「今とっても幸せですの。ごめんあそばせ♡」 捨てられ者同士、溺れちゃうほど愛し合ってますのでお構いなく!

若松だんご

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20.シオンの恐怖

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 まったく。まったく! まったく!! まったく!!! まったく!!!!

 ドスドス。ガスガス。
 スカートで見えないけど、今のわたし、とんでもなく淑女らしくない歩き方。
 地面を踏み鳴らしながら。前傾姿勢の大股歩き。
 馬車を降りて、屋敷に戻って。出迎えてくれたスティヤさんの「おかえりなさいませ」にも返事できないぐらいの、ドスドス。

 「――ごめん、リューリア」

 そんなわたしの後ろ、ずっと着いてきてるしょぼくれシオン。
 ものすごく。ものすごく申し訳なさそうにうなだれてるけど。

 「怒ってる?」

 怒ってるに決まってるでしょ!
 こんな歩き方して、怒ってない人なんていないでしょ! 用足しで急いでるとかじゃないんだからね!
 イライラが止まらなくて、クルッと後ろをふり返る。

 「どうしてあんなところで、きょっ、挙式だなんて言い出したのよ!」

 今日の修道院訪問。
 わたしは、これまでのこと、実家との経緯を院長に話に行く。そのつもりでいた。
 けど、シオンは違った。
 これまでのことを話して、そこから結婚式の予約。修道院を式場として使いたいと依頼するつもりだったらしい。

 「リューリアは、僕と結婚したくない?」

 「そっ……!」

 そういうことを言ってるんじゃない!

 「僕は、結婚したいよ。本当は、あの場で式を挙げさせて欲しいと、お願いしたかったぐらいに」

 「シオン?」

 立ち止まったシオン。その思い詰めたような真剣な顔に、怒りが少しだけ緩む。

 「キミのお父上が来た時思ったんだ。僕がどれだけキミを愛していようと、想いが通じ合っていようと、ただの恋人では、なんの権限もない。あの時は、ギリギリ間に合ったけど、もしキミを攫われたとしても、僕はなにもできないんだって」

 「シオン……」

 あの時。
 シオンが帰ってきてくれなかったら、今頃わたしは王都で父様たちにいいように使われていたんだろう。
 セスティアンと婚約してた時と同じように、ひたすら、ひたすら働かされて、また捨てられる。下手したら、妹の代わりに身を差し出せ――ぐらいのこともあったかもしれない。
 考えると恐ろしい未来だけど、もしかしたらそれはシオンも同じだったのかもしれない。
 わたしを愛してると言ってくれたシオン。そのわたしを誰かに奪われたとしたら。奪われても、取り返せない立場だったとしたら。

 「心配でたまらないんだ。キミが僕の手から離れていかないかって。僕から、また――」
 「シオン」

 ベチン。

 うつむいたその頬を、両手で叩く。

 「わたしは、どこにも行かないわ」

 「リューリア……」

 「お父様は、アナタが撃退してくれた。やり方はちょっと驚いたけど。でもうれしかった」

 驚き見開かれた彼の青い目を真っ直ぐ見る。
 こんな時に場違いかもしれないけど。やっぱりキレイなシオンの瞳。

 「わたし、アナタが好きよ。アナタが嫌だって言っても、ずっとそばにいるわ」

 だって腹は立ったけど、でもこんなに愛しいと思ってるんだもの。
 愛しさが怒りに勝ってるんだもの。

 「リューリア……」

 もしかして。
 彼は、愛した人が離れていくことを、無自覚に恐れているのかもしれない。
 ふと、そう思った。
 幼い頃のわたしとの別れ。
 そして、愛そうとした奥様の出奔。
 それが、彼をこんなに臆病にさせているのかもしれない。

 (いいわ、それなら――)

 「ソニエ、ベン」

 近くにいた二人に命じる。

 「わたしの部屋、用意してくれる?」

 「はい」
 「はっ」

 二人が息を合わせて答えると、意味も理解してるのか、急ぎ足で回廊の先へと消えていった。

 「――リューリア、なにを?」

 意図を理解できてないのは、シオンだけ。
 キョトンとした目でこっちを見てくる。

 「いいから。ついていらっしゃい」
 
 彼の手を取り、二人の後を追うように歩き出す。
 ズカズカでもドカドカでもない歩み。シオンの手を掴みはしたけど、絶対彼の顔を見ない。
 だって。
 見たらわたし、恥ずかしさで憤死しそう。

          *

 「――これは?」

 「わたしの部屋よ」

 「いや、それはわかってるけど……」

 わたしの部屋。
 一足先に着いたソニエとベンが支度をしてくれている。
 ベンは、明るい昼の日差しをさけるため、厚手のカーテンを引いてくれている。
 ソニエは、寝台の最終確認。軽く叩いて枕を整えてくれている。

