黎明の守護騎士

月代 雪花菜

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悪夢の始まり

11.妙案だったでしょう?

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 フェリクスの病は治ると知ったラハトは、心から安堵したのだろうということは、彼の表情から十分に察することが出来た。
 しかし、クロイツェル侯爵夫妻に預けるとして、その後はどうしたらよいだろうか……
 主神オーディナルやルナティエラ嬢の頼みとは言え、一生面倒見ることなど出来るはずも無い。
 いや……使用人となる道があるか?

「フェリクスはクロイツェル侯爵夫妻に預けられたあと、どうされるのですか? オーディナル様の神殿関係の司祭にされるおつもりで?」

 アーヤリシュカ第一王女殿下の言葉に、主神オーディナルは首を振った。
 どうやら、そういう考えは皆無らしい。

「神官の素質は十分にある。しかし、僕を祀る神殿には、既に彼奴の手のものが数名紛れ込んでいるようだ。我々神には、自分を祀る神殿ほど直接手を下すことが出来ない制約がある。有事の際は、違う神に依頼して解決するよう働きかけるのが常なのだが……この世界の神は今現在動ける者が皆無なのだ」
「動けない……?」
「それぞれがこの世界にとって重要な使命を果たしているからな」
「神々もお忙しいのですね……」

 ナルジェス卿の言葉に、主神オーディナルは苦笑交じりで頷く。
 嘘では無いが、真実でも無い――といったところだろうか。
 以前からこの世界の神々が動けないと言うことは聞いていたが、その理由は教えられていない。
 よほどの事情があるのだろうと予測は出来る。
 結局、我々人間が手出しできるような事では無いのだ。

「ハティの野郎は、神殿にまで手をだしているのですね」

 ラハトは忌ま忌ましい相手の話をするように顔を顰める。
 そんな彼を心配したのか、ノエルがぴょんっと飛び跳ねてラハトの肩に移動した。

「怒らない怒らないー、オーディナル様の神殿で悪さをしている間は、筒抜けだってことだよー」
「確かにそうですが……」
「どうせ、神殿にある聖杯が目当てなのだろう。アレ単体では何もできないから安心して良い」

 以前、ハルキを交えた話し合いをしたときに聞いた神器のことだ。
 王笏がセットになっている神器であるから、城にあるはずの王笏さえ奪われなければ、大した問題では無いのだろう。

「聖杯単体で出来る事は、水を浄化することだな。それなら、洗浄石を持つベオルフにも出来ることだ。つまり、アレを偽物だと言い張ることすら可能になる」
「その結果、主神オーディナルの神器が一つ失われるのですよ?」
「お前達の方が大事だから、全く気にしなくて良い。それに、新しい神器を作る事すら可能だ。それくらい、今の私は色々と揃っているのだからな」

 揃っている?
 何が揃っているのだろうかとラハトと顔を見合わせていたら、主神オーディナルは楽しそうに指先を私へ向けた。

「ベオルフ、僕の愛し子、紫黒、真白、ノエル……これだけ力を持つ者が私の側にいるのだ。制約に引っかからない程度のことなら、何でも出来る気がしてくるな」
「……やり過ぎないようにお願いします」
「ん? まあ……多少は良かろう」
「よくありません」

 主神オーディナルの多少は、我々にとってとんでもない領域であるということは、既に知っている。
 ヘタな事をして黒狼の主ハティを刺激すれば、面倒なことになるだろう。
 それが私だけに向けられるのなら良いが、黒狼の主ハティは手下を使って様々な事をしてくる可能性がある。
 今回だって、「私との決着がつくまで他の者に手を出さないのではないのか」と言っても、「直接手は出していない」と言い出すに決まっているのだ。
 結局のところ、配下を使って相手を殺すことに躊躇いもしない。
 クロイツェル侯爵夫妻のところは守り石の効果があるし、私の家族はくせ者ばかりなのでヘタに手を出せないだけだ。
 おそらく、どれほど鍛えられていようとも、父や弟に手を出せる人間など限られてくる。
 いや……返り討ちにあう可能性の方が高いのだ。

「王族は大丈夫なのでしょうか」
「ああ、それなら問題は無い。王太子にはベオルフの弟がいるし、国王には父がついているのだろう? 弟たちはどうでもいいから知らん」
「切り捨ててよろしいのですか?」
「良い。王笏を守ることを最優先にしているからな。それに、僕の愛し子とベオルフに迷惑をかける連中を、何故僕が慮ってやらねばならないのだ」

