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13、皇帝視点
しおりを挟む昨夜のように、ドアがまた目の前で閉ざされてしまった。
「昨夜、私がお話した時間は全て無駄だったようですね」
「………」
静かにマーガレットが激怒しているが、皇后が涙を流した衝撃の方が強くて、そこまで気にしていられない。
確かに言い方は不味かったかもしれないが、あれは、皇后が隈を作らない程度にアイリの世話をし、眠い時はマーガレット達に任せれば良いと言いたかっただけだ。
それなのに、泣いてしまうとは。それも、あのいつも強気だった皇后が…。
「私はそこまで傷付ける事を言ったのか…?」
「はい、仰いました。しかし、ルミリオ陛下はどの部分が良くなかったか分かっておられないようですので、その部分がわかるまでは当分ここへ来るのは控えていただけませんか」
「なぜだ」
確かに皇后を傷付けたが、だからと言って来るなと言われるとは思ってもみないかった。仮にも私は皇帝で、この城内で唯一行けない場所が無い人間だ。
それなのに、正妻である皇后の部屋に来ては行けないとはどういう事だ。それも、私が母のように慕っているマーガレットから言われるとは…。
「理由は簡単です。ルビア様に対するルミリオ陛下の言動が目に余るからです。ルビア様の事が気に食わないのでしたら、無理に来て頂かなくて結構です。いえ、むしろ来ないで下さい」
「いや、気に食わないわけでは…」
ない。と思っている。少なくとも今の皇后には。
だが、どうしても今までの皇后の不愉快な態度が頭にチラついてしまう。そのせいで、皇后に対する態度が多少きつくなってしまうのは自覚している。
だが、いきなり皇后に対して態度を変えるというのも難しい話だ。今までの皇后の言動の積み重ねのせいでそうなってしまうのだから、私だけが責められるのは納得がいかない。
「以前のルビア様の事は少ししか存じ上げませんが、今のルビア様は母親としても人としても立派な方です。そんな方に理不尽な態度を取られているルミリオ陛下を見ているのは、はっきり言って不愉快です!何故そこまでしてルビア様の元へ来られるのですか!」
「そ、それは…ア、アイリ、を見に来てるのであって、皇后に会いに来ているわけではない!」
マーガレットの威圧感と少しの罪悪感から、アイリが目的だと咄嗟に嘘をついてしまう。今ここで皇后に謝りに来ていると言えば、更に怒りを買ってしまう気がして言い出せなかった。
だが、この嘘は良くなかったと、マーガレットの次の言葉で思い知る。
「でしたら、次回から私達がアイリ様をルミリオ陛下にお見せ致します」
「そ、それは…」
「なにか問題でもございますか?陛下は、アイリ皇女様に会われに来られているのですよね?」
「あ、ああ」
1度言ってしまった手前、違うとは言いずらくなってしまう。
「では、アイリ様にお会いになりたい際は、いつでも私達にお申し付けください。ルビア様には部屋で待って頂き、私共がアイリ様をルミリオ陛下の所までお連れ致します。よろしいですね?」
「あ、ああ」
「それでは、私はルビア様が心配ですので失礼致します」
「わかった…」
何も言えずに、マーガレットの背中を見送る。
「何をやっているんだ、私は…」
なぜ皇后に対しては素直に行動が出来ないのだ。ただ素直に、体調には気を付けろと言って、リアムの事への感謝と、誤解していたことへの謝罪をすれば済むだけの話なのに…。
変に意地を張ってしまうせいで、更に皇后と話すことを難しくしてしまう。素直になれない自分が情けない。
「ルミリオ様…?どうされたのですか?」
「イザベラか?」
自分の情けなさに打ちひしがれていると、イザベラが声を掛けてきた。
「何故ここに君が?」
「昨夜、リアムを救っていただきましたので、改めて感謝に参りました。ルミリオ様こそ、どうされました?」
「私は…私も、リアムの件で感謝を言いに来ただけだ」
「まぁ、ルミリオ様も。奇遇ですね」
優しく包み込む様な笑みを浮かるイザベラに、なんだか少し救われた気がする。
「君にはなんでも素直に言えるのにな…」
「?なにか仰られましたか?」
「いや、なんでもない」
いつもそうだ。幼い頃すぐに母を亡くした私に優しくしてくれてのはイザベラだけだった。子供が出来たことは予想外だったが、今でもイザベラは私の姉のような存在だ。だからだろうか、イザベラの前では素直になれる。
「君に会えてよかった。では、私はこれで失礼する」
「あの、ルミリオ様…」
「どうした?」
「ここのところお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「ああ」
そう答えたが、皇后のことが常に頭にチラついて仕事が辿らず、遅くまで仕事をしているため多少疲れているのかもしれない。
そんな私をイザベラは心配してくれる。
「もしよろしければ、この後お茶でもいかがですか?疲れが取れるお茶を用意致しましょう。丁度、リアムも連れてきていますし…?リアム…?リアム?」
「どうした?リアムが居ないのか?」
「はい、先程まで一緒にいたのですが…どうしましょう…!」
「すぐに探させよう」
動揺するイザベラを安心させるように、近くにいる使用人達にリアムを探すように声を掛ける。そして、私達も一緒に急いでリアムを探しに行く。
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