2 / 65
〜出会い編〜
二話 『入院生活二日目』
しおりを挟む入院生活は暇すぎて死にそうになった。お見舞いに来てくれた友人達や部活の先輩たちは来てくれたし、心配してくれていたし、嬉しかったけどやっぱり退屈なのは変わらない。
否、昼は退屈じゃない。寧ろ楽しいし、子供達の相手をするのも楽しい。だけど夜中は退屈だ。スマホもいじれないのに眠気も襲ってこないし。そんなことを思っていると、
「ねぇ!ヨウスケー!遊んでー!」
「えー、俺とも遊んでー!」
目をキラキラさせながらそう言うのは入院している悟とつとむだ。子供というのはいつ見ても可愛いものだなぁ……
「遊ぶから飛びつくなって……で?何で遊ぶんだ?決めていいぞ」
病院内は退屈だし、子供達もきっと退屈なんだろう。ここに長期で入院している子も多いらしいし。
「じゃ、トランプしよう!」
「いいよ、トランプで何する?」
まぁ、ここはババ抜きとか神経衰弱とかダウトとかそんな感じだろう。……と、思っていたのだが。
「大富豪とかどう?」
「いいね!大富豪」
し、小学生が大富豪だと!?俺が小学生の頃、大富豪はルールが複雑過ぎて辞めたのに(後、親友が非常に強かった…というのもある)でもまぁ、楽しそうだしいいか。
その後俺は小学生に惨敗し、小学生に煽られまくった。
△▼△▼
「雑魚すぎだろ~!ヨウスケー」
「雑魚スケ~」
「うっせぇ!!次は勝つ!!」
……あれから2時間ほど経ち、今は全敗中である。しかも――。
「あ、お母さんが呼んでるー!またなー、雑魚スケ~」
「雑魚スケ~」
そう言って去って行く小学生の二人を見送りつつ、静かに決心する。
「(よしっ、決めた。今日は大富豪しかしない)」
絶対に負けない。そしてあいつらを見返してやるのだ! そう思いながら、本棚にあった"誰にでも勝てる大富豪必勝法"を手に取る。
さっきまで散々笑われてきた分、見返すために必死になって勉強しよう……!とは思うのだが――、
「……うーん、どこで勉強しよう……」
ここの病院は広い。カフェもあるし、図書室もあるし、自習室だってある。本を読むのには誰でも最適な場所だらけなのだ。だから迷ってしまう。
「……ここは無難に図書室でいいかー」
図書室。入院する前までは行ったこともなかった場所だ。本を読むより友達と遊ぶ方が好きだったし……だが今となってはこの病室にいる方が辛いから寂しさを埋めるため、という理由で図書室に行ってみることにする。
図書室に行くとそこには先客がいた。
その人は窓際の席に座っていた。窓から見える景色を見ながら本を眺めているようだ。
綺麗な人だと思った。大人びていてどこか儚げで触れてしまえば壊れてしまいそうな程繊細に見えるような女性だった。
「(………綺麗……)」
思わずそう思ってしまうほどには美しかった。
すると彼女はこちらに気付いたようで顔を上げた。目が合う。一瞬時が止まったように錯覚した。
それほどまでに彼女の瞳は美しく、吸い込まれてしまうようだったからだ。
「あー……えっと……」
何かをいう必要性なんて皆無なのについ口に出してしまった。
「あ、あの……ご、ごめん…なさい」
そんなことを思っていると彼女の方が謝ってきた。なぜ?と困惑していると彼女はこの場から去ろうとしている。
「ちょ、ちょっと待って!」
咄嵯に声をかけてしまった。何を言えば良いのか分からない、けど。このまま何も言わずに別れるのは嫌だと心の底から思った。
「……あ、あの……俺はこっちの席を使うので……その……気にしないでください」
それだけ言うと俺は椅子を引いて座った。……考えてみれば初対面の女の子をジロジロと見るとか警戒されても仕方がない行動じゃん……
これナースさんとかに言われたら怒られるやつだよ……と後悔したが、また話しかける勇気もなければ気まずい空気が流れるだけだと思い諦めることにした。
0
あなたにおすすめの小説
神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―
コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー!
愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は?
――――――――
※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
Bravissima!
葉月 まい
恋愛
トラウマに悩む天才ピアニストと
俺様キャラの御曹司 かつ若きコンサートマスター
過去を乗り越え 互いに寄り添い
いつしか最高のパートナーとなる
『Bravissima!俺の女神』
゚・*:.。♡。.:*・゜゚・*:.。♡。.:*・゜
過去のトラウマから舞台に立つのが怖い芽衣は如月フィルのコンマス、聖の伴奏ピアニストを務めることに。
互いの音に寄り添い、支え合い、いつしか芽衣は過去を乗り超えていく。
✧♫•・*¨*•.♡。.:登場人物:.。♡.•*¨*・•♫✧
木村 芽衣(22歳) …音大ピアノ科4年生
如月 聖(27歳) …ヴァイオリニスト・如月フィルコンサートマスター
高瀬 公平(27歳) …如月フィル事務局長
私はバーで強くなる
いりん
ライト文芸
33歳、佐々木ゆり。仕事に全力を注いできた……つもりだったのに。
プロジェクトは課長の愛人である後輩に取られ、親友は結婚、母からは元カレの話題が飛んできて、心はボロボロ。
やけ酒気分でふらりと入ったのは、知らないバー。
そこで出会ったのは、ハッキリ言うバーテンダーと、心にしみる一杯のカクテル。
私、ここからまた立ち上がる!
一杯ずつ、自分を取り戻していく。
人生の味を変える、ほろ酔いリスタートストーリー。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる