雅美という人妻 - 夫のせいじゃない -

じろう

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第三章

第三章

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「そろそろ(里見と木下のところに)下りようか…」
恭史はメイクが終わった様子の雅美に声をかけた。
「うん…そうね…」
意を決したような雅美。
彼女はクローゼットからストライプのシャツを手にし、もう片方でメイクボックスを持ち上げた。
二人が下りると、その光景は様変わりしていた。
通路には数個のアルミケースとプラケース。広間を見ると、床には広げられた紫の布、縁側には大きなLEDの照明とレフ板、そして、その隅に束ねられた麻縄が見えていた。
恭史はカメラを持って姿を見せた里見と木下に目で合図するような仕草をし、雅美への説明が終わったことを彼らに伝えた。
里見も木下もTシャツとジャージのハーフパンツになっていた。
「動き回るんで、こんな恰好ですみません…いつものスタイルなんで…さてと…奥さん、ゆっくりでいいですから…お話しながら進めていきましょうね…休憩もとりながらで…」
「あ…はぁぃ…お願いしまぁす…」
雅美の落ちついた声に恭史は少し驚いた。
「えっと…それから…木下さんなんですけどね…僕の手伝いをしてもらうことにしました…そのほうが段取りとかが良いので…」
「ああ、そう…なんですね…わかりました…」
そうなると予感していた恭史が快諾すると、当の本人、木下が口を添えた。
「僕もカメラは構えますけど…あくまでチェックが目的なんで…奥さん、僕のほうは気にしなくていいですからね…動くでかい人形くらいに思っててくださいね…あはは…」
「あ…はい…」
「それじゃ…と…えっと…軽い感じで撮り始めていきますんで…ご主人には離れて頂かないと…えっと…何処が良いでしょうね…背景に写り込んじゃうのも不味いし…通路のほう…かな…この辺とか……」
里見の示した位置を木下が見定めして言った。
「そこは…僕がうろうろするかもしれないし…あ、階段なら座ってられますね…ゆっくり様子を見てもらえるかも…」
通路から寝室に上がる階段だった。柱越しに広間は見渡せることは出来たが、とても良い場所とは言えなかった。
「わかりました…お二人(里見と木下)の動きに気を使いながら…邪魔しないように見せてもらいますよ…」
恭史は、『ここかよ…』と思いつつも言葉を我慢し、三段目に腰を下ろした。
「そう…そこなら…はい…お願いしまーす…じゃあ…奥さん、これからは僕のカメラのほうを見るようにしてください…んで~、僕の言うことを聞くようにしてくださいねぇ…」

「え?…(バスローブのまま?…)」
雅美とっては突然だった。驚く彼女に里見はカメラを向けた。
呆気にとられ、言葉も出せない雅美。連写音が二度三度と続いていった。
「そう…こっちを見たまま、奥のほうにゆっくりと歩いて…はぁい…ゆっくりで…摺り足でいいから~…こけないように…」
木下は通路でカメラを構えたまま、その様子を追っていた。恭史は自分と違い過ぎるその撮り方に前のめりになって唖然としていた。
足元を見れず、恐る恐る歩く雅美、広間の一番奥に辿り着いた。
「こうやって撮ってるとね…徐々にカメラが気にならなくなりますよ~…そしたら僕のほうを見てくださいねぇ…」
「じゃあ、そこに座りましょうか…そう…脚は…右だけ伸ばして…そうですね…」
くの字にした脚、バスローブの裾からは下着をつけていない雅美の秘部が少し見えた。
「じゃあ…あ、そこのシャツ…着てこられたストライプの…です…それに着替えて…ええ、下着はなしで…ご主人もいるんで…安心して…」
いつの間にか近くに寄っていた木下。
「はい、奥さん…解きますよぉ~…はい…ちょっと腰を浮かせてくれますかぁ…はぁい…」
平静な顔つきの彼は、雅美の背後か手を伸ばし、軽く巻締めていた紐を解くと、彼女が唖然とする中、バスローブをたぐり寄せ、その身体から引き抜くように束ねていき、代わりにシャツを渡した。
「ふぅぅ…」
木下の吐息が雅美に聞こえた。
いきなりの全裸。彼の背後上からの視線に彼女は手で胸を隠し、背中を丸めた。

