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〜番外編〜

『初恋の思い出』

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「春人も来いよ!」 


差し伸ばされた手に嬉しさを覚えたのはいつ頃だったろうか。幼馴染で小学生までは"大切な親友"だった和馬。


それは分かっていたし、変わるつもりもなければ変えるつもりもなかった。これからも何があったとしても。和馬は"大切な親友"だと思っていたから。


だけど――。


「なぁ、春人。俺さ……春香のこと好きみたいだ」


照れくさそうにそう言った和馬の言葉。その言葉を初めて聞いた時、言葉を失った。意味がわからなかったからだ。


だって、和馬はしっかり者だし、イケメンだから選べる立場にある。わざわざガサツで自分よりスペックも劣っている春香を選ぶのは理解できなかったし、心の中にモヤモヤが残った。


何故、こんなにモヤモヤしているのか分からない。でも、嫌なことだけは分かった。


でも、実際、あの時の自分はどうすればよかったんだ?と聞かれれば答えられない。だってあのときの自分にはわからなかったから。この胸の思いも、気持ちも……分からなかった。


分からなくて、気持ち悪くて……ただ、苦しかった。そしていろんな人にぼかしながら相談したけど、結局、何も変わらなかった。
自分のことなのに、自分で解決できないなんて情けないと思ったりもした。


だけども。


「じゃ、想像してみなよ。その春人くんが好きな子がさー、他の男と一緒にいるところ見たらどう思う?」


誰に相談したかは忘れたが、そんなことを言われた気がする。
その時は何とも思わなかったが、今なら分かるかもしれない。きっと嫉妬していたのだ。自分が一番近くにいて欲しかった存在を取られたことに。


それが恋だと知ったのは中学2年の頃だが、気付いた時には遅かった。だってあの二人――春香と和馬が付き合った後なのだから。
それからはもう辛くて仕方がなかった。春香の隣にいる和馬を見ているだけでイラついた。


今までのように話せなくなった。目を合わせられなくなった。話しかけられなくなって……どんどん距離ができた。春香と話すことも減った。


それでも……やっぱり好きだという感情はなくならなかった。むしろ大きくなるばかり。
苦しいだけなのに……辛いだけなのに……と思いながら、春人は女に走った。


女と身体を重ね合わせ、快楽に浸る日々を送ることで誤魔化そうとした。だけどダメだった。いくら抱いても満たされない。虚しくなっていく一方だったし、抱いた数だけ思い出させる和馬の存在が大きくなっていった。


だけども、


「……っ。はる……」


「……和馬」


今じゃ、和馬を抱けている。
それも無理矢理ではなく合意の上でだ。それどころか愛されてすらいる。女を抱いた時には得られなかった幸福感や安心感がある。
だけどまだ足りない。もっと欲しいと思う。


だから今日もまた求め合う。何度も抱き合い、お互いを求め合って……。
これが今の二人の関係であり、日常でもあった。
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