癒しと毒の融合愛◆◆心の逃げ場だけでいいのか?久遠の愛を誓う物語◆◆ 【完結】

まぁ

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part 1-1

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「紗栄子」

ヒュッ…いやらしい声に呼吸が止まりそうになる。振り向かないままの私の背後から

「こんな時間にどこへ行く?」

と聞こえたけれど、私は玄関へ向かった。

「逃げるのかっ?」
「…逃げる?ちょっとウォーキングです。それとも…逃げられるような心当たりでもあります、お義父さん?」

チラッと振り向くと、お風呂上がりのトランクス姿の義父と目が合う。
声だけでなく、いやらしい目つき…

「偉そうになったな」
「おかげさまで強くはなりました。いってきます」
「待てっ…耕介ーっ。紗栄子が逃げるぞ、バイクのキー持って来いっ」

義父にはどうしても私が逃げるように見えるようで、全力で息子を呼ぶ。

当然ながら、義父の息子は私の夫。

この家の住人は清水耕介しみずこうすけ紗栄子さえこ、そして清水勇しみずいさみの3人だ。

義母は2ヵ月前に出て行った。

夫と義父曰く

「紗栄子のせいで出て行った」

らしい。そこから息の詰まる生活が悪化、助長され、私はたまにフラッと一人になるために出掛ける。

ダッダッダッダッ…階段を降りて来る音に急かされスニーカーを履くと玄関ドアを開ける。

少し一人になりたいだけなのに、邪魔しないで欲しい。私は

「紗栄子っ」

という夫の声に

「散歩っ」

と叫び返して外に出た。

ちゃんと鍵も持っているし帰るのに…私が不満を抱えていることに気づいていているから二人は私が逃げる可能性を考えるんでしょ?それなら日々の態度を改めてよ。

追いかけて来るなら逃げてみようか。焦って反省してくれればいい。

本当に逃げることが出来たら…とは思うけれど、現実的には難しいこともある。

私は駅の向こうの繁華街へ、住宅街の裏道をクネクネと進むことにした。

私の育った田舎ではコオロギなどの声が聞こえ始める8月後半の夜だけれど、ここにはそんなものは存在しない。エアコンの室外機の音が、進んでも進んでも聞こえ

「紗栄子っ」

夫の声も聞こえる。

数分前に‘夜にはゴミ箱を空にしろと何度言ったら分かるんだ?ホントいつも抜けてるよな’と言われて‘必要だと思えないもの’と言い返しつつ家中のゴミ箱を空にした。何度もやっているやり取りだ。

モラハラ夫はご機嫌取りをすることもある。今は焦った声で追いかけているからそっちの気分なのだろう。

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