「はい、そのまま…」
慌てるように木下が後ろに離れ、里中の声、そしてシャッタの連写音が続いた。
大きくはない雅美の乳房、歳を重ねて多少はその膨らみが下がってはいたが、形の良さは恭史も褒めていた。
乳輪は小さく、乳首も小ぶり、色素も薄く、桜色とは言えないまでも黒ずみはなくピンク色を保っていた。
『あんまり、乳首を甚振らないで~…色が黒くなるの、やだ…』それは、雅美が恭史に良く言う言葉だ。
「良いですよぉ…奥さんの恥ずかしさが出てて…とっても良い…」
「奥さん、背中が色っぽい…肌が白くて透け感がありますね~…」
里見に続き木下も声をかけ、背後から少し赤らんだ雅美の肌にレフ板を向けた。
雅美は考える余裕などなく、言われることを聞きながら、シャツの袖に手を通していった。
「奥さん、ライトつけますよ~…直に見ないでくださいねぇ…」
雅美の背中に薄ピンクのライトが当てられ、麻生地のシャツが透け、雅美の身体のシルエットがくっきりと映った。
「真横から当てましょうか…そう、そこで固定してください…奥さん、少し顎を上げて、手櫛で髪をかき上げてもらえますか…そお…いいですね…目線は前で…はい、もう一回、髪をかき上げて…ゆ~っくりと…あ、今のいい感じですね~…」
言葉とシャッター音が連続していった。シルエットだけではない。シャツの丈はバスローブよりも短く、当然のように下半身は露わになっていた。
陰毛は、膣の秘肉に沿って縦に幅細い楕円形をし、そしてその細めの毛は短く手入れされていた。
『毛が見えるとちょっと萎えるんだよ…』下着からはみ出るのを嫌う恭史の希望、日頃から雅美自身が自らに手入れしていた。
木下もカメラを向けた。気にしないでとは言われていたが、雅美にとってはそのカメラがゲリラのように感じ、四方八方から見られている気持にさせた。
「いいですねぇ…じゃあ僕のほうに顔向けて…目線もこっちで…はい、この指先を見つめて…そうそう、目力上げましょうかぁ…もっと…そう、もっと…はぁい…そう…」
その様子は離れた場所の恭史にも見えていた。わずか十五分、二十分。普通なら恥ずかしさに悲鳴を上げるに違いない雅美が、自分(恭史)を見ることもなく、ただただ、里見の言うことに従っている。
『凄いなぁ…ほんと凄いわぁ…こういうもんなんだなぁ…(雅美が)嫌がる様子もないし…きっと言葉の使い方や気配りも上手いんだろうな…』
『頼んで良かったかもな…』
口を挟む余地なんてないと思い始めた恭史は、心に隠していた彼自身の不安が減っていくのを感じていた。
