嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

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11、皇帝視点

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「はぁ…」
「どうしたんですか?辛気臭い顔してため息なんて付いて」
「うるさい」


八つ当たりだと自分でも分かっているが、アレックスに怒りをぶつけてしまう。


「まぁ、次がありますよ」
「うるさいと言っているだろ!」
「はいはい。そんなにイライラするなら、早く皇后に謝ればいいでしょうに…」


そんなことは言われなくても分かっている。だが、早く謝らなければと思う気持ちとは裏腹に、全く言い出せない自分がいる。


そもそも、今までの皇后の態度が悪過ぎたせいで私が素直に謝れなくなっているんだ。


いや、それは言い訳だ。全ては私がアイリに初めて会いに行った時に、皇后の事を誤解してしまったのが悪いのだ。あの時すぐに謝罪すれば良かったものを、皇后の変わりように動揺して今までズルズル言えないままでいた。


今日こそ謝ろうと夕食に誘ったまでは良かったが、まさかイザベラが急にリアムと夕食に参加したいと言い出すと思わなかった。


アイリの事を祝いたいと言われたので参加させたが、そのせいで食事中に謝罪するタイミングはなかった。


それどころか、イザベラ達を食事に参加させると事前に伝えていなかったことをチクリと言われてしまい、さらには皇后がリアムに対して無礼を働いたと勘違いし、また皇后を責めるような言い方をしてしまった。


実際は、リアムの異変に気付き、症状を確かめ適切な処置を行っていただけなのに。


無知な私は、やはり皇后は何も変わっておらず、イザベラやリアムに対して嫌がらせをする人物だと思ってしまった。


浅はかな自分に呆れてしまう。


皇后に謝罪するどころか、謝罪しなければいけない事柄を増やしてどうするんだ。それに、リアムのことを救ってくれたと感謝までしなければいけない程なのに。


「はぁ…」
「本当、辛気臭い雰囲気出すの止めてもらえません?あんなに毎日会いに行ってるのに、なんで"すまなかった"の一言が言えないんですか」


そんなことこっちが知りたい。毎日、今日こそは謝ろうと思って会いに行くのに、いざ会いに行けば、アイリを愛おしそうに抱く皇后の変わり様に戸惑って何も言えなくなってしまう。


あれは本当に皇后なのか?外見だけ似ている別人と言われた方が納得出来る変わり様だ。


今までずっと私に会おうと必死だったのに、今では私が会いに行っても礼儀として挨拶をするだけで、むしろ私には会いたくないように見える。


「はぁ…」
「もう悩んでても辛気臭い雰囲気出しても良いんで、いい加減その山のような書類をどうにかしてくれませんか?皇后と喧嘩してから一向に減ってないんですけど」
「喧嘩ではない」


だが、あの日から全く仕事が手に付かない。仕事を行っている間も、ふとした時に皇后のことが頭を過ぎる。


「もう、サクッと謝ってスッキリしましょうよ」
「それが出来たらここまで悩んでいない」
「あー、なら、今日のリアム様の件に感謝を言いに行って、その流れで謝るのはどうです?」
「それは…」


いい考えかもしれない。今日起きたことへの感謝は伝えれていないのだから、それを伝えに行き、誤解してすまなかったと謝れば不自然でも無い。


「皇后の所へ行くか」
「そうですね!善は急げですよ!早く行きましょう!んで、ぱぱっと仕事を片付けてください」


アレックスを連れて皇后の部屋へ向かった。


だがーー。


「申し訳ありません。ルビア様は今やっと眠られたところなので、また日を改めて来てください」


ピシャリとマーガレットに言いきられてしまう。


まだ20時も回っていないのに、寝るのが早過ぎるのでは無いか?


