『10年隠した執着愛。元婚約者に捨てられた私は、ハイスペ同級生の甘い檻で二度と逃げられないほど塗り潰される』

小木楓

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第3話-1 【無自覚・寝ぼけ】理性が試される夜

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深夜2時。 高級マットレスの適度な沈み込みも、今の俺にはただの拷問台でしかなかった。

「……くそっ、寝れねぇ」

目を閉じれば、瞼の裏に焼き付いた映像が再生される。 

数時間前。

リビングのソファで、俺の下で震えていた萌。

 とろんとした瞳、上気した頬、そして俺の指が触れた柔らかい脇腹の感触。

(あんな顔させといて、普通に寝れるわけねぇだろ……)

下半身に集まった熱を持て余し、俺は何度目か分からない寝返りを打った。 その時だ。

ガチャリ。

静寂に包まれた寝室のドアが、音もなく開いた。

「……あ?」

身を起こして凝視すると、廊下の薄明かりを背に、ゆらりと小さな影が入ってくる。

 萌だ。 

てっきりトイレかと思ったが、様子がおかしい。 

彼女はふらふらとした足取りで、迷うことなく俺のベッドに近づいてくる。

「おい、どうした? 何かあったのか……?」

声をかける間もなく、彼女はスッと掛け布団を持ち上げ――。

もぞり。

「――は!?」

あろうことか、俺の隣に滑り込んできた。

「ちょ、おま……っ!?」

思考が停止した。

 俺の体温で温まっていたシーツの中に、少しひんやりとした彼女の体温と、甘いシャンプーの香りが充満する。

「んぅ……あったかい……」

萌は幸せそうに呟くと、まるで抱き枕でも見つけたかのように、俺の腕にしがみつき、胸元に頭をすり寄せてきた。

「おいっ、萌……!? 何してんだ!?」

俺は慌てて彼女の肩を掴み、ゆすった。

 心臓が警鐘を鳴らすレベルで早鐘を打っている。

「起きろ! ここ俺のベッドだぞ!?」 「んー……むにゃ……蒼ぅ……?」

彼女はうっすらと目を開けたが、焦点が合っていない。

完全に夢の中だ。 とろりとした目で俺を見上げ、無防備にふにゃりと笑う。

「……なんかぁ、蒼の匂いするぅ……すき……」 「っ!!?」

破壊力抜群の寝言に、全身の血液が沸騰する音が聞こえた気がした。

「バカ! お前、自分が何言ってるか分かってんのか!?」

焦って引き剥がそうとするが、彼女は「やだぁ……」と駄々をこねて、さらに密着してくる。 

その拍子に、彼女が着ていた少し大きめのパジャマの襟元が、大きくはだけた。

「――――ッ!」

月明かりに照らされた、白い鎖骨。 

そこから続く、ふっくらとした胸の谷間のライン。

 そして、無造作に放り出された生足が、俺の太ももに絡みついてくる。

(……無防備すぎるだろ、こいつ……!!)

さっきのリビングでの記憶が、鮮明に蘇る。

 あの時、俺がどれだけの思いで寸止めしたと思っているんだ。 

それなのに、わざわざ自分からライオンの檻に入ってくるなんて。

俺は彼女の腕を強めに掴み、耳元で低い唸り声を上げた。

「おい……いい加減に起きろ。襲うぞっ!?」

脅しではない。

今の俺は、理性という名の首輪が千切れかかっている飢えた獣だ。 

しかし、俺の必死の警告も虚しく、萌は「んん……」と気持ちよさそうに鼻を鳴らし、あろうことか俺の胸に頬ずりをして、すぅすぅと寝息を立て始めた。

「……マジかよ」

腕の中には、完全に安心しきった愛しい女。 

伝わってくる柔らかい感触と、規則正しい寝息。

俺は天井を仰ぎ、深く、深く絶望的なため息をついた。

(……神様。俺の前世の罪は一体何なんですか)

この夜、俺が一睡もできず、朝まで「男の本能」と戦い続ける地獄(天国?)を見ることになるとは、この時の萌は知る由もなかった。

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