2 / 34
1
しおりを挟む
(今日こそは……絶対に素直になって見せるわ)
国に魔王討伐という多大なる貢献を果たした勇者パーティの弓使いにしてアーゼンベルグ伯爵家の長女であるフェリシア=アーゼンベルグは決意の中にあった。
共に旅してきた仲間であり、祖国・イースディール王国の第二王子。そしてずっと頼れる勇者であったユリウスに自分の想いを告げるという決意の中に……。
きっと自分の事は妹分のようにしか思っていないであろうことも知っている。フェリシア自身、旅の中でもその扱いが嫌でわざわざユリウスに突っかかっていた節があったのも自覚している。
でも、やっと魔王を討伐して平和になったのだ……。平和になった世界では自分自身も少しは穏やかに――素直になってみよう。彼に好きと伝えて、自分の気持ちに向き合ってみようと……そう思っていたのだ。
だがしかし、ここ数日間の結果は惨敗。ユリウスが話しかけてくるたびにツンとした態度で余計な厭味を言ってしまう始末だった。このままでは、好きだと伝える以前に嫌われてしまうかもしれない……そう焦っていた。
だから今度こそ――。
そう決意して、王宮の中の自身に宛がわれた客室を出た。
「あの……ユリウスは――――」
「ユリウスう?アイツならなんか買い物があるっつって、朝の鍛錬後はすぐに城下町の市場に向かったぞ」
「そう。ありがとう、ダリア」
当然ながら約束などはしていないので、フェリシアはユリウスの居場所など知らない。だから一番可能性がありそうな王宮の騎士向けに建てられた鍛練場に真っ先に向かった……が、結果は会話通り。出鼻をくじかれた。でもそんな彼とはまだ顔を合わせないという事態に少し安心してしまう自分自身がいることにフェリシアは心の中で嘲笑した。
ダリアと呼ばれた壮年の髭面の男性は同じく勇者パーティに所属していた格闘士の男である。粗雑そうに見えて、案外面倒見が良い事もあって、フェリシアはよく彼に相談していた……主にユリウスのことを。
だから彼はフェリシアが誰にも悟られないようにひた隠しにしていたフェリシアのユリウスに対する気持ち唯一知っている人間なのだ。
「ふ……まあ、頑張れよ。フェリシア」
「うん。頑張ってくる」
不器用ながらも応援してくれるダリアに笑顔を向ける。彼の応援で再び決意を固めながら、城下町に向かった。
***
城下町は先日行われた魔王討伐を祝したパレードの余韻も冷め切らずに浮足立っていた。
ところどころでパレードの話や魔王が討伐されて平和になったこと、勇者の話などで未だに盛り上がっていた。そんな雰囲気に少し鼻が高くなる。パレードは勇者と聖女以外は強制参加ではなかった。
なのでフェリシア自身が目立つのが苦手なのもあり、参加していなく、その他の勇者パーティのメンバーも参加したがらなかったために、主に勇者であるユリウスとフェリシアの妹である聖女が全面に出てパレードは盛大に行われた。
実際に当日は国内外から勇者と聖女の姿を一目見ようと、沢山の人々が訪れた。皆、人種・性別関係なく喜び合い、パレードは大いに盛り上がった記憶は新しい。
とにかく、フェリシアはそれに参加はしなかった。それ故にフェリシア自身の知名度は殆どない。だからフェリシアが普通に外出していても、特に何かを言われることもないが、それでよかった。
街が賑わっているのを尻目にユリウスの姿を探す。こんなに賑わっている中でもフェリシアには簡単にユリウスを見つけ出せる自信があった。弓を使っていただけあって、元々目はかなり良いのだ。それに、ユリウスの容姿はかなり目立つ。この国の天姿国色と言われていた王妃の息子というだけあって、かなり見目麗しく、金糸を紡いだかのような金の髪の毛は遠くからでもよく見える。
それに加えて先日のパレードでの知名度もある。きっと彼の周囲は人で賑わっていることだろう。人当たりの良さもあって彼は国民からもかなり人気があり、王宮にいようが街にいようが基本的に人に囲まれていた。
きっと今日もそうなのだろう……。そんな光景が簡単に思い浮かんで思わず笑みが浮かぶ。
そうしてまた暫く歩くと、予想通り街の人たちに囲まれていたユリウスは簡単に見つかった。
国に魔王討伐という多大なる貢献を果たした勇者パーティの弓使いにしてアーゼンベルグ伯爵家の長女であるフェリシア=アーゼンベルグは決意の中にあった。
共に旅してきた仲間であり、祖国・イースディール王国の第二王子。そしてずっと頼れる勇者であったユリウスに自分の想いを告げるという決意の中に……。
