これは勇者の剣です!(断言)

相有 枝緖

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21 第三回ハーレムチャンス(数打ちゃ当たる枠)

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 ゆっくり朝食を堪能してから冒険者ギルドへ行くと、予想通り人が少なかった。

 ピヒラが受付に金を出しに行き、トールヴァルドは情報を掲載している掲示板に近づいた。

 やはり、近隣は基本的に衛兵団が対応するので冒険者に対応依頼が出ているのはここから遠い場所。
 人の少ない平原や、基本的に誰も行かない森の中などだ。

 変わったものだと、衛兵団の欠員に対してヘルプを頼むような依頼があった。

 そうこうしていると、後ろから数人近づいてきたので、掲示板を見るのだろうと一歩横にずれた。
 後ろから来た人たちは、そのままトールヴァルドの後ろに立った。

「あのぉ、すみません。あなたは勇者のトールヴァルドさんであっていますかぁ?」
 振り向くと、女性が三人立っていた。

 短剣を二本腰に刺した近接らしいすらっとした女性、大きなメイスを持ったふくよかな女性、長い髪を三つ編みにして長剣を持った背の低い女の子だ。

 声をかけてきたのはふくよかな女性だったらしい。

「そうだが。一体どこでその話を聞いたんだ?」

 さすがに三度目ともなると、トールヴァルドの詳細な情報が出回っているとしか思えない。
 また面倒な要求かと思ったが、もしかすると違う可能性もあるので決めつけてはいけない。

『トールヴァルド!一気に三人だわ。ハーレムチャンスよ!』
 どういうチャンスだ。
 何の役にも立たなさそうである。
 それにしても、魔法剣(待機)は一体全体トールヴァルドにどうなってほしいのだろうか。

「王都の方に知り合いがいるだけよ。それで、あなたがこちらに向かってるって聞いたから。私は別にどっちでも良かったけど?ミーリたちが行きたいって言うから」
 答えたのは、すらっとした女性だ。
 こちらは彼女に何もしていないのに、なぜ突然つんけんした態度なのだろうか。

「あ、あ、の!その、き、き、聞いて、欲しくてっ」
 三つ編みの少女が、顔を真っ赤にしながら言った。

 子どもには優しく、が基本である。

「なんだ?」
 すると、三人はそれぞれにほっとしたような表情になった。

「あ、あ、あたしたちと、一緒に、き、来て、ほしいです!」
『まぁ、頑張ったわねぇ。でも緊張し過ぎよ。トールヴァルドはそんなに怖くないわよぉ』
 トールヴァルドは首をひねった。

「なにか助けてほしいのか?今日一日なら一応手助けもできるが」
「そうじゃないわよっ!察しが悪いわね。私たちとパーティを組んでほしいってことよ!あ、私の希望じゃなくて、このミーリとか、サラとかの希望だからねっ」

『あ、もしかしてツンデレ枠?ツンツンがきついけど。そっちの子はロリ枠で、お姉さんはほんわか枠かしら』
 魔法剣(待機)はなにを言っているのか。

 スレンダーな女性の言葉からは、パーティのお誘いであることなどとわからなかったし、彼女の情報は特に有用でもなかった。

 また勧誘か、と若干うんざりしたトールヴァルドの横に、ピヒラがやってきた。
「また性懲りもなく、パーティの勧誘?あたしたちは二人で十分なんだってば。あなたたちみたいなのはいらないの!ね、ヴァルド」
『あ、来たわね!ピヒラちゃんガード!』

 横に並んだピヒラを見て、三人は顔を見合わせてうっすら笑った。
 そして初めに話しかけてきた女性が口を開いた。

「だってぇ、ただのパーティメンバーでしょう?」
『おっと、軽いジャブかしら。ほんわかと見せかけた腹黒もいいわよねぇ』

「一人より、多い方がきっといいです!」
『可愛い子が多いのは良いことよぉ』
 少女は、ピヒラには普通にしゃべっている。
 男が苦手なのだろうか。

「ほら、ミーリかサラの方が勇者の好みかもしれないでしょう?あんたが一人で勇者の可能性を潰してるってわかってるの?」
『あら、切り込んできたわね!でも言い切りは危険じゃないかしらぁ』

「それにぃ、ミーリも言った通り、三人増えたら一気に戦力も増えるからぁ。勇者さんもいいんじゃなぁい?これでもあたしたち、三人パーティでA級になってるのよぉ」
 ふっくらした女性が、ピヒラをじっと見て言った。

『へぇ!女の子三人でA級?それって結構すごくない?タイプの違う女の子三人!これはこれでいい気がするわぁ』
 だから、魔法剣(待機)は何を期待しているのか。

 近接三人でA級パーティであれば、確かに実力があるといえる。
 しかし。

「ピヒラ一人の方が強いだろ」
『ちょっ、言い方!』

 ピヒラが何か言い返す前に、トールヴァルドが本音をこぼしてしまった。
 魔法剣(待機)が即座に突っ込んだので、もしかすると言い方がまずかったかもしれない。

「えっ」
「へ?でも、こっちは、さ、三人」
「は?」
 三者三様に驚いている。

 これはよくないかもしれないと思ったトールヴァルドは、見ただけでわかるとは言わずにきちんと理由を説明してフォローすべきだと考えた。

「俺もそろそろ個人でA級になりそうだが、ピヒラはもうすでにA級なんだ。近接で俺に勝てるピヒラが、グループでやっとA級のパーティに負けるわけがないだろう?」
『悪化しとるわっ!!』
 だめだったようだ。

 最初に再起動したのは、つんけんした物言いの女性だった。

「そっ、そんなのわかんないでしょ!だってこっちは三人なのよ!武器だって三種類、チームとして動くんだからっ!ねっ!ミーリとサラもそう思うでしょ?!」
 トールヴァルドを睨んだ女性は、連れの二人を振り返った。

「まぁ、そぉねぇ。さすがに個人でA級とはいえ、三人を相手にするんじゃあねぇ」
『うーん、それは何とも言えないんじゃないかしら』

 サラというらしいふっくらした女性は、ピヒラを見て微笑んだ。
 見返すピヒラは、不機嫌そうに口をとがらせてから黙って一歩トールヴァルドに近づいた。

「ゆ、勇者さま!あた、あたしたちだって、つ、強いんです、よ!」
 両手を組んでぎゅっと握った少女ミーリが、一所懸命にそう言った。
 埒が明かない。

「とにかく、俺は断る」
『バッサリ!そんなあっさりハーレムキャンセルしちゃうなんてもったいなくない?』
 何がもったいないのか、トールヴァルドにはわからない。

「な、納得、でき、できませんっ」
「そうよ!やってもいないのに何でそっちの女の子の方が強いとか言うわけ?」
「あら、だったらぁ。あたしたちがその子に勝ったら、パーティ組みなおしってことにしない?有用な方がいいんでしょぉ?」

 強さもだが、二人だからこその移動スピードや相性もあってピヒラを選んでいるのだ。
 思わずため息をついて返事をしようとしたら、ピヒラが一歩前に出た。

「しつこいわねっ!いいわよ、勝負してあげる。あっちの訓練場で、一対三よ。負けたら今後一切あたしたちの前に姿を見せないでっ!」

 プリプリと怒って言うピヒラを前にして、三人組はにんまりと笑った。
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