 それが本音か……と、さすがに溜め息が出てしまう。
 しかし、それだけのことをしているのだから、致し方が無い。
 主神オーディナルが敵に回らないだけマシだと思って、大人しくしてくれていたら良いのだが……

「では、一度王都へ戻ってクロイツェル侯爵夫妻の元にフェリクスを送り届けなければなりませんね」
「手紙も渡してくれ。そこには重要なことが書かれている」
「重要なこと……?」

 フェリクスの保護を頼む内容だけでは無いのだろうか。
 手にした手紙を見ていると、主神オーディナルは事もなげに内容を簡単に語ってくれた。

「お前達が話していた茶葉についての詳細と、フェリクスをクロイツェル侯爵の後継者にしてはどうかという提案……いや、もはや嘆願書だな。それが同封されている」
「……は?」

 さすがに考えていなかった内容に、私だけでは無く全員が唖然として主神オーディナルと手紙を交互に見る。
 まさか、そんなことを考えていたとは……予想外だ。

「クロイツェル侯爵夫妻は、今も僕の愛し子に対しての罪悪感を持ち、苦しんでいる。それが黒狼の主ハティの陰謀であることは明白だが、それでもだ……親として出来なかったこと、してやりたかったことを考えては悲しんでいることだろう」
「それは……」

 確かに主神オーディナルの言う通りだ。
 クロイツェル侯爵夫妻は後悔し、自責の念を持ち苦しんでいる。
 ルナティエラ嬢を守るためだったとは言え、大切な娘を無視し続けてきた記憶が鮮明に残っているのだ。
 せめて、その記憶が無ければ、まだ穏やかに過ごせていたのかも知れないが……

「想いが強ければ強いほど、愛情が深ければ深いほど、僕の愛し子を虐げるようにかけられていた呪いに反発し、存在が無かったように扱っていた。それだけでも僕の愛し子には辛いことだろうが、暴力的な虐待などが無かったのは、あの夫妻が必死に阻止してくれたからだ」

 心に傷を付けても肉体には傷を残さなかった。
 どちらにも傷が残っていたら、ルナティエラ嬢はとうに壊れていたかも知れない。
 それに、親としての愛情があったからこその抵抗だったと聞き、少し安心してしまった。
 いつか、話し合って和解することが出来る。
 ルナティエラ嬢の心にも陰りを落とす現在の両親との関係は、修復できないものでは無いと感じた。

「僕の愛し子はフェリクスを生涯安全な場所で保護し、他の者たちが邪魔をする事の出来ない状況を作り出す必要があると判断したのだ。それと同時に、クロイツェル侯爵夫妻の身を守るためにも、身元がシッカリとした後継者が必要だと考えたのだろう」
「なるほど……クロイツェル侯爵夫妻は謹慎処分が明ければ、後継者問題が……」
「僕の愛し子は戻らない。つまりは、そこを彼奴に狙われてはかなわんというわけだ」
「し、しかし、弟を……本当に貴族として迎えることなど出来るのでしょうか。体も弱い、躾もマナーも……」
「そんなもの、数年もあれば習得出来る。体も、それだけの年数かければ快復するだろう」
「……お前が言うと、妙な説得力があるな」
「私に出来るのだから、お前の弟にできないはずがない。とても利口そうだからな」
「お前だって、頭はいいのだろう?」
「ルナティエラ嬢には敵わない。賢いというのは、ああいう人のことを言うのだ。勉学だけ出来てもしょうがない」
「その勉学も出来ない者がいたようだが……」

 ナルジェス卿が誰を指し示して言っているのか理解して、私は苦笑してしまう。
 確かに、セルフィス殿下は勉強も出来なかったし、剣術や馬術もお察しだ。
 おそらくそれは、黒狼の主ハティの駒として教育された結果である。
 自分で考えて動くことの出来る人間になってしまえば、手駒として動かしづらくなる……ラハトのように――な。
 自分の力を注ぎ鍛えたラハトが牙をむくのだ。
 ヤツにとっては大誤算だろう。
 あの馬鹿はやり過ぎたのだ。
 人間の繋がりを甘く見た結果、とんでもない宿敵を自らの手で作り上げたに過ぎない。

