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第一章 18歳 キスで補給
第1話 サキュバスの血覚醒 エネルギーが必要!?
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窓の外では、夏の終わりの湿り気を帯びた夜風が、庭の木々をざわつかせている。
赤城家のリビングは、つい先ほどまでの賑やかさが嘘のように、甘いケーキの残香と、どこか気恥ずかしい幸福感に包まれていた。
「18歳かぁ……。奈々も、もうすっかり大人の女性だもんな」
父・大和が、名残惜しそうに空になったシャンパングラスを見つめる。
その隣では、18年前から時が止まったかのような美貌を誇る母・リリアが、ふふっと意味深な笑みを浮かべていた。
先ほどまでこの場所にいた幼馴染のユウは、「明日も部活だから」と、照れくさそうに頭を掻きながら隣の家へと帰っていった。
別れ際、玄関で彼から渡された小さな包み——華奢なシルバーのブレスレット——が、奈々の左手首で体温を吸って微かに熱を持っている。
「奈々。ちょっと、お話があるの。あなたは、先に寝ていてくれる?」
リリアの声は、いつになく真剣だった。
大和は一瞬、心配そうに奈々を見たが、やがて優しく娘の頭を撫でて二階へ上がっていった。
キッチンカウンターに二人きり。リリアが淹れたハーブティーから、少し刺激のある香りが立ち上る。
「奈々、今日であなたも18歳。私たちの血筋にとって、18歳はただの数字じゃないの。……体が、熱くない?」
「え……?」
言われて、奈々は自分の内側に意識を向けた。
言われるまでは、誕生日の高揚感だと思っていた。
けれど、下腹部の奥底で、小さな火種が燻っているような、重苦しくて、それでいて何かが弾けそうな疼きがある。
「私はサキュバス。そしてあなたは、その血を半分受け継いだハーフ。……18歳になった今日から、あなたはもう、人間の食べ物だけじゃ生きていけないわ」
「生きていけない……って、どういうこと?」
奈々は戸惑い、自分の白い指先を見つめた。
人見知りで、本の中に逃げ込むのが好きだった自分が、そんな異質な存在だなんて。
「男性のエネルギー。それを摂取しないと、あなたの体は飢餓状態に陥る。……月に一度、身体中の血が沸騰するような『発情期』が来るわ。
その時、あなたの瞳は真っ赤に染まる。そうなったら、もう理性では止められない」
リリアは奈々の手を取り、その熱を確かめるように包み込んだ。
「恋人を作りなさい、奈々。それも、なるべく早く。あなたが心から許せる、そしてあなたを愛してくれる男の子を見つけるの」
「そんな……急に言われても。私、ユウとミカ以外、まともに話せる人だっていないのに……っ」
奈々の脳裏に、先ほどまでここにいたユウの顔が浮かぶ。
がさつで、声が大きくて、でも困った時には必ず隣にいてくれた、大きな背中。 想像しただけで、心臓がトクンと跳ねた。
しかしそれは今までの友情としての鼓動ではなく、もっと泥濘(ぬかるみ)に足を取られるような、甘く重い響きだった。
「……っ」
突如、喉の奥が異常に乾いた。
リリアの顔が、わずかに曇る。
「……始まったみたいね。今夜は満月。初めての夜は、少し早めにくるわ」
奈々は椅子から立ち上がろうとしたが、膝に力が入らず、その場にへたり込みそうになった。
視界が、じわりと熱を帯びた紅に染まっていく。
鏡を見るまでもなくわかった。自分の瞳が、獣のような色に変貌していることが。
窓の向こう、隣の家の二階。 ユウの部屋の明かりが、まだ点いている。
いつもなら、ただの「幼馴染の部屋の光」でしかなかったそれが、今の奈々には、抗いようのない芳醇な香りを放つ「獲物」の場所のように感じられていた。
