妹に幸せになって欲しくて結婚相手を譲りました。

ニコル視点

俺には、それなりに見た目がいい婚約者と、心から愛する愛しい恋人がいる。
その2人は姉妹で、姉妹で俺の事を愛している。


婚約者のユリアナは見た目は良いが、愛嬌がなく、お堅い感じで一緒に居て息が詰まる。
だが、その妹で私の恋人であるヘレナは見た目も愛らしく、愛嬌もあって俺をいつも楽しませてくれる。
どちらと共に居たいかと言われれば間違いなくヘレナを選ぶだろう。


だが、悲しいかな、ヘレナは次女なので結婚しても俺がカールトン公爵の爵位を次ぐことは出来ない。
だからユリアナと結婚するしか俺達には道がない。


幸い、ユリアナは俺とヘレナの関係には気付いていないし、彼女はヘレナの事を溺愛している。
なので、俺達が結婚してからもヘレナが訪ねて来ようとも嫌がらないだろう。


ユリアナと結婚すれば俺は爵位を継げるし、ヘレナとも良い関係を続けられる。なんて素晴らしい事だ！


もしヘレナの事がバレたとしても、ユリアナは俺の事を愛しているし、可愛がっているヘレナを責めたりも出来ないだろ。
結局のところ、バレたとしても謝れば彼女なら許してくれるに決まっている。


流石にカールトン公爵にバレればタダでは済まされないだろうから、その点は注意しながらヘレナと逢瀬を重ねる。


ユリアナと結婚すれば、まだ家にいるヘレナと会う機会も格段に上がる。
今まで我慢していた事だって、出来るようになるだろう。


ふふ、ユリアナとの結婚が待ち遠しくて仕方がないな！
ユリアナと結婚すれば幸せな人生が待っている！


そう信じて疑わなかった。


なのに、この状況はなんだ…？
ユリアナが誓いの言葉を言わなかった。
それどころか、俺とヘレナを結婚させるだと！？


待て待て、それはマズイ。非常に不味い。
俺もヘレナも家を継ぐことは出来ない。
愛し合っていたとしても、金も地位もなければ幸せになんてなれるはずがない！


待て、本当に待ってくれ！
確かにヘレナと結婚したいとは思っていたが、こんな形は望んでいない！
弁明しようにも、忌々しい弟のカーライルが会場中を無駄に盛り上げて逃げ道を潰してくる。


どうすることも出来ずにヘレナはカールトン公爵に腕を引かれてバージンロードを歩いてくるし、カーライルはユリアナに求婚して結婚することになるし！俺の計画がめちゃくちゃだ！


ユリアナめ、たった1度ヘレナとキスしている所を見ただけなのにこんな事をするなんて、一体俺にどんな恨みがあるんだ！
今まで散々優しくしてやったのに、その仕打ちがこれだと？ふざけるな！


おかげで俺は平民に落ち、汗水垂らして端金を稼ぐ事になるし、金が足りなくて働き出したヘレナは帰ってくる度に俺に当たり散らすし！
あんなにも愛らしかったヘレナはどこに行ったんだ！


こうなったのは全てが俺のせいだと？
全ての始まりはヘレナが俺に色目を使ってきたからだろうが！
くそぉ、こんな女ならユリアナと結婚していた方が何倍もマシだったぞ！


しかも、あの生意気なカーライルが兄を差し置いて公爵を継ぐなんて、そんなの…そんなの許せるわけがないだろ！


何故こうなってしまったんだ！


あんなにも幸せだったのに、なんて…なんて惨めなんだ…。
俺が、この俺が…公爵になっていたはずなのに…。