『10年隠した執着愛。元婚約者に捨てられた私は、ハイスペ同級生の甘い檻で二度と逃げられないほど塗り潰される』

小木楓

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第2話-3 【寸止め】「残念。……続きはまた今度」

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「んっ……ぁ、や……っ!」

私の唇から、自分でも聞いたことのない甘い声が漏れた。 

それを合図にしたように、蒼の手つきがいっそう大胆になる。

「……いい声。もっと聞かせてよ」

低い、熱を帯びた声が耳元で囁かれる。 

腰に回されていた手が、ゆっくりと、しかし確実にシャツの裾を捲り上げていく。

 ゴツゴツとした指先が、肋骨をなぞるように這い上がり、素肌に直接触れた。

「ひゃう……っ!」 「ここ、弱いんだ?」

彼の手は大きく、熱く、そして怖いくらいに「男」だ。 

親指の腹が、ブラジャーのアンダーラインギリギリの柔らかい肉を、じわりと押し込むように愛撫する。

(だめ、そこは……っ! 友達にする場所じゃない……っ!)

頭の中では警報が鳴り響いている。 

『止めて』と言わなきゃいけない。 

ここは彼の家で、彼は昔からの友人で、こんなこと許されるはずがない。

けれど、身体は嘘がつけない。

 彼に触れられた場所から火がついたように熱くなり、全身の力が抜けていく。

拒絶しようと伸ばした私の手は、押し返すどころか、縋るように彼の逞しい二の腕を握りしめていた。

「あ、あお……っ、ほんとに、だめぇ……っ」

「口ではそう言ってるけど……身体、こんなに熱いじゃん」

蒼が満足げに目を細め、さらに深く、私の核心へと指を進めようとした――その時。

ブーッ、ブーッ、ブーッ!

リビングの静寂を切り裂くように、テーブルの上のスマホが振動した。

 無機質な着信音が、熱に浮かされた空間に冷水を浴びせる。

ピタリ、と蒼の手が止まった。

「……チッ」

あからさまに不機嫌な舌打ちが聞こえる。

 彼は深い溜息をつくと、私の身体からゆっくりと重みを退けた。

 急に冷たい空気が肌に触れ、私はハッと我に返り、慌てて捲れた服を直して身を縮める。

「……悪ぃ。ちょっと出る」

蒼はスマホを手に取り、画面を確認すると、スッと表情を変えた。 

さっきまでの獣のような熱視線は消え、冷徹なビジネスマンの顔つきに戻っている。

けれど、立ち上がりざま。 彼は私の耳元に顔を寄せ、凍りつくほど甘く、低い声で囁いた。

「残念。……続きはまた今度な」

ポン、と頭を軽く叩かれる。

その手つきだけは、昔のままの「頼れる兄貴分」のようで。

そのギャップに、私はまた顔を真っ赤にしてフリーズすることしかできなかった。

-------------------------------------------------------------------

ガチャリ。 寝室へと繋がるドアが閉まり、蒼の気配がリビングから消える。

(……はぁ、はぁ、はぁ……っ)

私はソファの上で、自分の心臓が壊れそうなほど高鳴っているのを感じていた。 

助かった。 ……助かった、はずなのに。 身体の奥の火照りが、ちっとも冷めてくれないのは、どうして。

--------------------------------------------------------------------

一方、寝室に入った蒼は――。

ドアに背中を預けた瞬間、その場にズルズルと座り込みそうになるのを、あわてて手で顔を覆って堪えていた。

「……あぶねぇ……」

電話の相手には「あー、もしもし。資料の件か?」と冷静な声を装いながら、内心では冷や汗が止まらなかった。

(俺、マジで何してんだよ……)

『んっ……ぁ、や……っ!』

さっきの萌の声。潤んだ瞳。 真っ赤になって震えていた、無防備すぎる肢体。 

脳裏に焼き付いて離れない。

理性なんて、とっくに粉々だった。 

あと数秒、この電話が遅れていたら。 たぶん俺は、あのままあいつを組み敷いて、何もかも奪っていたに違いない。

(……10年待ったんだぞ。焦んな、俺)

高鳴る心臓を深呼吸で無理やり落ち着かせ、蒼は通話を続ける。

 けれど、ズボンの前がきつく張り詰めている事実だけは、どうにもごまかしようがなかった。

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