生贄になりし少女はドラゴンの王太子に溺愛される

中七七三

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3.美味しい料理だけど……

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 わたしは毎日、美味しいお料理を食べさせてもらった。

「ああ、こんな口が蕩けてしまいそう」

「あの……」

 これはミルクなのかな? 飲んだことはないけど、見たことはある。
 すっごく、甘くて…… 
 トロトロしていて、いつまでも甘い香りが口の中に残るような飲み物……
 わたしは、ついつい「おかわりはいただけないでしょうか?」と訊いてみた。
 給仕の人(ドラゴンの人?)に。

「ええ、いいですよ。いくらでも」

 ドラゴンの給仕の人は、おかわりを持ってきてくれた。
 わたしは、ミルクを三杯もおかわりしてしまった。
 
「ミルクってこんなにドロリとして甘いのですね」

「ミルクを濃く煮詰めて、はちみつを混ぜてますからね」

「あら、はちみつ? それは……」

「人間が、ハチが集めた鼻の蜜を奪って集めたものです」

 人間酷い。ハチも酷い目に合うんだなとわたしは思った。
 でも、わたしは、食べられてしまうのだから、もっと酷い目に合う。これからだけど。

「あ……」

 そして、わたしは気づいたのだった。
 こんな美味しい料理を食べさせるなんて……
 わたしは自分の腕を見た。ろくな物を食べてこなかったので、やせ細っている。
 足も細いし…… 胸なんてぺたんこだ。

(肉をつけて、太らせてから食べさせる気だ……)

 わたしは、毎日出てくる美味しい料理の秘密に気づいた。

        ◇◇◇◇◇◇

「なんだ? シャノーラが食事をしないだと!」

 ドラゴンの王太子、リュークは声を荒げる。

「料理班! 召集だ。セバスチャン」

「仰せの通りに」

 ということで、リュークの前に料理班のメンバーが並ぶのであった。
 いきなりの、王太子からの呼び出しに、真っ青になっている者もいた。

「最近、シャノーラが食べてないそうではないか!」

「いえいえ! 全く食べないわけではなく、食べ物を残してしまうのです」

「なんだと、全部食べないだけか? しかし、最初はお代わりすらしていたではないか?」

 リュークは言った。

「さすが、リューク様、人間の女のことにお詳しい。もはや、ストーカーレベルですな」

「うるせー! セバスチャン!」

「はい」

 五月蝿い執事を横目で睨み、視界の中心に料理班をもってくる。

「食事を残すというのは、大問題だ。味が落ちているのではないか? メニューに飽きが飽きてるのではないか?」

 リュークはギロっと殺気のこもった目で、料理班長らしき、人化ドラゴンを見やる。

「班長、どうなのだ?」

「はっ!」

 ピシッと気をつけをして、班長は口を開いた。

「畏れながらも―― そんなことはあり得ません。王族貴族でも人間であれば、絶対に満足の料理を提供させていただいております」

 畏れながらと、言いながら結構自信たっぷりに答える料理班長だった。

「人の食事は、味だけではございませぬからなぁ~」

「なんだと! セバスチャン」

「牢(凄まじく快適であるが)に押し込められ、ひとりで食事するのでは、どのような美食も飽きがきてしまうでしょう」

「うぬぬぬぬ、そうか。人とはそうか……」

 ドラゴンであるリュークにはピンとこない。
 が、長生きしており、人化して人間と一緒に生活したこともあるというセバスチャンのいう事には一理あるのかもしれない。

「愚考いたしますに……」

 セバスチャンは、話を続ける。

「王太子様が、一緒にお食事するのがよろしいかと」

「え――!! 俺がか、俺が、だって、嫌われたらどーすんだよ。シャノーラに」

 王子は美形に変化しているのだが、人間の美的感覚がよく分からない。
 ――自分は不細工に変化しているのではないか?
 と、いう心配している。
 元々が美麗なドラゴンであるので、人間の姿というのはどうもよく分からないのだ。

 しかし、人間のメスであるシャノーラのことは綺麗だと思うのだから、このあたりの感性は複雑怪奇である。

「とにかく、誰か一緒に食事して、会話することですな」

「会話もか!」

 またハードルが上がる。

 しかし、このままでは、せっかくの料理も残してしまい、弱って死んでしまうかもしれない。
 そうなれば「シャノーラロスト」でリュークは凄まじいダメージを受けるだろう。

 精神生命体に近いドラゴンとしては、精神的なダメージは死すら招きかねない。

「よし、分った、食事だ! 俺がシャノーラと食事をする!」

 王太子・リュークはそう宣言したのであった。
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