 「お嬢様」

 すべてを終えた二人が、わたしに無言の完了報告をする。

 「ご苦労さま。後は、わたしが呼ぶまで控えてて」

 「はい」

 「明日の朝まで。たとえ国王陛下であっても取り次ぎ無用よ。決して扉を開けないで」

 「はい。承知いたしました」

 頭をたれたまま、静かに去っていく二人。パタンとなるべく静かに閉じられた扉。
 
 「リューリアこれは……」

 薄暗い部屋には、わたしとシオンだけ。

 「するのよ」

 「する?」

 「わたしがどれだけアナタを愛してるのか。それを教えてあげるの」

 そうしたら、不安、消えるでしょ?
 説明しながら、ドレスのボタンを外していく。
 髪もほどいて、ファサッと軽く揺らす。

 「――って! リューリア、なにやってんの!」

 「なにって。まぐわう準備よ」

 知らないの? シオン。
 ドレスを脱ぎ、下着姿になって答える。

 「ほら、シオンも脱いで。あ、それとも着たまままぐわうほうがよかった?」

 世の中にはそういう性癖の人もいるって聞いたことあるけど。
 だとしたら、もう一回着直したほうがいいかしら。

 「そうじゃなくて、リューリア……」

 ハアッと、わざとらしいぐらい大げさにため息を漏らすシオン。

 「なんでまぐわうってなったら、自分で脱いでるのさ」

 「なんでって。まぐわいは、そういうものじゃないの?」

 「――は?」

 シオンが思いっきり変な声を出した。

 「男女がまぐわうのは、子を残すためと、快楽を得るため。そしてお互いを愛してるってことを確認するため――って聞いたけど。違うの?」

 「いや、それは……、そうなんだけど」

 「そして、まぐわうためには、準備が必要。服を脱ぐだけじゃなくて、男女ともにまぐわいやすいように支度をしなくちゃいけないんでしょ?」

 男の人は、その股間にある竿を強く硬くそびえ立たせて。
 女は、その竿を受け入れる場所を、トロトロに柔らかく潤わせて。
 でないと、子もできないし、快楽も得られない。

 「どこで習ったの、そんなの」

 「王宮だけど?」

 これでも一応王子妃(予定)だったからね。そういうことはちゃんと習ってるのよ。エッヘン。

 「だから、わたしが支度をしてる間に。ほら、シオンも脱いで準備して」

 男の人は女性より時間かからないかもしれないけど。

 「あ、それか、わたしが支度してあげなきゃいけない? シオンは、そういうのが好み?」

 世の中には、至れり尽くせりで女性に奉仕されてからまぐわうって男もいるっていうし。竿を立てるのも、気持ちよくするのも女の役目っていう――。

 「ちっ、違っ! リューリア! ぬっ、脱がせない、でっ!」

 彼のズボン、脱がせかかったらものすごく抵抗された。
 引っ張り上げる彼の手で。そして。

 ブルンッ。

 ズボンに引っかかってた竿が、わたしの力に負けて姿を現す。

 「うわっ、大き……」

 ビキビキに筋を浮かび上がらせたそれ。高々と天に向かって、ううん、お腹にあたりそうなぐらい反り返ってる。こんな大きいもの、よくズボンのなかに収まってたわね。

 ツン。ツンツン。
 
 指で押して硬さを確認。
 これなら、支度を手伝ってあげなくても大丈夫?
 先から、なにか溢れ始めてるし――って、これ、子種じゃない。
 触れれば触れるほど、トロトロ溢れてくるけど。

 (大変!)

 シオンの心配をしてる場合じゃない。わたしも支度しなくちゃ。
 えっと。下着を脱いで、あそこに触れて、いっぱい濡らして――と。

 「リューリア」

 「へあっ!?」

 グルンと回ったわたしの視界。遠ざかる彼の竿。ポスンと、柔らかくわたしを背中から包みこんでくれたもの。――寝台?

 「僕とまぐわってくれるの?」

 「へ、あ、うん……」

 続いて寝台に乗り上がってきたシオン。
 仰向けに転がったわたしに、覆いかぶさるように近づいてきたけど。

 (なんだろ。少し――怖い)

 いつものシオンのようで、シオンじゃないような。
 わたし、やり方間違っちゃった? それで怒ってる?

 「なら、僕の知ってる、僕の思うやり方でまぐわってもいい?」

 「う、うん……」

 いいよ。
 シオンが望むやり方があるのならそれで。
 王宮で、一応は習ったけど、それはあくまで基本のやり方で。男女の気分によって臨機応変にまぐわえばいいって、先生もおっしゃってたし。
 シオンの好きなやり方があるのなら、わたし、それを覚えるわ。
 わたしがまぐわいたいのは、子を作りたいからじゃなくて、シオンにわたしが愛してるってことを伝えたいからだから。
 愛してるからまぐわうの。愛してるから身を捧げるの。
 愛し合ったら。シオンの恐れは消える? シオンの不安は消えてなくなる? 安心してくれる?

 「愛してるよ、リューリア」

 言ってシオンがわたしに口づける。
 何度も。なんども。角度を変え、わたしの唇を吸い上げる。

 「ンッ、フッ、アッ……」

 わたしにのしかかり、口づけながら髪を乱すシオン。
 以前の想いが通じ合った時とは違うその口づけに、ジンっとわたしの体の奥が痺れるように疼いた。
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