「ルナティエラ嬢の考えは判りました。私もその意見には賛成です。他の貴族から口出しの出来ない状況にすれば良いというなら、後継者にするのが一番でしょう。ルナティエラ嬢が手紙にしたためたのは、自らが提案した……その証を残す為ですね」
「僕の愛し子がそう願ったと知れば、誰も反対できまい」
「フェリクスの親権はクロイツェル侯爵夫妻にあるとして、後見人は私がなった方が良さそうですね」
「ふむ……グレンドルグ王国では、血の繋がらない者を家族として迎え入れる時に面倒な手続きがあったな」
「親権を得るクロイツェル侯爵夫妻とは別に、最低一人の貴族が後見人となる必要があります。成人した貴族であれば問題はないので、私が適任かと……」
「一人より二人のほうが良いでしょう。私もサインします」

 正直に言うと、ナルジェス卿の申し出は有り難かった。
 実績のある貴族の後見人は、それだけで周囲の牽制にも繋がる。
 まあ……【神の花嫁】だと言われているルナティエラ嬢の提案であり、【黎明の守護騎士】の私が後見人になっている時点で周囲は何も言えないだろうが、そこへ南の辺境伯であるナルジェス卿が加われば死角などない。
 他の貴族が口出しすることも出来ないだろうし、クロイツェル侯爵夫妻の後継者へ自分の家の者を推薦することも出来ないはずだ。
 クロイツェル侯爵の次期当主の座――おそらく、貴族達の誰もが欲していると考えられる。
 現在のクロイツェル侯爵次期当主という座は、【神の花嫁】と言われるルナティエラ嬢の義兄弟になるのだ。
 そこら辺の貴族に婿入りしたり嫁いだりするよりも権力を持つことになるだろう。

「ベオルフ……ナルジェス様……弟のために、ありがとうございます」
「お前がそれだけ頑張りを見せてくれたからだ。それに、我らはもう仲間なのだから、気にするな」
「ナルジェス様……」
「これは、お前の弟だけではなくクロイツェル侯爵夫妻を守る事にも繋がる。強いては、ルナティエラ嬢を守る事にもなるのだ」
「その通りだ。ルナティエラ嬢を守るついでだ」
「ベオルフ……ったく……本当にブレないな……お前は」

 クッと笑ったラハトは、私とナルジェス卿に深々と頭を下げる。
 そういう気遣いは無用だと言っているのだがな……
 しかし、それがラハトだと知っている我々は、顔を見合わせて苦笑する。

「そういえば、ベオルフにも後見人はいたのか?」
「私の場合は、宰相閣下と先代の国王陛下が……」

 ナルジェス卿の問いかけに、隠すこともないだろうと正直に返答した。

「先代っ!? え……な……何故?」
「おそらく、主神オーディナルが手を回したのでしょう」
「ん? ああ、そんなこともあったな」

 ベオルフを守るために動くのは当然だろうと事もなげに言う主神オーディナルの本気に、ナルジェス卿とアーヤリシュカ第一王女殿下が頬を引きつらせた。
 私やルナティエラ嬢のためなら、引退した国王すら平気で動かすのだから困った方である。
 しかし、それによって私や彼女は守られてきたのだ。
 今度は、私がフェリクスをラハトの代わりに守っていこう。
 いや……私が関与することにより、ラハトも直接的では無いにしろ弟に関わる事が出来るのだ。

「私たちと共に、フェリクスを守っていこう。黒狼の主ハティの思い通りにはさせん」
「ああ……本当にありがとう。恩に着る」
「その分、働けばいい。これから、違う意味で大変かもしれないが」
「望むところだ。お前一人では心配だからな」
「言ってくれる……」

 フェリクスを守る方向性は見えてきた。
 これなら、黒狼の主ハティもヘタに手を出すことは出来ないだろう。
 だが、ヤツは諦めないと判っている。
 だからこそ、協力していかなければならないのだ。
 ここに居る者たち全てが言葉にしなくても、そのことを理解していた。

「ぷくくっ、きっと地団駄踏んで悔しがるよー!」
「見物だな」

 口元を前脚で押さえながら、これ以上楽しいものはないとでも言いたげに笑い転げるノエルと、主神オーディナルの肩で不敵に笑う紫黒。
 私たちを満足げに見つめる主神オーディナルは、目を細めて口角を持ち上げた。
 どうやら、主神オーディナルの考えている通りに事が運んだようである。

「本当に……貴女は色々考えていたのだな――」

 手の中にある手紙にソッと語りかけ、「妙案だったでしょう?」と得意げに微笑む彼女を脳裏に描きながら、大切な手紙を荷物の中へしまい込んだ。

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