神様に加護2人分貰いました

琳太

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3巻

3-3

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 朝の一番混んでいる時間は外したが、それでも昨日に比べてギルドにいる人は多い。依頼を探していると、オスロの森を含む、リヴァイ湖周辺の採取依頼があった。
 オスロの森からリヴァイ湖に流れ込む川のほとりに生えている鱗草うろこそうの採取だ。
 この鱗草、花弁が鱗のように硬く、き通っているのだとか。
 リヴァイ湖から出る船では接岸できない高い位置に生えているので、オスロの森側を通っていかなければならないようだ。
 乾燥させた鱗草の花弁を火にくべると、煙が出る。その煙はモンスターが嫌う臭いを含んでいるため、モンスター避けになるそうだ。特に蛇系と魚系モンスターに効果を発揮する……レヴィアタンと関係あるのか?
 オスロの森に深く入るということで、六級依頼だった。他はめぼしいものはないので、これだけ受注する。
 宿を出るときにかねが三回なったばかりだったから、魔石の代金の受け取りはあとでいいな。

「お待たせ。一旦いったん門を出てから森に入ろう」

 オロチマルには、門を出るまで頭に乗るのを我慢してもらう。
 オラージュの実は鑑定済みのため、紫で色指定した。サーチ範囲は半径一キロメートル。全然現れない。

「じゃあちょっとスピード上げるから、ルーナはジライヤに乗せてもらってな」
「はーい」

 ルーナがツナデと並んでジライヤにまたがると、俺たちはリヴァイ湖沿いに走り出した。
 十キロほどの距離を十分ほどで走っているが、徐々に湖岸と湖面の距離が開いていく。そしてさらに十分ほど走れば、リヴァイ湖に注ぐ川に突き当たる。

「これ、ガラシュさんが言ってた実が流れてくる川かな」

 川面も五メートルほど下になる。長い時間をかけて川の流れが川底を侵食していったのだろう。けずられた川岸は切り立った絶壁になっている。

「ん~、オラージュの木ないね」

 ルーナはジライヤから降りて、あたりを探す。
 オロチマルも何を思ったか、俺の頭から飛びおりた。

『ぴいぃぃ、ままいたい!』

 そうして足元の花の上に着地したかと思ったら、またすぐ飛びついてきた。

「どうした、オロチマル?」

 オロチマルを受け止める。

『いたかったの、まま』

 足元を見ると、そこには透明な花弁が。


 =鱗草 状態・満開
 花弁が鱗のような形をしていることから名付けられたという説もある。一説によるとレヴィアタンの息吹いぶきを受けて咲いた花だと言われているが、その事実はない。花弁を乾燥させ、香として使用すれば、モンスター除けの効果がある。蛇系モンスターに効果を発揮すると言われているものの、蛇系モンスターの嗅覚がすぐれているためで、特化した効果はない=


 あはは。オラージュばかり探してて、足元に鱗草が生えていたのを見落としていたよ。ルーナとツナデと三人で鱗草を三籠分ほど採取し、二籠《コピー》で増やした。
 採取中にモンスターランクMR・Eのフォレストヴァイパーや、モノアイコブラが出たが、ジライヤが瞬殺した。この森、蛇系モンスターが多いのか?
 どちらもフォレストアナコンダほどではないが、大きい蛇だった。
 フォレストヴァイパー二匹を倒した時点で、オロチマルとルーナのレベルが上がった。


 名前・オロチマル 年齢・0歳 種族・コッコトリス
 レベル・4 職業・フブキの従魔
 H P 990/990(900+90)
 M P 880/990(900+90)
 STR(筋 力)715(650+65)
 DEF(防御力)715(650+65)
 VIT(生命力)715(650+65)
 DEX(器用さ)462(420+42)
 AGI(敏捷性)572(520+52)
 MND(精神力)715(650+65)
 INT(知 力)429(390+39)
 LUK(幸 運)319(290+29)