「いや、少し話したいだけなのだ、話をしたらすぐ帰るので、皇后を起こしてくれ」


こんなに早くから寝ているのだから、少しくらい起きて話をしても問題は無いだろう。そう思って言ったことだが…。


「少しは、ルビア様の事を労わって頂けませんか…!」
「マーガレット…?」


今まで見た事もない鋭い目付きでマーガレットに睨まれ困惑する。


「だが、まだ20時にもなって居ないのだぞ?」
「…分かりました、ルビア様を起こしてはいけませんので、部屋のこのまま外でお話しましょう」
「どうしたのだ?」


本当に少し話に来ただけなのに、何故中に入れてもらえないどころか、ドアを固く閉ざされなければいけないんだ。


「ルミリオ陛下は、産まれたての赤ちゃんがどのように過ごすか知っておられますか?」
「突然何を…」


そんなこと、知るはずがない。皇帝として知っている必要のないことなので、何故そんなことを聞かれるのか意味がわからない。


だが、マーガレットが私の表情を見てため息を着く。


「ご存知ないのですね…。だと思いました…」
「知らないならなんだと言うんだ?」
「どこから説明しましょうか…」


何故呆れられているのかが分からない。赤子の過ごし方よりも、私は皇后に話をしたいのだが…。


「いいですか?生まれてまもない赤ちゃんは、3時間置きにミルクを必要とするんです」
「それなら、聞いた事くらいはあるぞ」
「本当ですか?なら、よくルビア様が寝られているのを邪魔しようと思いましたね!ルビア様をこれ以上疲れされる気ですか!」
「な、何だ急に!」


聞いたことも無いマーガレットの怒号に少し怯んでしまう。共に来たアレックスは、ビクッと全身を震わせている。


なぜ急に怒られたのだ。
なにか不味いことを言ったのか?


全く身に覚えがない。
アレックスに目線を合わせて聞いてみるが、分からないようで首を振られる。


「私が書いた報告書はお読みになられましたか?」
「ああ、皇后が自らアイリの世話をしていると、言う報告ならしっかり読んだぞ」


正直、報告書の内容が本当か疑わしいところがあるが、それをマーガレットに言えばおそらく怒鳴られてしまうので黙っておく。


「読まれたのなら分かりますよね?ルビア様が自ら授乳をされているので、もちろん深夜だろうと早朝だろうとルビア様は3時間置きに起きておられるのです」
「まぁ、そうなるな」
「まぁ、そうなるな?ですって!?ルミリオ陛下はそれがどれだけ大変なことか分からないのですか!?」
「いや、たいへんだとは思うが…」


たかが3時間置きにミルクをやるだけだろ。その他の時間は寝れるのだから別に良いでは無いか。


「まさかとは思いますが、3時間ごとに寝れるから問題ないとか思っておられませんよね?」
「いや、それは…」


まさか、そう思ってはいけなかったのか?


マーガレットの眼光が更に鋭くなり、何故だか背中に嫌な汗が滲む。


「3時間置きに授乳すれば終わり、なんて訳はありませんから!そもそも、授乳自体にも時間がかかりますし、その後にミルクも与えて、オムツが汚れていたらオムツ替えなどもあります。ですので、長くても睡眠時間は連続で2時間程度しかないのですよ!?」
「そ、そんなものなのか?」
「ええ!それに、日中は授乳、オムツ替えはもちろん、着替えに沐浴等もございます。更に、ルビア様自身の生活もございますので、それほど日中に睡眠を取れる環境でもないのですよ」
「そ、そうなのか…」


それは少し、大変なのかもしれない…のか?マーガレットがここまで言うということは、それなりに大変なのかもしれない。


「あまり理解された様には見えませんが、そういうことですので、今はお帰りください。あともう一点頭に入れて置いて欲しいことがございます」
「なんだ?」
「産後の母体というのは、傍から見てわかりませんが、身体中が損傷していかのような状態です。精神状態も不安定で、とても弱々しい状態なのです。ですから、もっとルビア様を労わってくださいませ」


労われと言われても、一体どうすればいいんだ。


「少なくとも、ルビア様の意見も聞かずに一方的に責められたり、会う度に不機嫌な顔をするのをお止め下さい。そこまでして無理に会って頂かなくて結構です。ルビア様の心理状況はアイリ様にも影響しますので、その点をしっかりお考えになった上で行動してください」
「…善処する」
「善処ではありません、して頂かなくては困ります!それでは、私はこれで失礼致します!くれぐれも今お伝えしたことはお忘れなきよう、お願いします」


皇后に気を使ってか、音も立てずドアを閉められた。だが、気分としては目の前で力一杯ドアを閉められたようだ。


皇后に話をしに来たが、ああ言われてしまえばそのまま執務室へ帰るしかなかった。


次の日、皇后の目の下に出来た濃い隈を見てマーガレットが入室を拒否した理由が理解出来た。



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