今回は絶対に婚約を回避します!~前回塩対応してきていたはずの元婚約者の様子がおかしいのは何故ですか!?~

皇 翼

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関係ない話だが、叔父さんは料理が壊滅的に下手くそだ。
しかし本人にはその自覚がないようで、毎回質の良い食材を使っておきながら、無意識に産業廃棄物を創り出す。だからご飯は基本的に私が作る。これでも、バアルベリト魔法学院ではちゃんと料理基礎と料理実習の授業を履修した上、カインに食べさせたいという理由から最終的には最高評定を取っているのだ。胸を張って、美味しい料理を作れると言えた。
そんなこんなで日課ともなった昼ご飯を作ろうと準備をしていたら、リビングでだらけていた叔父さんが私を呼ぶ声が聞こえた。
彼が呼び出すときは大抵面倒事を押し付けたい時なので、嫌々調理器具を一旦置いてからリビングに向う。

「おー、来た来た。ほれ、来客」
「は?」
「久しぶりだな。元気、だったか?」

そこにいたのは、少し照れ臭そうに佇むカインだった。
実のところ、ストレツヴェルクの城から出る前、彼には既に別れを告げている。『従叔父の元でシャルルメイルの王族としての特殊な訓練を積むことになったので、バアルベリト魔法学院の入学まで会えません。カイン様も忙しい身だとは思いますが、お互い頑張りましょう。さようなら』と完璧な別れを告げてきたのだ。
要約すると、お互い忙しいのでもう会えないですねというか会いたくないです。(出来れば一生)さようなら。という深い意味を込めたはずなのだが……。
何故彼は目の前にいるのだろう。疑問に思って、別れを告げた時の自分の態度を思い出してみる。
……まずいな。カインと離れられるのが嬉しすぎて、顔に笑顔が浮かんでいたから、別れの最後の方は終始うつむいていたかもしれない。もしかしてそれを会えないから悲しんでいると取られた――!?
最悪だ!!あの時の自分をぶん殴ってやりたくなる。演技をするなら、最後まで貫き通せ!!!

しかし、会いに来てしまったものは仕方がないだろう。テキトーに話をして、さっさと追い出そう。
正直なところ、前回の経験から、カインと学院入学前のどこかでは必ず会うのだろうとは思っていたが、それは今ではないのだ。ストレツヴェルクでデートをたくさんしていた分の貯金はまだあるだろう!まだ自由でいさせてほしい。

「お久しぶりですね、カイン様。私は(命を脅かされる生活から解放されて)とても元気でしたよ」
「そうか。俺は……寂しかった。ずっと君に会いと思っていた。毎日君の事を考える程に」
「……そう、ですか」

あっっっまーーい!滅茶苦茶デレてきた!!
怖い、怖すぎる。死に戻り前はツンデレ通り越してツンドラだったカインが、しかし今回の生での出会いの時からちょっとデレ始めていたカインが……。
1カ月で溜まっていたデレが爆発したのか、それとも久々の再会のせいで彼の平常運転に私がついて行けないだけなのか。

「おーおー、青春だー。お熱いねー」

味方のはずの男が背後から冷やかしてきたので、カインに見えないように背中を引っ叩いておいた。助けろと言う合図代わりでもある。

「っと、そうだった。とりあえず顔を見られれば満足だろう?こいつはシャルルメイルの王族としてまだまだ及第点の雑魚なんだ。だからこの後も予定がギッチリ詰まってる。分かるよな、王子様?」
「……その呼び方はやめてくれませんか?」
「んー、仰せのままに。王子様」

諦めて欲しい。この人はこういう人間なのだ。他人が嫌がる事をわざわざしたがるタイプの典型的ないじめっ子タイプなのである。
けれどカインは察しの良いタイプだ。嫌がっている内はこの叔父がその行為をやめてくれないと察したのだろう。それ以上は言及せずに、私に話しかけて来た。

「君が忙しいのは知っている。だが、時々で良いから、会いに来ても良いか……?」

はい!だめでーす!!
そう言ってやりたかったが、まだそこそこの実力しかついていない私に、カインを完全に振り払って代償を払うというのはキツい。仕方がない、と死に戻り前の環境に戻すことにした。
死に戻り前の私は接点が少ない!と嘆いていたが、ストレツヴェルクに戻ったカインとは、学院に入るまでずっと手紙のやりとりをしていた。それに2か月に1度は、わざわざ会いに行っていたのだ。だからそれと同じ条件を出した。
文通をする、2か月に1度は会っても良い、と。そう返すと、『回数が少ないとしても会えるのは嬉しい』と幸せそうにカインの顔がほころんだ。その無垢な表情に少しだけ罪悪感が湧いたが、飲み込む。
こうして私の完全自由なストレスフリー生活は終わりを迎えたのだった――。
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