彼女(寵姫)以外は要らないと、後宮をお払い箱にされましたが、幼馴染の猛虎将軍が溺愛してくれるので問題ありません

若松だんご

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巻の五、手がかりを求めて

 「この箱を売ってくれぬか」

 昼下がりのお店。
 おじいちゃんの骨董品のお店に、入ったお客が言った。
 このお店、自慢じゃないけど、お客なんて滅多に来ない。店の前を通る人はいるけど、もしかしたら、「ここって店だったの? いつも通ってるけど知らなかった!」って人もいるかもしれない。
 そんなお店に、お客。
 ただのひやかし、物珍しさでも、外が暑いから、日差しよけに入店したのでも、とにかく客は客。
 店番を任された身として、「ぅおっしゃ! 頑張るぞ」って思って、軽く緊張してたんだけど。

 ――この箱を売ってくれぬか?

 その容姿にふさわしい、低すぎず高すぎない素敵な声。
 おそらく士大夫って感じの、若い男性。
 目の覚めるような美形。いや、目は覚めないな。見惚れて「ハニャ~ン」と目がトロンとしてきちゃう。

 「金百両でどうだ?」

 「きっ、きんひゃっ……」

 口を閉じたらいいのか、開きっぱなしでいいのか。
 金百両なんて。このお店、何年頑張って営業したら稼げるんだろって金額。

 (士大夫ともなれば、こんな箱にでも、そんなお金を出せちゃうんだ」

 よほどの酔狂? 物好き?
 この人。カッコいいだけじゃなく、すっごいお金持ち?
 涼やかな目元。でも、その眼差しは、どこかギュッと惹きつけられる色っぽさを感じる。 

 「……売ってはくれぬのか?」

 「え? あ、はい!」

 しまった。見とれてた!
 そして。

 (「はい」じゃダメでしょうがっ!)

 それじゃあ、「売りません」「売れません」に聞こえちゃうじゃない!
 実際、そう感じたお客は、すっごく、すっごぉぉぉく残念そうな顔して俯いちゃってる!

 「あ、あのですねっ! その箱は売り物じゃなくて! 商品をもたれかけさせる、つっかえみたいなもんでっ!」

 男性の、憂う顔も素敵だけど、今は、それを鑑賞してる時じゃない!

 「それに、お買い上げいただいても、鍵がないから開かないんです、その箱!」

 だから、物入れとして買ってもらっても使い道ないの。
 男性の手のひらの上の箱。
 複雑な木組みの箱なんだけど。鍵を挿すっぽい場所はあるんだけど。肝心の鍵がない。だから、おじいちゃんも、商品としてじゃなく、商品の立てかけ道具として使ってた。

 「ふむ。開かぬか」

 「ええ。残念ですけど」

 売って利益を上げたい気持ちはあるけど、使えない箱を売るのは気が引ける。

 「古い品をお探しなら、こちらの箱はいかがでしょう? 百年ほど前の匠の一品ですよ」

 男性が手にしてたのと同じような品。

 「そんな新しい品に興味はない」

 新しい? 百年が?

 「それより。この箱、開けてみたいとは思わぬか?」

 「へ? 開ける?」

 開くの? それ。

 「開けられるんでしたら……」

 見てみたい。
 その箱、何度も手に取ったことあるけど、動かすとなかでカサカサ音がして、なにかが入ってることは確実なんだよね。
 おそらくは、紙かなにか。
 鍵までかけて、その鍵を無くした、ちょっと間抜けな持ち主の箱。古く黒ずんでるから大切にはしてたんだろうけど、ウチみたいな骨董品屋に売られてきちゃった箱。(そして、商品のささえに使われちゃってた箱)

 「ふむ。では開けてみるか」

 開けみてみるかって。
 驚く私の前で、男性が、カチャカチャクルクルとなにかを動かしながら、箱を回転させる。

 「この箱はな、鍵など要らぬのだ。この木組みを回して、組み直していけば……っと」

 カチャリ。

 暗く静かな店内に、鍵が開く音が響いた。

 「――では、開けるぞ」

 「はい」

 なぜか見てるこっちもドキドキして、無意識に胸の前で手を組む。
 何がでてくるの? 隠して忘れてた恋文? それとも――

 「わっ!」

 開いた箱から巻き起こった風。風? 箱から?

 「シマッ――」

 「きゃああぁあぁ……あ? 何?」

 小さな竜巻のような風。それに巻きつかれ、悲鳴を上げたけど。

 「消えた?」

 というか。

 「あのクソ道士め」

 男性が、人の顔ってこんなに歪むんだってぐらい、くやしそうに顔を歪めた。――ん? 歪めた? それだけで済む、表情の変化?
 なんか、口の周りが黒ずんで、むき出しになった歯に、犬みたいな尖ったのが見えるんだけど? キレイに整えられてた髪も、なんか白っぽく、フサフサしたものに変わっていって……え? ええっ!?