【称号スキル】《言語理解LV1》《パラメーター加算LV1》《取得経験値補正LV1》
【職業スキル】《意思疎通LV1》《取得経験値シェアLVMAX》
【補助スキル】《叫声きょうせいLV0》《跳躍LV1》《強襲LV0》
【戦闘スキル】《石化ブレスLV0》《毒ブレスLV0》《睡眠すいみんブレスLV0》《毒の牙LV1》
【魔法スキル】《風魔法LV1》《火魔法LV1》《治療魔法LV0》
【耐性スキル】《石化耐性LV3》《毒耐性LV3》《麻痺まひ耐性LV1》《混乱耐性LV1》《病気耐性LV1》
【称号】《異世界より召喚されし者フブキの従魔》

 種族レベルは上がっているが、スキルを全く使っていないから、上がっていない。


 名前・ルーナ 年齢・0歳 種族・豹獣人
 レベル・11 職業・フブキの眷属、狩人ハンター
 H P 1320/1320(1200+120)
 M P 562/1034(940+94)
 STR(筋 力)968(880+88)
 DEF(防御力)968(880+88)
 VIT(生命力)1012(920+92)
 DEX(器用さ)770(700+70)
 AGI(敏捷性)781(710+71)
 MND(精神力)737(670+67)
 INT(知 力)517(470+47)
 LUK(幸 運)286(260+26)

【称号スキル】《言語理解LV2》《パラメーター加算LV1》《取得経験値補正LV1》
【職業スキル】《意思疎通LV2》《取得経験値シェアLVMAX》《罠感知LV1》《罠設置LV0》《罠解除LV0》《命中率上昇LV2》
【補助スキル】《気配察知LV3》《気配隠蔽LV2》《筋力強化LV1》《瞬脚LV3》《忍び足LV2》
【技工スキル】《家事LV1》《解体LV3》
【武術スキル】《短剣術LV2》《双剣術LV3》《弓術LV1》《投擲術LV2》
【魔法スキル】《魔力感知LV2》《魔力操作LV2》《雷魔法LV3》《風魔法LV2》《闇魔法LV1》
【称号】《異世界より召喚されし者フブキの眷属》

 ルーナはパラメーターの上昇値が上がったか? 魔法は雷以外も使わせた方がいいだろうな。
 モンスターの解体が終わり、いらない部分を川に流す。魚などのえさになると思う。
 モノアイコブラは毒袋を持っているが、これは売れるのでちゃんと小袋に詰めた。目玉も薬の材料になるようだ。俺はその薬は遠慮したいな。

『あ、あれ!』

 ツナデが川面を見てさけんだ。五メートルは下にあろう川面に一瞬で移動したかと思ったら、すぐに元の位置に戻っていた。まるで動いてないかのようだが、足が濡れていることと、オレンジ色の果実を手にしているという違いがある。
 スキル《空間跳躍》で移動して拾ってきたのか。《浮遊》ですぐに沈むこともない。

『これ、フブキこれ』

 差し出されたオラージュの実は、残念なことにくさっているようだ。

「それは食べられないよ、ツナデ」
『ええ~』
「でもこの川の上流にオラージュの木があるのは確実だ。川に沿って上流に向かえば、見つかるはずだ」

 俺の言葉に、ブンブン頭を縦に振るツナデ。その様子を見て少し笑ってしまったことはツナデには内緒だ。じゃあ行こうか。
 上流に向かって二十キロメートルほどさかのぼると、オレンジ色の森が見えてきた。《アクティブマップ》に大量の紫点が表示されているのだが、甘い香りがここまで香ってきている。
 すぐにはオラージュの群生地に突っ込んでいかず、全員その手前で立ち止まる。ツナデが早く行きたそうにしていたが、グッと我慢していた。
 大量の紫点でわかりにくかったものの、ソコソコの数の黄色い点が、俺たちの接近で橙色だいだいいろに変化したのだ。


 =種族・オスロマンキー MR・D 固有名・─ 年齢・5歳 状態・警戒
 猿系モンスター。リトルマンキーの亜種でオスロの森の固有種。DEX、MNDが高く、《木魔法》や《地魔法》などの魔法スキルを所持する。オラージュの実を好んで食すために、毛色が橙がかっていると言われるが、その事実はない。性格は比較的温厚で、ボスザルを中心に群れで暮らす。食用可能だが美味うまくない=