「じゃあ、シャツのボタンを一つずつ上から外していきましょうかぁ…ゆっくりでいいですよぉ…ボタンを見てね…そう…カメラは気にしないで…そう…じゃあ、その下の(ボタン)も…」
雅美が四つめのボタンを外すのを見計らい、木下はシャツの左肩口を斜めにずり下げた。彼女の鎖骨、そして胸の膨らみが空気に触れた。
「もう少し(下げましょう)……あ、はい、そこで…奥さぁん、左手に身体を傾けてくれますか?…うーん、あ、そうそう…手で支えて…目線はその指先で…ああ、いいですねぇ…」
傾けた身体に添うようにシャツが弛んでいき、左の乳房、そして乳首までを露わにした雅美。
三、四秒の沈黙を置き。里見はシャッター音を響かせた。
「いい表情ですね~…ぁ…、瞬きは我慢…我慢して~支えてる手の指先を少し立ててみましょうか~そう…で、身体をもっと預けて~…じっと指先見ててねぇ~」
立て続けの里見の指示に連写音が不定期に続いた。そして、木下のシャッター音が何度かそれに重なった。
「腕、きつかったですよね…じゃぁ~…、そのままその手の方向に寝そべっちゃいましょうかぁ~…ええ、身体、倒しちゃってください…そうそう…えぇっと、そうだな…木下さん、奥さんの手の先、斜め後ろがいいかな…僕のこのスマホを置いてくれますか?…」
里見はポケットから出したスマホを木下に渡した。
「もう少し、少し離して…はい、その辺で…じゃあね、奥さん…スマホに手を伸ばすようにしてください…背筋も腕も伸ばして…掴みたいのに届かないって感じで…顔もスマホのほうに向けて…もっと仰け反らないと~…身体は右手で支えて~指でたぐり寄せて…そ、そうです…いいですよぉ…飲み込みが早い…」
雅美は横向きに寝そべり、身体を仰け反らしていた。当然のようにシャツは捲れあがり、彼女の胸元からのすべてが晒されていた。
くびれて引き締まった腰に張り出た腰骨、そして、丘のようになだらかに連なる尻から脚。弛みもセルライトなど何処にも見当たらない、まさかと思うようなしっとりとした肌が秘部へと流れていき、輝度を落とした柔らかいライトを浴びていた。
彼女は自分が見えない下半身の姿を想像し、里見や木下の立ち位置の気配に心を揺らしていた。
その気がかりは、上向きにさせられている顎と顔を無意識に下に向かせてしまう。
「あぁ…もっと顎上げて…今はスマホを見ててくださいねぇ…動きますよ…木下さん、合わせてってくださ~い…」
方々に位置を変えながらシャッターを押していく里見。木下はそれに合わせ、ライトの向きを微妙に変えていった。
「はい…じゃあ…少し休憩入れましょ~…奥さん、お疲れさまでしたぁ~」
里見は大きめの声を出し、それは恭史にも伝わった。

