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手を引かれて、どれくらい歩いて来ただろう。いつの間にか人の気配が全くない廊下まで来ており、告白後に何も言っていない気まずさからディリアに声を掛けることが出来なかった。
今まで『異性』だなんて意識したことがなかった故に、意識すればするほどに心臓の鼓動がおかしくなる。
繋がれた手が熱かった。手汗はかいていないだろうか、鼓動の高まりと緊張が手から伝わりそうで怖い。そう思って、手を引きながらまだ前を進み続けるディリアの背中、頭までを見て気付いた。彼の耳が赤い。どうやら口から心臓がまろび出そうな程に緊張しているのは私だけではないのかもしれない。
「……緊張、してるんだ」
「っ仕方ねえだろ。好きなんだから」
まるで呟くように出てしまった言葉だったが、彼の赤くなった耳にも届いていたらしい。悔しそうな声音と共に、ディリアの歩みは止まる。
「さっきの、返事が欲しい。できればイエスと答えてくれると、俺は嬉しいが」
真っすぐに見つめられる。正面から見てみると、耳どころか顔まで真っ赤になっていたが、もう恥ずかしさも限界を突破してしまったのか彼は恥ずかしがっていなかった。
しかしそれとは対照的に、私の脳みそはさらに混乱する。だって痛いくらいにディリアの必死さや本気が伝わってくる。長い付き合いだ。目を見れば、本気かどうかなんて簡単に測ることが出来た。
でも、だからこそ答えに困る。
私は今の今まで恋愛なんてしたことがないのだ。誰かを好きになったこともない。
それにディリアは、今まで友人だと思っていた相手。私自身がきちんと彼と同じ感情を返すことが出来るようになれるかが分からなかった。
「……その、私……どう答えればいいのか――」
「俺のことは嫌いか?」
「嫌いじゃない!嫌いなわけがないでしょう!?」
彼は今まで私とペアを組んで、一緒に青春と呼ばれる時間を過ごしてきた唯一無二の友人だ。だからそんな相手を嫌いなはずないのだ。むしろ親友とすら言える程に私は彼のことが好きだと断言できた。
でも、異性として好きかと言われると、分からないとしか答えようがなかった。私にとっての『好き』は、それくらいに未知のものなのだ。
「はは、そんな力強く否定するのか。……少しは希望があるみたいで安心した」
「分からないのよ、異性として好きかって言われると……分からない」
「じゃあ、試しで付き合ってみるのはどうだ?もし違和感を感じれば、その時は忘れて友人に戻れば良い。第一歩として、俺と魔導祭の後のパーティーに行こう」
魔導祭の後のパーティー。
確かダンス中心のパーティーだったはずだ。友人同士または恋人の男女での参加が義務付けられている、私が本来であれば参加するつもりが全くなかったもの。
なにせディリアはあまりこういう場が得意じゃないと思っていたこともあり、毎年誘ったことはなかった。私は……パーティーは正直あまり得意ではない。なのに、なぜか毎年行きたいと思っていたような気がする。不思議なことだが。魔導祭の雰囲気にでもあてられたのだろうか。
行きたいと思っていた。だから、ディリアの誘いは正直嬉しい。嬉しい……はずなのだが、なんだかモヤモヤした気持ちが心の一部に纏わりついていた。
しかし行きたいと思っていた気持ちに偽りはない。それに、ディリアが頑張って一歩を踏み出したのだ。恋をしたことがないから怖いだなんて言っていられないだろう。結局、どんなことでもやってみなければ分からない。
私は頷き、ディリアの手を正面からとっていた。
今まで『異性』だなんて意識したことがなかった故に、意識すればするほどに心臓の鼓動がおかしくなる。
繋がれた手が熱かった。手汗はかいていないだろうか、鼓動の高まりと緊張が手から伝わりそうで怖い。そう思って、手を引きながらまだ前を進み続けるディリアの背中、頭までを見て気付いた。彼の耳が赤い。どうやら口から心臓がまろび出そうな程に緊張しているのは私だけではないのかもしれない。
「……緊張、してるんだ」
「っ仕方ねえだろ。好きなんだから」
まるで呟くように出てしまった言葉だったが、彼の赤くなった耳にも届いていたらしい。悔しそうな声音と共に、ディリアの歩みは止まる。
「さっきの、返事が欲しい。できればイエスと答えてくれると、俺は嬉しいが」
真っすぐに見つめられる。正面から見てみると、耳どころか顔まで真っ赤になっていたが、もう恥ずかしさも限界を突破してしまったのか彼は恥ずかしがっていなかった。
しかしそれとは対照的に、私の脳みそはさらに混乱する。だって痛いくらいにディリアの必死さや本気が伝わってくる。長い付き合いだ。目を見れば、本気かどうかなんて簡単に測ることが出来た。
でも、だからこそ答えに困る。
私は今の今まで恋愛なんてしたことがないのだ。誰かを好きになったこともない。
それにディリアは、今まで友人だと思っていた相手。私自身がきちんと彼と同じ感情を返すことが出来るようになれるかが分からなかった。
「……その、私……どう答えればいいのか――」
「俺のことは嫌いか?」
「嫌いじゃない!嫌いなわけがないでしょう!?」
彼は今まで私とペアを組んで、一緒に青春と呼ばれる時間を過ごしてきた唯一無二の友人だ。だからそんな相手を嫌いなはずないのだ。むしろ親友とすら言える程に私は彼のことが好きだと断言できた。
でも、異性として好きかと言われると、分からないとしか答えようがなかった。私にとっての『好き』は、それくらいに未知のものなのだ。
「はは、そんな力強く否定するのか。……少しは希望があるみたいで安心した」
「分からないのよ、異性として好きかって言われると……分からない」
「じゃあ、試しで付き合ってみるのはどうだ?もし違和感を感じれば、その時は忘れて友人に戻れば良い。第一歩として、俺と魔導祭の後のパーティーに行こう」
魔導祭の後のパーティー。
確かダンス中心のパーティーだったはずだ。友人同士または恋人の男女での参加が義務付けられている、私が本来であれば参加するつもりが全くなかったもの。
なにせディリアはあまりこういう場が得意じゃないと思っていたこともあり、毎年誘ったことはなかった。私は……パーティーは正直あまり得意ではない。なのに、なぜか毎年行きたいと思っていたような気がする。不思議なことだが。魔導祭の雰囲気にでもあてられたのだろうか。
行きたいと思っていた。だから、ディリアの誘いは正直嬉しい。嬉しい……はずなのだが、なんだかモヤモヤした気持ちが心の一部に纏わりついていた。
しかし行きたいと思っていた気持ちに偽りはない。それに、ディリアが頑張って一歩を踏み出したのだ。恋をしたことがないから怖いだなんて言っていられないだろう。結局、どんなことでもやってみなければ分からない。
私は頷き、ディリアの手を正面からとっていた。
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