「「「キキー〔ヨソモノ、ヨソモノ〕」」」
「「「キッキ、キッキィ〔オイハラウ? ニゲル?〕」」」
「いや、できれば穏便にお願いする。オラージュの実が欲しいだけなんだ」
『そーや、あんたらなんか食べても美味おいしゅうない、ウチはオラージュの実が食べたいんや』
「「「「キキーーーッ〔ヘンナヤツキタ〕」」」」
『ヘンナヤツ言うなやー!』
「「「「キキキーーーッ〔ヘンナヤツオコッタ〕」」」」

 いや、ツナデ。漫才はいらないから。
 オスロマンキーはキンシコウのような色をしたリトルマンキーだった。ツナデの方がランクが高いロングテイルマンキーだったこともあり、戦闘にならず、実を分けてもらえた。まあ、お返しに大量のビタンの実を渡したことが最大の理由だと思う。
 麻袋いっぱいのオラージュの実を手に入れ、俺たちは湖岸に戻り昼食にする。
 もちろんツナデはオラージュ一択だ。俺とルーナもデザートに食べた。マンゴーとオレンジを足したような味でなかなか美味おいしかった。


 昼食後、ルーナがお昼寝タイムに入ったので、俺は魔法の訓練をしようと思う。
 俺の《回復術》はレベル4、《治療術》はレベル2、《蘇生術》はレベル0で使えない。使う機会がなかったから、《蘇生術》のレベルを上げる機会がなかった。
 もうあんな思いはしたくない。だから《回復術》《治療術》を上げようと思う。《蘇生術》は多分死体が、それも死にたてのものが必要な気がするから、今度魚とか何かで試してみようと思う。
 俺の《回復術》はHP回復だけではなく多少の怪我けがも治すが、そちらは《治療術》の方が早い。
 レベル2で使えるのは〈中度怪我治療ハイキュア〉と〈毒状態治療キュアポイズン〉だ。
 俺は足元の踏まれて折れたり、詰んだ後の草に向かって〈ハイキュア〉を使ってみた。するとしおれていた草がみるみるうちに元気になった。

『スキル《治療術》のレベルが上がりました』

 レベル3で〈重度怪我治療エクストラキュア〉〈麻痺状態治療キュアパラライズ〉が使えるようになった。
 今、〈キュアパラライズ〉は使い道がないので、〈エクストラキュア〉をあっちこっちにかけまくる。

『スキル《治療術》のレベルが上がりました』

 レベル4になり〈範囲軽度怪我治療エリアキュア〉〈睡眠状態治療キュアスリープ〉〈混乱状態治療キュアコンフュージョン〉が使えるようになったため、今度はオロチマルの訓練も一緒にすることにした。

「オロチマル、あの木に向かってブレスをいてみようか」
「ぴ?」

 若干わかってなさそうだが、俺はオロチマルを抱え、近くの木に向かって《毒ブレス》をくように指示する。
 オロチマルは、すうっと息を吸い込む。頭が少し後方にのけぞったかと思ったら、今度は前に突き出す。

「ぴゃ~」

 目の前の木に向かって紫色のミストのようなものをき出した。イメージとしては携帯スプレーボトルをシュッと吹いた感じだろうか。ブレスは一秒にも満たない。
 ブレスがかかったあたりの木皮が紫色に染まっていく。《鑑定》すると【状態・毒(軽度)】と出た。

「よし、いいぞオロチマル」
「ぴぴぃ」

 褒められて嬉しそうにすり寄ってくるオロチマルを抱きかかえたまま、俺は木に向かって〈キュアポイズン〉を唱える。すると変色した部分の色が薄くなった。【状態・毒(微少)】だったのでもう一度唱えると、状態から毒が消えた。
 それを数回繰り返したら、オロチマルの《毒ブレス》がレベル1になったため、今度は《睡眠すいみんブレス》と〈キュアスリープ〉でやってみた。
睡眠すいみんブレス》では水色のミストをき出した。しかし、木も【状態・睡眠すいみん】になるんだな。オロチマルは《睡眠すいみんブレス》がレベル1になったあたりで、疲れを見せた。
 次は《石化ブレス》と思ったが、無理をさせる必要はないので一旦いったん休ませることにする。俺も〈石化状態治療キュアペトリファイ〉はまだ使えないしな。
 オロチマルを休ませると、反対にジライヤにもたれて眠っていたルーナが目を覚ました。

「何してたの?」
「ん、魔法の訓練だよ」
「あ、やる! ルーナも魔法の訓練やる!」

 目覚めた早々、やる気満々だった。
 ルーナが木に向かって〈サンダーボール〉を放つと、木の表面が煙を上げ、焼けげる。そこに俺が〈エクストラヒール〉と〈エクストラキュア〉をかけてみる。
 すると、げた場所が元の樹皮を取り戻した。
 ルーナは周囲の木々に向かって次々と〈サンダーボール〉を放つ。俺は〈エクストラヒール〉と〈エクストラキュア〉を使う。しおれて枯れた葉も青々と元気になった。
 そんな感じで訓練を続けると、ルーナの《雷魔法》のレベルが上がったようで〈サンダーアロー〉を使い出した。ブリット系やアロー系は、一度に複数出せるので、ルーナが三本の木にそれぞれ命中させる。
 俺は〈エリアヒール〉で、周辺をまとめて回復してみた。そうしたら、足元の草まで青々としげり元気になった。
 やがて《回復術》レベル5で〈範囲中度HP回復エリアハイヒール〉〈HP自然回復率上昇リジェネレーション〉が使えるようになり、レベル6で〈最大HP回復マキシマムヒール〉〈範囲高度HP回復エリアアエクストラヒール〉の他、欲しかった〈MP自然回復率上昇マジックリジェネレーション〉が使えるようになった。
 リジェネレーション系は、自然回復の速度を上げるものだ。今の俺にはあんまり必要なさそうだが、ルーナやジライヤたちには大いに役立つだろう。
《治療術》の方もレベル5になり〈範囲中度怪我治療エリアハイキュア〉〈軽度病気状態治療キュアディシーズ〉〈石化状態治療キュアペトリファイ〉が使えるようになるも、レベル6の〈最大怪我治療マキシマムキュア〉にはたどり着かなかった。
 ここでそこそこ長い時間が経ったので今日は終わりにした。

「ルーナは、他の魔法も使おうな」
「うん、また今度ね」

 なぜそこまで《雷魔法》にこだわるんだろう?


         ◇ ◇ ◇


 ブルスの冒険者ギルドで、今日の依頼と魔石の査定の手続きを済ませる。

「えっと、こちらの魔石の査定は完了してますね。ちょっとお待ちを」

 職員がどこかへ行くと、用紙を持って戻ってきた。

「随分とたくさんですね。下から行きますね」

 魔石買取の査定結果だ。
 一個十テナの二十級魔石がホーンラビット三個。
 一個五十テナの十九級魔石がゴブリン三十五個、グリーンヴァイパー四個、グレーウルフ七個。
 一個百テナの十八級魔石がキラーアント四個。
 一個二百テナの十七級魔石がオーク十二個にフォレストスパイダー一個。
 一個四百テナの十五級魔石がブレードディア一個、ワイルドボア二個、ホブゴブリン三個、グレーファング六個。
 一個五百テナの十四級魔石がワイルドボア一個、ロックリザード五個。
 一個八百テナの十三級魔石がダークラフレシア一個、ビッグベア一個。
 一個三千テナの十級魔石がキラーグリズリー一個。

「合計一万七千七百三十テナです。これでお売りになられますか?」
「えっと、どれがなんの魔石とかわかるんですか?」

 しかも、級? 魔石に階級があるのか。えらく細かく分けられていた。
 俺もぱっと見じゃあ見分けられないが、《鑑定》して初めて【〇〇の魔石】ってわかるんだよ。

「ええ、じゃないと正しく査定できませんよ。うちは鑑定士が何人かいますから」

 え? 鑑定士? それってまずいんじゃ。

「へ、へえ。さすが大きな街のギルドだな。じゃあ冒険者のステータスなんかも調べられるのか」
「何をおっしゃってるんですか? 生物のステータス、まして人のステータスなんて、遺物級か伝説級の魔道具でもないと見られませんよ。詳細鑑定ができるのは『植物』か生命活動を停止した、いわゆる『死体』だけですよ」

 は、はは。なんだ見られないのか。よかった。のぞかれたら俺のステータスは絶対おかしいからな。特にHPとMPが。

『イエス、マスター。《鑑定》スキル自体は珍しくありませんが、レベルアップするには膨大な経験が必要です。職業が【鑑定士】であれば多少の補正はありますが、せいぜいレベル3、高位の者でもレベル5止まりでしょう。以前ルーナが言っていた《看破》はレアスキルで伝説に近く、《ユニークスキル》として持つ歴史上の人物がいたと話に残るレベルです』

 俺の《鑑定》今レベル8だったな。これも神様チートか。

『イエス、マスター。マスターだからそのレベルに達したのです』

 鑑定士と聞いて思わずビビってしまったが、《鑑定》は種族レベルやら様々なスキルやらMND値とINT値とかが複雑に絡んでいるって言ってた。俺より種族レベルが高くとも、俺のMND値とINT値は高そうだから、もし何かあったとしても見られることはないよな。
 確かナビゲーターが教えてくれた俺の《鑑定》スキルの効果をまとめると――


 LV1・種名
 LV2・種名、説明(短)
 LV3・種名、説明(中)
 LV4・種名、MR、説明(中)
 LV5・種名、MR、状態、説明
 LV6・種名、MR、状態、説明に種族特性スキル(マップ上で鑑定可能)
 LV7・種名、MR、固有名、状態、説明に種族特性スキル
 LV8・種名、MR、固有名、年齢、状態、説明に種族特性スキル


 レベル2であれば、魔石の種類は調べることができるんだったな。

「……さん、フブキさん。どうされます? 売られますか」
「ああ。その値段で売ります」

 いかん、職員さんに随分と呼ばれていたみたいだ。

「ではこちらが代金一万七千七百三十テナになります。鱗草採取は鱗草五籠分で三千三百、モノアイコブラ、フォレストヴァイパーがともに七級で討伐が六百テナ、素材買取代金が九千二百、合計三万八百三十テナになります」

 俺は金を受け取ると、ルーナたちのところに急ぐ。また遅いと言われそうだ。さあ、今日の夕食は何かな? ガラシュさんの魚料理は美味うまいんだよな。
 ルーナたちと合流し、俺たちはレヴィアタンの鱗亭に向かって歩き出した。



 第二章 護衛依頼



 木製の車輪が舗装ほそうされていない土の道をむ横を歩く。
 ブルスから港街に向かう街道は、商隊などの行き来が多く人の目が多い。いちいち隠れたりするのも面倒なので、護衛依頼を受けた。これなら、自然に次の街へ行ける。
 というか、受付の職員にそろそろ五級の護衛依頼を受けるように指示されてしまったのだ。
 五級に上がるには、対人戦闘がこなせることを証明しなければならないらしい。そして、昇級試験に該当するのが、野盗に出会う可能性のある護衛依頼か、領主などが出す盗賊討伐依頼になるんだそうだ。
 別に昇級を急いでいないと言ったら、実力があるのに下級の依頼ばかり受けるのは、初級冒険者の仕事を奪うことになるのでやめたほうがいいと言われた。
 規則じゃないが、暗黙の了解というやつだ。
 依頼主の、港街エレインで商会を営んでいるバルックさんは、王都やブルスの商人と取引をしている『そこそこ中堅』の商人らしい。本人談だ。
 今回はエレインからの荷を売って、ブルスで仕入れたものをエレインに持ち帰るところだ。乗りものは、馬車ではなく、牛がく牛車だ。三台のうちは一台が箱牛車で、残りの二台はほろもない荷車だ。荷物に防水布を被せてはいる。
 いつも護衛を頼むパーティーは決まっているらしいが、今回、往路で怪我けがをしたメンバーがブルスに残ることになり、急遽きゅうきょあなめのメンバーを募集していたのだ。
 俺たちのパーティーは、客観的に見れば戦力は俺一人なのだが、従魔がいるということで採用となった。
 まあ、依頼料は一人分で済むし。
 というわけで、ツナデとルーナは荷車の後ろに乗せてもらい、俺とジライヤは周囲を警戒――当然《アクティブマップ》を展開しながら――荷車の横を歩いている。
 商隊は、先頭の箱牛車にバルックさんたちがおり、その後ろを二台の荷車が付いていく。俺は最後尾の荷車の横を歩いていた。


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