さまよう綸◆◆若頭からの求愛…迷惑だわ◆◆ 【完結】

まぁ

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番外編:吉宗&力哉

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「俺、そいつとやる」

 1年生の男の子が吉宗を指さして言った。さっきの吉宗を見て、どうしてそう思うのかわからない。この子の親父は組員でこの場にいるので樋川が確認してやらせることにした。

 二人を向かい合わせ、樋川が言い聞かせる。

「首より上への攻撃は無しです。その他は当ててもいいです。あっ、吉宗」
「あい」
「もしかして関節も取れますか?」
「れんしゅうちゅう」
「今日は関節を取るのも無しです」
「あい。つき、けり」
「そうです。はじめっ」

 いきなり大きい子が蹴るが

「あれはまだ振り上げてるだけだな」
「ああ、当たっても痛くもないが腕で止めてる」
「もう高須は受けまで教えてるのか、吉宗に」
「親父、さっきの見たか?」
「見たぞ、驚いた」

 そっと隣に座った親父と小声で話す。その間も吉宗の頭の上を相手の腕が通りすぎていく。まだまだ手足を振ってるレベルだからな。その時吉宗の蹴りがカーフキックとなりヒットすると一発で相手が崩れ落ちた。

「やめっ、吉宗の勝ちです」

 吉宗はここでも表情を変えることなく元の位置に戻ると、まだ起き上がれない相手を見て初めて表情を変えた。そして俺の方を見たんだ。

「吉宗、大丈夫だ。ルール通りにやっただけだ。挨拶はちょっと待ってやって」
「あい」

 安心していつもの表情に戻った吉宗は、堂々とした仁王立ちで静かに相手が立ち上がるのを待った。

「大物だな」

 親父はそう言い残し道場をあとにした。
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