羅が遮った。
「何が、いいんですか!イマイチのギャグだって言いたいんですか!」
「イマイチだと言う気も起きない」
「徳川幕府オンライン」
食い下がる刀利。何と戦っているのかわからない。
桜は話題を事件に戻したかったので、呟いた。
「志村友樹には動機がある、か」
「あるっちゃある。しかし……」
加羅は手を軽く振った。
「何か、きな臭い。きな臭いのは、志村友樹ではなくて、別の証言者たちの方。コンビニ店員の伊藤。ブラックホテルの従業員の、西山慎太」
「なんでですか?ああ、西山慎太のアイスコーヒーが、怪しいと?」
「そう。現場に、アイスコーヒーなど残っていなかった。西山は、アイスコーヒーを持って行ったと、確かに証言している。それを踏まえると、じゃあ、そのアイスコーヒーはどこへ消えたのか。そういう話になる。おかしいだろう?現時点の推察だと、アイスコーヒーが存在しなかったのだから、西山はルームサービスの連絡なんて、受けてなかったんだ。そうだろう?」
「なるほど。となると、風間秀介が『生存していた時間』に、ブレが生じるわけですね?二つのホテルに対して、悪戯まがいの脅迫状が届いた。そして、事実として、ほぼ同じ時刻に通報があった。ここまで確定。しかし、通報された時間と、被害者が殺された時間は、一致するとは限らない。何もかもが限らない」
刀利はすらすらと語る。淀みが無い
「そう。鋭いな。さて、レストランも出たし、どこに行く?」
「正平さんの話も聞きたいような。後、もうちょっとだけ、ホテルの従業員さんとか。話、聞いてみたいですね」
刀利はニコニコしている。相変わらず回転の速い子だな、と思う桜であった。
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