 「オレ様の尻尾、何があっても返さないつもりか」

 ギリギリと噛みしめられた歯の隙間から、フーフーッと怒りの息が漏れる。そのままグルルルルって獣の唸り声が聞こえそう。

 「娘っ!」

 「ひゃいっ!」

 ギラギラした怒りの視線をぶつけてきた男。
 いや、男じゃない。
 男と同じぐらいの大きさの、白いフサフサした――狐?
 それも、後ろにたくさんの尾がついてる。――化け狐?
 その化け狐が、ノソリと私に向かって一歩踏み出す。

 「恨むんなら、こんな仕掛けを作った道士を恨め」

 う、ううっ、恨めって。
 どこの、誰を? ってか、私、なんで恨まなきゃいけないわけ?
 驚き、ペタンと床に座り込んじゃった私。その前で、元男、今化け狐がクアッと口を大きく開ける。

 (あ、これ、食べる気だ)

 さっきの竜巻。
 あれはおそらくこの化け狐が欲しがってたもので、それがなぜか私の中に収まっちゃった。で。コイツは私を食べることで、それを取り込むつもりなんだ。
 開かれた口。鋭い歯を結ぶように滴る唾。
 恐ろしいのに。逃げなきゃいけないのに、体が動かない。

 (だれか、助けて!)

 その時だった。
 残された木箱。それがカッと真昼の太陽より、雷よりも明るく光る。

 〝ヴッ!〟

 「きゃあっ!」

 その眩しさに、目を閉じそびれた私は、一瞬で視界を失う。けど。

 (あったかい……)

 さっきの竜巻と同じように、光が私にまとわりついてくる。クルクルと。
 まとわりつき、私を包み込み、そして、スルッと、私の中に入るようにして消えていった。

 〝キサマッ!〟

 グアッと唸り声を上げた化け狐。そのまま突進して、私をガブリ!――とはいかなかった。

 バイン。

 そんな音が、わたしと化け狐の間に響く。
 なにかが、襲ってくる化け狐を弾き飛ばしてるんだ。

 〝あのクソ道士め!〟

 私には、何が起きてるのかわからない。
 けど、化け狐にはわかってるんだろう。
 二、三回突進をくり返したけど、全部弾かれて、不満そうにグルグル喉を鳴らした。

*  *  *  *  *

 (……ハア)

 牀に腰掛け、今まで読んでいた書を投げ出す。
 
 (どうせ、この後、化け狐は主人公を護るんでしょ? 「お前の取り込んでしまった俺サマの力を取り出すまで、お前を他のあやかしに食われてはたまらんからな」とかなんとか言ってさ)

 そんでもって、主人公もこの化け狐に惚れるんだよ。「どうしてそこまでして、私を護ってくれるの?」みたいな感じでさ。

 (力を奪われたら困るからじゃん)

 なんてツッコミはなし。

 (というか。今の春本って、設定、凝ってるわねえ)

 骨董品屋の娘と化け狐。
 この後、娘を護って大怪我をした化け狐を助けるために、男女の交わりをしたりするのよ、ほら。
 パラパラと、牀の上に放りだした冊子をめくる。すると、二人がまぐわってる挿絵にぶち当たった。裸の主人公を組み敷く尻尾の生えた士大夫の絵。
 瀕死の化け狐が、どうして士大夫姿に戻ってるのか、そのへんをツッコんではいけない。この本、一応女性向けの、それもウブな乙女向けの春本だし。獣とヤってる絵なんて描けないよね。
 
 (ハアッ。やっぱり手がかりナシかあ……)

 さっきまで読んでた書だけじゃない。
 牀の上には、いくつかの春本。
 『家のために嫁がされましたが、溺愛されて幸せです』とか『妹の身代わりに結婚させられましたが、旦那さまの本命は私だったようです』とか。『お前など離縁だと、婚家を追い出してきた「元」旦那さま。今の旦那さまが溺愛してくれるので、アナタは追っかけてこないでください』、『捨てられて僻地に追いやられた私。ボロボロの犬を拾ったと思ったら、彼は神獣で、私をトロトロに溺愛してくださいます』なんていう、表題長すぎ本もある。
 どれもこれも、アレヤコレヤのスッタモンダの末、あーでもなければこーでもないの結果、主人公と相手の男が試練を乗り越えて、そういうことをする。そういう場面には、必ず絵がついてて、読んでるこっちに文章だけでなく、絵でも視覚的にスケベを供給してくれる。
 おそらく。おそらくだけど、女性の性的欲求を満たすために一役買ってるんだろう。
 こういう恋をしたい。こんなふうに愛されてみたいっていう、表には出さない女の欲望。