恭史はキッチンに行き、冷蔵庫にあった水のペットボトルを持って広間に入り、歩み寄ってくる三人を笑顔で迎えた。
雅美は木下にバスローブをかけてもらいながら、我に返ったように照れ笑いの表情を浮かべていた。
「お疲れ…いい感じに見えてたよ…」
恭史は目を合わせた雅美を労うと、安堵の表情で彼女は言葉なく頷いた。
「満点ですよ…言うことなかったです、奥さん…」
里見の言葉にも、彼女は言葉なく首を横に振り、謙遜して笑みを浮かべた。
「もう、疲れたか?…まだ30分経ってないぞ~」
「え?…まだ3三十分しか経ってないの?…もう三日くらいな感じぃ…」
「それは大げさ過だろ~…っんなわけがないから~…あはは…でも最初だもんな、気を張ってたし、疲れたのは分かる…お疲れさま…」
その言葉を聞き、雅美は恭史の胸に頭をくっつけ、すがるように凭れかかった。彼はそれを受け止めて支えたが、里見と木下の視線に少し照れ、戸惑った。
「もぉう…ご主人に嫉妬しちゃうなぁ~…こういう奥さんって、いいんですよねぇ~…」
「えっと…木下さんって…?」
「実は…ばついち…でして…なので、料理も上手くなっちゃって…」
木下の自虐に他の三人は吹き出して笑った。
恭史は里見が独り身と聞いていたが、木下もこの時にそうだと知った。
「僕が戻ったら再開しますね~…じゃ、十分くらい、失礼しますね…」
里見は外に煙草を吸いに玄関を出て行き、その後を木下も軽い会釈を二人にして追った。
廻りを見渡しても椅子がなく、恭史は雅美の肩を抱きながら、それまで自分が座っていた階段まで連れていった。
「もうね…何も考えられなくなるの…カメラを向けられて、あれして、これしてって言われると…それで頭の中が目一杯になっちゃって…」
「それだけ、彼のリードが上手いんだよ…恥ずかしいとか…思わせないようにしてくれるんだ…」
「うん…そうね…はぁぁ…ふぅ…」
一口、そしてまた一口と雅美は冷えた水を口に入れた。
「あのね…見てはいたんだけど…念のため聞くよ…触られたりはしなかったよね?…」
雅美は恭史の質問の意味をすぐに悟り、答えた。
「ありがとう…大丈夫…二人とも紳士よ…マナーを解ってくれてるし、信用できると思う…」
「そうだよな…うん…じゃ、安心した…」
「メイク直ししとくね…」
「そっか…やる気出てるね…いいことだ…じゃ、俺も一服してくる…」
恭史は雅美を残し、玄関の外に出た。
少し先。二人(里見と木下)は、湿り気のある外の風にあたりながら煙草をふかしていた。
「ほんとここは静かですね…さすが…の撮影風景でした…モデル…どうです?…」
「はい…見て頂いてた通りです…良い感じです…」
「あのシャツ姿って(選んで)正解でしたね…奥さんも、ご自分の服だと気持が違うだろうし…」
木下は恭史にライターの火を差し出し、里見の言葉に頷いた。
「これから、どんどん気持を上げてもらって…勿論、僕たちもですけど…」
「そうそう…それ…、奥さん相手だと、こっちが乗ってくるんです…」
里見に木下が言葉を乗せた。
「正直なところ、俺も少しほっとしてて…ところで…あの縄…痛そうだけど…大丈夫かなぁ…」
「あぁ、あれですか…動いちゃうと痛いかもしれない…でも…痛さをアルに表情に出してもらえそうだし、僕としては嬉しいんですけどね…」
「奥さんを見てると、表情が豊かなんで…さっき、不安な表情も良かったし…未体験の痛さに、どんな表情を見せてくれるのか…興味が沸くんです…」
身近過ぎて、気付かなかったことを恭史は彼たちに教えられた。彼女の魅力は表情の豊かさにあることを今更ながらに再認識した。
「なるほどねぇ…でも、程度によるな…痕が残るようなのは可哀想だし…彼女、肌も弱いし…」
「そこなんですよね…でも、痕が残るかどうかは結果だし…それを今から気にしてしまうのもね…でも、ご主人からすれば、仰ることはもっともです…それにまだ…、すぐには(縛ったりは)しませんから…」
「そうなんだ…まぁ…そのほうがいいでしょうね…」
恭史はほっとした表情を少し浮かべた。
「ええ…ゆっくりいきましょう…成り行きを見ながら…ご主人にもご判断頂いて…あ、ひとつ聞いてもいいですか?…奥さんは、いつもいう感じでご主人に甘えたり?…」
さっき、雅美が恭史に凭れかかったことを里見は言っていた。
「俺のこと笑ったのに…お前もほんとは羨ましかったんだろ~?…」
木下が里見を茶化した後、恭史は真面目に答えた。
「うーん…そうですね…(気持が張り詰めて)一杯一杯だったんでしょうね…あはは…俺がいなければ、どうなってたことか…」
「そうですね…じゃ…戻って再開しますか…今度は少し長く撮るつもりで…」
里見はそこで会話を切り、二人に目を合わせた。