きっと自分の事は妹分のようにしか思っていないであろうことも知っている。フェリシア自身、旅の中でもその扱いが嫌でわざわざユリウスに突っかかっていた節があったのも自覚している。
でも、やっと魔王を討伐して平和になったのだ……。平和になった世界では自分自身も少しは穏やかに――素直になってみよう。彼に好きと伝えて、自分の気持ちに向き合ってみようと……そう思っていたのだ。
だがしかし、ここ数日間の結果は惨敗。ユリウスが話しかけてくるたびにツンとした態度で余計な厭味を言ってしまう始末だった。このままでは、好きだと伝える以前に嫌われてしまうかもしれない……そう焦っていた。
だから今度こそ――。
そう決意して、王宮の中の自身に宛がわれた客室を出た。
「あの……ユリウスは――――」
「ユリウスう?アイツならなんか買い物があるっつって、朝の鍛錬後はすぐに城下町の市場に向かったぞ」
「そう。ありがとう、ダリア」
当然ながら約束などはしていないので、フェリシアはユリウスの居場所など知らない。だから一番可能性がありそうな王宮の騎士向けに建てられた鍛練場に真っ先に向かった……が、結果は会話通り。出鼻をくじかれた。でもそんな彼とはまだ顔を合わせないという事態に少し安心してしまう自分自身がいることにフェリシアは心の中で嘲笑した。
ダリアと呼ばれた壮年の髭面の男性は同じく勇者パーティに所属していた格闘士の男である。粗雑そうに見えて、案外面倒見が良い事もあって、フェリシアはよく彼に相談していた……主にユリウスのことを。
だから彼はフェリシアが誰にも悟られないようにひた隠しにしていたフェリシアのユリウスに対する気持ち唯一知っている人間なのだ。
「ふ……まあ、頑張れよ。フェリシア」
「うん。頑張ってくる」
不器用ながらも応援してくれるダリアに笑顔を向ける。彼の応援で再び決意を固めながら、城下町に向かった。
***
城下町は先日行われた魔王討伐を祝したパレードの余韻も冷め切らずに浮足立っていた。
ところどころでパレードの話や魔王が討伐されて平和になったこと、勇者の話などで未だに盛り上がっていた。そんな雰囲気に少し鼻が高くなる。パレードは勇者と聖女以外は強制参加ではなかった。
なのでフェリシア自身が目立つのが苦手なのもあり、参加していなく、その他の勇者パーティのメンバーも参加したがらなかったために、主に勇者であるユリウスとフェリシアの妹である聖女が全面に出てパレードは盛大に行われた。
実際に当日は国内外から勇者と聖女の姿を一目見ようと、沢山の人々が訪れた。皆、人種・性別関係なく喜び合い、パレードは大いに盛り上がった記憶は新しい。
とにかく、フェリシアはそれに参加はしなかった。それ故にフェリシア自身の知名度は殆どない。だからフェリシアが普通に外出していても、特に何かを言われることもないが、それでよかった。
街が賑わっているのを尻目にユリウスの姿を探す。こんなに賑わっている中でもフェリシアには簡単にユリウスを見つけ出せる自信があった。弓を使っていただけあって、元々目はかなり良いのだ。それに、ユリウスの容姿はかなり目立つ。この国の天姿国色と言われていた王妃の息子というだけあって、かなり見目麗しく、金糸を紡いだかのような金の髪の毛は遠くからでもよく見える。
それに加えて先日のパレードでの知名度もある。きっと彼の周囲は人で賑わっていることだろう。人当たりの良さもあって彼は国民からもかなり人気があり、王宮にいようが街にいようが基本的に人に囲まれていた。
きっと今日もそうなのだろう……。そんな光景が簡単に思い浮かんで思わず笑みが浮かぶ。
そうしてまた暫く歩くと、予想通り街の人たちに囲まれていたユリウスは簡単に見つかった。
105
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています
高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。
そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。
最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。
何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。
優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる