「今とっても幸せですの。ごめんあそばせ♡」 捨てられ者同士、溺れちゃうほど愛し合ってますのでお構いなく!

若松だんご

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25.壮大な愛に包まれて

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 「――どうしたの、リューリア」

 王妃様と別れて、帰りの馬車に乗り込んで。
 何度もくり返して特免状を読み返していたから、不思議に思われたらしい。

 「うれしいの」

 「うれしい?」

 「うん。こんなふうに結婚を認めてもらえて。結婚を祝福されて……」

 王妃様、国王陛下のご厚情。
 すごく。すごくうれしい。
 
 「わたし、結婚するんだなあって、改めて実感してるの」

 父様たちには、残念ながら祝福されないけど。
 でも、ソニエとベンはおめでとうって言ってくれた。
 修道院長もよかったって言ってくれた。
 王妃様と国王陛下だって。こうして特免状を出してくれた。式には参列したいっておっしゃってくれた。

 「僕の愛だけでは、実感できてなかったの?」

 「シオン?」

 「結婚。こんなにいっぱい愛を伝えてるのに、足りなかった?」

 馬車のなか、隣に腰掛ける彼が、ズイッと身を乗り出してくる。

 「た、足りなくないんかないわよ! うん! うれしい!」

 馬車のなかは狭い。なぜかわたし、彼に隅に追い詰められた格好になってるんだけど。大好きな彼のはずなのに。なぜかわたし、身の危険みたいなのを感じてるんだけど?

 「ドレスとか用意してもらって! 式の支度をして! すごくうれしいし、幸せよ?」

 アセアセ。
 
 「でも、そんな紙切れ一つに負けちゃうんだ」

 「だから、そうじゃないってば!」

 変なところで嫉妬しない! 拗ねない!

 「院長様に祝福された時もそうだったけど! こうしてアナタとの愛を認めてもらえるのがうれしいの! そうじゃなかったら、こんなに喜んだりしないわよ!」

 「ほんとに?」

 「ほんとに」

 「よかった。それなら問題ないか」

 ホッとしたのか、ようやくシオンが身を戻す。
 
 「ねえ、シオン」

 「ん?」

 「アナタ、どうしてあそこに王妃様がいらっしゃること知ってたの?」

 背もたれに身を預けたシオンに尋ねる。
 そりゃあ、院長様が王妃様がいらしたことを、こちらに連絡をよこしたって可能性もあるけど。
 シオン、王妃様にお会いしても、驚きもしてなかったわ。そして、緊張も。

 「そりゃあ……、僕はお会いしたことあるからね、王妃様に」

 「お会い……したことあるの?」

 「うん。もちろん国王陛下にも」

 え? ちょっと待って! なんでシオンが陛下たちにお会いしたことあるの?
 貴族だって、そうそうお会いできる方たちじゃないのに!

 「言っただろ? 僕は、キミのために頑張ってたって」

 「言って、た。けど」

 ――わたしが将来王子妃になった時、扶けてあげられるだけの人物になれ。
 
 そうお祖母様から諭されたって。
 愛する人に想いをぶつけるだけが愛じゃない。心を交わし合うことはできなくても、愛する人を支えていく、それも愛だって。

 「それで、陛下たちにお会いしたの?」

 「そうだよ。陛下たちの領地と取引したり、融通したり。まあ、いろいろとさ。おかげで直接お話できるほどに感謝された」

 「ど、どれだけお金使ったの?」

 隣の、お祖母様の邸宅を一億リールで買い取ったシオン。その一億を「安い」って評価してたけど。

 「さあ? 覚えてないけど、取引をさせていただいたおかげで、僕の家も潤ったし。お互いさまだよ」

 あ、誤魔化した。
 これ、絶対、ものすごいお金動かしてたわね。
 お金もそうだけど、ユーフェン皇子と仲良くなったり、国王夫妻とも懇意になったり。とんでもない人だわ。

 (でも、そのすべての根本に、動機にわたしがいる――)

 わたしを扶けるために。
 わたしが好きだから。
 愛し合えなくても、愛しているから。

 「シオン」

 彼の首に腕を回し、自分から口づける。

 「愛してるわ、シオン」

 そこまで尽くそうとしてくれていた。そのことが、申し訳ないぐらいうれしくて。
 わたし、その愛に報いることできる? そこまでわたしを愛し続けてくれてた彼に。わたしから。

 「リューリア……」

 わたしの名を呼ぶ、彼の息すら呑み込むように、何度も口づける。
 特免状はうれしい。けど、それ以上に彼の愛がうれしい。
 王妃様はああおっしゃったけど、きっとこの特免状だって、シオンが頑張って取ってきてくれたものだろう。
 わたしがなんの不安もなく嫁げるように。わたしとの愛をみんなに認めてもらえるように。
 ねえ、シオン。
 この喜び、この幸せ。
 どう伝えたらいい?
 どう伝えたら、アナタの愛に応えられる?

 「――お帰りなさいませ、旦那様、奥様」

 馬車が止まる。
 開かれた扉の向こうには、スティヤさんを始め、屋敷で使われれいる人たち。馬車はいつの間にか、屋敷まで戻ってきていたらしい。

 恥ずかしい。

 口づけしてたこと、バレてないと思うけど。羞恥が頬を染める。

 「――スティヤ」

 って、え? ちょっと!

 「この先、誰も取り次ぐな。たとえ、国王陛下でも」

 って、ちょっと!

 わたしを横抱きにして、馬車を降りたシオン。そのまま大股で屋敷に入っていくけど。

 「では、失礼いたします」

 ズカズカシオンに、一人着いてきていたスティヤさん。わたしたちが寝室に入ると、穏やかに、なんでもないことのように扉を閉めた。
 カーテンも閉められていない、夕日になるにはまだ早い、明るい日差しに満ちた寝室。
 ――って、まさか。

 「リューリア、キミって、僕の忍耐力を試してる? あんなふうに口づけて」

 ふ、フギャッ?
 そ、そんなつもりは毛頭、髪の毛一本たりとも思っておりませんわよ?
 ポスっと寝台に下ろされたわたしの体。寝台は、寝室は馬車と違って広いのに。

 わたし、追い詰められ再び。

 キレイに結われたクラヴァットを性急に外すシオン。

 「抱き潰される覚悟、してよね」

 やっぱりいぃぃぃっ!

 「アッ、シオンッ!」

 噛みつくように、襲いかかってきたシオンの口づけ。
 馬車のなかではできないから。だから屋敷まで我慢した。

 「シオンッ、待っ……、アッ、アアッ!」

 クラヴァット以上に乱暴に、わたしのドレスを脱がせたシオン。破らなかっただけ、ヨシ?
 でも、その愛撫、気持ちいいけど、怖い! わたし、バカになる!
 這々の体で、身を守りつつ逃げようとうつ伏せになるけど。

 「ダメだよ」

 腰を掴まれ、引きずり戻され、四つん這いにされて。

 ズブリ。

 「アアッ!」

 容赦なく後ろから刺し貫かれた。
 貫くだけじゃない。いつもとは違う角度で、わたしのいいところをズチュズチュとかき乱していく。

 「ウッ、アッ、ン、ンンッ!」

 敷布を握りしめ、必死にその気持ちよさに耐えるけど。

 「これ、ダメッ、ダメェッ……!」

 迂闊に口づけること。彼に我慢させること。
 それがどれほどとんでもないことになるか。この日、イヤってほどイかされ、寝台から起きられないほど、足腰立たないようにされて。イヤってほど思い知らされた。
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