キスだけの契約だったのに。幼馴染に美味しく食べられて、溺愛されています

小木楓

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第一章 18歳 キスで補給

第14話 (ユウ視点)交際開始!?

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資料室から出て、夕闇に包まれ始めた校舎を背に歩く。 

俺の歩幅は、意識的に奈々のそれよりも少しだけ前にある。

そうでもしないと、さっきまで俺の腕の中にいた彼女の、あの熱い残り香に理性がまた焼き切られそうだったからだ。

「……ユウくん、ごめんね。さっきは、あんなに必死に……」

「あー、もう、その話は禁止! 俺が『いい』っつったんだから、いいの!」

俺はわざとらしく後頭部を掻いて、奈々の言葉を遮った。 

本当は、謝られるどころか、今だってまたその手を引いて、もう一度あの暗がりに戻りたいくらいなんだ。

それを必死に隠して、「ただの協力者」の面を被り続けるのは、想像以上に骨が折れる。

家へと続く並木道。

奈々は俯いたまま、自分の靴先を見つめてぽつりぽつりと話し始めた。

「……最近、よく知らない人から呼び出されたり、手紙をもらったりすることが増えて。

……でも、それがすごく怖いの」

「あぁ……。まぁ、お前、最近……なんていうか、その。前より、すげぇ綺麗になったしな」

本音を口にするだけで喉が熱い。

奈々は寂しそうに首を振った。

「違うよ。それは私が私だからじゃなくて、きっと、サキュバスの血が混ざったせい。

みんな、本当の私を見てるんじゃなくて、この体質に惹きつけられてるだけなんだと思うと……」

奈々の声が震える。

彼女にとって、今のその美貌は自分を象徴するものではなく、自分を偽るための「呪い」のようなものなんだろう。

けれど、その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥でどろりとした感情が鎌首をもたげた。

他の男。

奈々を呼び出す、どこの馬の骨とも知れない奴ら。

もし奈々が、そいつらの前で今日みたいに瞳を赤く染めて、しがみついて、あの甘い吐息を漏らしたりしたら——。
(……ふざけんな。絶対に、嫌だ)

自分でも驚くほどの拒絶感。

独占欲なんて綺麗な言葉じゃ足りない。

それはもう、本能的な「縄張り意識」に近いものだった。

 奈々のあの顔を知っているのは、俺だけでいい。

あの熱を分け与えられるのは、俺の特権でなきゃならない。

「……なぁ、奈々」

俺は立ち止まり、にやりと、なるべく「名案を思いついたガキ」のような顔を作って彼女を振り返った。

「だったらさ、……俺と付き合ってることにしようぜ?」

「え……?」

驚いて目を丸くする奈々に、俺は下心を必死に隠しながら言葉を畳みかける。

「ほら、お前がフリーだから変な奴らが寄ってくるんだろ?

 だったら俺が彼氏のフリをして、悪い虫を追い払ってやるよ。

そうすれば、お前もいちいち断る手間が省けるし、一石二鳥じゃね?」

建前だ。全部、建前。 

これで学校でも堂々と奈々の隣にいられる。

他の男を睨みつけて追い払う理由ができる。

そして何より、「彼氏」という肩書きがあれば、次の『補給』だって、もう少し踏み込んだことまで……。

「……いいの? ユウくんに、そんな迷惑……」

「迷惑なわけねーだろ! お前を守るためなんだからさ」

奈々は、俺の「下心」にこれっぽっちも気づかず、むしろ救い主を見るような目で俺を見上げた。

「……ありがとう、ユウくん。……それじゃ、今日から私、ユウくんの『彼女』だね」

「……あ、あぁ。ま、あくまでフリだけどな!」

嬉しさを押し殺して答えるが、心臓は今日一番の早鐘を打っていた。 

嘘から始まる恋、なんて使い古された言葉だけど。 

奈々、俺はお前を「フリ」で終わらせるつもりなんて、さらさらないからな。
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