「あ……、あ……」
唇から漏れる吐息が、自分のものではないように熱い。 奈々は、震える手でブレスレットの鎖を握りしめた。
赤城家のリビングは、つい先ほどまでの賑やかさが嘘のように、甘いケーキの残香と、どこか気恥ずかしい幸福感に包まれていた。
「18歳かぁ……。奈々も、もうすっかり大人の女性だもんな」
父・大和が、名残惜しそうに空になったシャンパングラスを見つめる。
その隣では、18年前から時が止まったかのような美貌を誇る母・リリアが、ふふっと意味深な笑みを浮かべていた。
先ほどまでこの場所にいた幼馴染のユウは、「明日も部活だから」と、照れくさそうに頭を掻きながら隣の家へと帰っていった。
別れ際、玄関で彼から渡された小さな包み——華奢なシルバーのブレスレット——が、奈々の左手首で体温を吸って微かに熱を持っている。
「奈々。ちょっと、お話があるの。あなたは、先に寝ていてくれる?」
リリアの声は、いつになく真剣だった。
大和は一瞬、心配そうに奈々を見たが、やがて優しく娘の頭を撫でて二階へ上がっていった。
キッチンカウンターに二人きり。リリアが淹れたハーブティーから、少し刺激のある香りが立ち上る。
「奈々、今日であなたも18歳。私たちの血筋にとって、18歳はただの数字じゃないの。……体が、熱くない?」
「え……?」
言われて、奈々は自分の内側に意識を向けた。
言われるまでは、誕生日の高揚感だと思っていた。
けれど、下腹部の奥底で、小さな火種が燻っているような、重苦しくて、それでいて何かが弾けそうな疼きがある。
「私はサキュバス。そしてあなたは、その血を半分受け継いだハーフ。……18歳になった今日から、あなたはもう、人間の食べ物だけじゃ生きていけないわ」
「生きていけない……って、どういうこと?」
奈々は戸惑い、自分の白い指先を見つめた。
人見知りで、本の中に逃げ込むのが好きだった自分が、そんな異質な存在だなんて。
「男性のエネルギー。それを摂取しないと、あなたの体は飢餓状態に陥る。……月に一度、身体中の血が沸騰するような『発情期』が来るわ。
その時、あなたの瞳は真っ赤に染まる。そうなったら、もう理性では止められない」
リリアは奈々の手を取り、その熱を確かめるように包み込んだ。
「恋人を作りなさい、奈々。それも、なるべく早く。あなたが心から許せる、そしてあなたを愛してくれる男の子を見つけるの」
「そんな……急に言われても。私、ユウとミカ以外、まともに話せる人だっていないのに……っ」
奈々の脳裏に、先ほどまでここにいたユウの顔が浮かぶ。
がさつで、声が大きくて、でも困った時には必ず隣にいてくれた、大きな背中。 想像しただけで、心臓がトクンと跳ねた。
しかしそれは今までの友情としての鼓動ではなく、もっと泥濘(ぬかるみ)に足を取られるような、甘く重い響きだった。
「……っ」
突如、喉の奥が異常に乾いた。
リリアの顔が、わずかに曇る。
「……始まったみたいね。今夜は満月。初めての夜は、少し早めにくるわ」
奈々は椅子から立ち上がろうとしたが、膝に力が入らず、その場にへたり込みそうになった。
視界が、じわりと熱を帯びた紅に染まっていく。
鏡を見るまでもなくわかった。自分の瞳が、獣のような色に変貌していることが。
窓の向こう、隣の家の二階。 ユウの部屋の明かりが、まだ点いている。
いつもなら、ただの「幼馴染の部屋の光」でしかなかったそれが、今の奈々には、抗いようのない芳醇な香りを放つ「獲物」の場所のように感じられていた。
「あ……、あ……」
唇から漏れる吐息が、自分のものではないように熱い。 奈々は、震える手でブレスレットの鎖を握りしめた。
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