 悪くはない。悪くはないけど、こう、男女の仲を先に進ませるための手がかりなんてもんは存在しない。
 だって。

 (ここに出てくる二人って、書き手から、「コイツらそういう仲になりま~す!」って言われてるような登場方法だもんねえ)

 さっき読んでた『骨董品屋の娘は、あやかし(の溺愛)に囚われています!』だって、初っ端にカッコいい士大夫(中身、化け狐)が出てきて、「ああ、この人とそういうことするんだあ」なんて、思いながら読める形式になってたし。
 なんていうの? ここにある娘その一と、男その一をいっしょの箱(物語)に放り込みまして。二人がくっつくように、よぉく箱を振ります。シャカシャカ。するとどうでしょう。あら不思議、二人がピッタリ愛し合ってまぐわっているじゃありませんか! みたいな。
 物語の登場人物にだって好き嫌いあるだろうに。そういうの関係ナシに、「お前らはそういうことする(させる)ために生成したんだから、それ以外のことは許さん!」とでも命じられてるみたいなご都合展開。

 (同じ読むなら、後宮で読ませてもらってたヤツのほうがマシかなあ)

 書になって、こうやって売られてるんだから、文章的に悪いわけじゃないんだけど。
 後宮で読ませてもらってたもの。
 後宮薬師が、活躍して事件解決する推理系小説と、無実の罪を着せられた父親を助けるために、官吏のフリして忍び込んだ娘の活劇小説。
 後宮、皇太子殿下のために用意された(集められた)女性たちのなかには、いくつのも集団があった。

 まず、お茶会をする集団。
 これは、大臣の娘とか、皇族に連なる一族の娘とか、「ワタクシたち、生まれがちがうんでゴザイマスノ」な姫君が集まっていた。日々、お茶をしに集まりながら、そこで行われるのは――皇太子に見初められた玲麗リンリーの悪口大会。「礼儀もなってない」とか「顔も十人並み」から始まって、よくもまあ、そんなに悪口が続くもんだなあと感心するぐらい、日々罵詈雑言を紡ぎ出してた集団。
 次に、皇太子より、別の相手を! な集団。
 これは、どちらかと言うと身分も低くて、到底皇太子妃になれなさそうな子が集まってた。自分の容姿、身分を鑑みて、「いやあ、皇太子妃なんて無理っす」となって。「その代わり、いい旦那を見つけることはできるかもっ!?」で、女官のフリして後宮から抜け出したりしてた。……これ、誰も言わないからいいけどさ。バレたら、相手の男といっしょに首サヨナラよ?
 それと、最後にこれが一番大きな集団。
 ワタクシたち、好きなことして暮らしてるの。皇太子? お呼びじゃないのよ!
 絵画、楽器、舞踊、それと物書き。
 それぞれがそれぞれの趣味を活かして、楽しむ集団。
 それぞれ趣味の合う候補と仲良くなって、それぞれのイッピン! を作り出しては見せあったりしてた。
 わたしは――残念ながら、絵も楽器も舞踊も文才もそれなりの腕しかもってないから、どっちかというと、「見せてもらってる、聴かせてもらってる」専門。
 そこで、読ませてもらったのが、さっきの小説。
 あれは、後宮という、皇城の一部で暮らさないと書けない(描けない)作品だった。なんていうのかな、臨場感たっぷりで。後宮のことがネタにされるたび、「うんうん、そうだよね! わかる!」って頷きながら読ませてもらってた。
 あれ、まだ完結してなかったから続きを読みたいんだけど。……多分、書になることはないんだろうなあ。絵を描いてくれてた人も、物語を書いてくれてた人も、どちらも「これは趣味!」って言ってたし。手元にある春本みたいに、世の中に流通させたらマズいネタもいっぱいあったし。
 手持ち無沙汰だから書いてみたな人と、その小説面白かったから描いてみた人。どちらも、「趣味だから」で「時間つぶし」に書いてた(描いてた)だけだったから。似たようなものを出版してくれるとか、もう一度、協働して本を作ってくれるとか……ないよねえ。やっぱり。

 (でも読むなら、あっちなんだよなあ)

 途中までしか読んでないから、知らない結末。
 あの、薬師と相棒となった皇帝(武官のフリをしてる)の恋(未満だったけど)の行く末が気になる。官吏のフリした娘を助けてくれたのって、同じく官吏のフリした皇帝だよね?
 あの先、それぞれの組み合わせが、どうなったのか。同衾はしてなくても、口づけぐらいはするよね? するとしたら、どういう状況で口づけるの? どうやって「好き」を伝えるの?
 そこが、一番の手がかりになりそうなのに。そこを参考に、明順ミンジュンとの仲を深められたら……。

 ハアッと息をもらして、バッタリ牀に倒れる。

 (全部読んでから後宮を追い出されたかった)

 後悔(?)先に立たず。
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