雅美は一人の居場所に迷い、階段に腰かけて待っていた。
玄関が開き、最初に里見が入ってきて、彼女と目を合わせた。
「奥さん、待たせしてしまいました…また、さっきの気持まで盛り上げていきましょうね…えっと、ご主人は…申し訳ないですけど…また、この辺で…」
雅美に目配せしながら、身体を入れ替わるように恭史は無言で階段に腰を下ろした。
彼女の緊張は元に戻ってしまっていたが、里見も木下もそれを見透かしていた。
「いいんですよぉ…その(緊張してる)ほうが…さぁ、さっきのことを思い出して…そうそう…また奥まで進んでくださいね…じゃあね…今度はこの水着で撮りましょうかぁ…」
それは広間奥の縁側に置かれていた。ベージュの紐のような極小ビキニだった。
「は、はい…」
雅美は部屋の隅でしゃがんでバスローブを脱ぎ、身体を小さくしてそれを身につけた。
彼女の白い肌に似た色。柔らかくて伸びが良く、彼女の身体にぴったりと吸い付いた。
「こういう色も似合いますね~…あっ、紐が…長くて垂れてて、見苦しいかな…奥さん、立ってもらえますかぁ?…」
しゃがんで着替える彼女を横から見ていた木下が、彼女を立たせて背後に廻り、首元、背中の順に紐を解いては自分で結び直し、その結び目近くではさみを入れた。
「じゃあ…次は…」
彼は雅美の左横にしゃがんで膝をつき、腰の結び目を解いた。
「ぁ…ぃゃ…」
雅美は垂れ下がりかけた小さな生地を手で押さえた。
「これ、意外と難しいですね…不器用で…すみません…」
雅美は動揺を隠せないでいた。まるで注射される子供のように、彼と反対に顔を反らした。
引っぱり過ぎると伸びすぎる。難儀しながら紐を結ぶ木下の手が雅美の身体に触れてきた。
『木下さん、わざと触れてる…仕方ないよね…分かってあげないと…』雅美はそう思っていた。
「よしっと…じゃあ、木下さん、赤のライトを床にお願いしまーす…じゃあ、撮っていきますよぉ~はぁい、奥さん…こっちです。こっち見て…」
再び、連写音が聞こえ出した。
「はぁい、そのまま、後退りして壁に背中をつけちゃいましょうかぁ…そう、こっちを見ながら…そうそう…そしたら、両手は上にあげて下さいね~…そう…真上…指も伸ばして…でぇ~…そのまま、ゆっくりしゃがんで…ああ、背中はつけたままね~…つま先立ちで…そう腰だけを落として~…」
恭史の場所からは、ビキニが肌に同化し、雅美が全裸に見えていた。
「いいですねぇ…でも、脚は閉じずに、お相撲さんみたいに広げて~…そのほうが、ぐらぐらしないんで…うーんと…もうちょっと…も~ちょっと…恥ずかしいけど…こっち見なくでも良いんで…そお、思い切って~、両膝を壁に沿わせるくらい…」
赤いライトが雅美の股間を照らし、里見は連写を二度続けた。
「えっとね…木下さん…奥さん、鎖骨が綺麗なのに、首で結んでる紐が被ってて~…あれ、いらないですよね?…切っちゃいましょうかぁ?…」
「あ、ほう…確かに(鎖骨を見せるのに邪魔かもしれない)…けどぉ、ブラが垂れてくるんじゃないかなぁ…」
「そうですねぇ…どうしよっかなぁ…うーんと…奥さん…ブラ…外せますか?…」
「え?…ぁ、ぁ…、はい…」
里見は彼女の真正面でカメラを向けた。
「じゃあ、お願いします…」
壁際で立っていた雅美はそれに戸惑いながら、細い腕を背中に廻し、木下が固く結んだ紐を解いていった。
木下はそれを見て、手早くライトを当て、里見とは別の位置でカメラを構えた。
連写音がひっきりなしに響き、ブラは下向き加減の身体にぶら下がって揺れた。
そして彼女は、首の後ろにも腕を廻して息を止め、そこに結ばれている紐も同じように解いた。
紐をたぐり寄せて手の中に丸めた雅美は俯いたまま、前を向けずにいた。
恭史はその光景、そして、その中心にいる雅美に見入っていた。
不思議な感情が彼の心に沸いていた。遠巻きに見る彼女の姿が、自分の妻ではなく、別の女のように思えてならなかった。

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