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その28 扉の前にて ルース視点
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真っ暗な闇の中でうずくまる僕の頭上から声がする。
『…….ぅ』
小さな声だ。聞き取れない。
しかし間違えない。絶対。彼女の声を僕が間違えるわけない。
「シャーリー!!」
かすかに聞こえた。シャーリーの声だ。
母上と姉様が同時に僕の方を向いていた。
「シャーリー!どこ?どこにいるの?」
『…ルー…す…ス…』
「シャーリー!答えて!?」
姉様が駆け寄って僕の肩を大きく揺らす。
「ルース!!もしかしてあんたシャーリーに守りの魔法をかけている?それもザイン家の赤の守りの魔法を!!」
ザイン家の赤の守りの魔法はまだ僕には使いこなせない。
難しいんだ。だから未完成なんだ。
普通の守りの魔法なら簡単にかけられるのにな。
しかしザイン家の赤の守りの魔法はかなりの魔力が必要になる。
王家の闇として動く以上、当然そのパートナーにも危険がおよぶ場合も考えられるから常に魔力を少しだけ相手に流しておかなければならない。
魔力的、精神的に負担になる。
だから18歳を超えた後、結婚した相手にしかかけられない。
僕は決まりを破っていた。怒られて、あきられて当然だ。
僕は姉様の問いに頷くしかなかった。
「ルース…どうして…あの魔法はあなたにはまだ使いこなせないはず。」
母上が少し悲しそうな顔をして言った。
ザイン家は代々飛び抜けて魔力が高い。
養子の僕にはザイン家本来の強い魔力はない。
それでも人より少し強い魔力で何とかできた。
でも、赤の魔法は難しい。
特に守りの魔法は難しい魔法のトップ10に入るくらいだ。
多分無理なんだ。
僕にザイン家の赤の魔法を使いこなすのは無理なんだ。
それでもこの家がよかった。この家が好きだった。
だから僕はこの家の子だと思いたかった。
更に
「シャーリーが僕のものだって、もうシャーリーは僕のものなんだって思いたかった…」
「愚弟!よくやった!」
「は?」
母上と姉様からとにかく父上の書斎に来るように言われた。
慌てて階段を降りてリビングに行った。リビングの奥に父上の仕事用の書斎がある。
階段を降りながら、廊下を走りながら考えていた。
ルピアがどうして……リンデトレスって言ってた。
彼らは青の魔法を使う。
ザインの赤の魔法と相反する青の魔法。
赤と青、大昔ザイン家の兄と弟に分けられた力だったはずだ。
二つの力で王家を支えていた。
青の魔法を持つ弟が氷の魔族の国リンデトレスの王女と結婚した。
しかしその国は内乱で滅んだ。
弟、その子孫の行方はわからなかった。
青の魔法は繋いでいたのか…。
ザインの赤の魔法とリンデトレスの青の魔法は元は同じ。しかし相反する魔法だ。
赤の魔法で壊されたルピアの精神を青の魔法が直してしまったんだ。
赤、青の魔法で壊れたものをお互い元に戻すことのできる魔法もある。しかしかなり難度は高い。うちでは兄様でなければ使えない。そんな魔法を使える人がいたなんて…。
殺しておけばよかった。情なんてかけなきゃよかった。僕の心が弱いから。
僕のせいだ……。
『ルース!大丈夫か?』
はっと我にかえる。
父上が魔法石から話しかける。
母上と姉様は魔法石の前にいる。
僕は開けっぱなしの扉の前に立っていた。
『ルース、しっかりしろ!お前ならシャーリーを探せるはずだ。何の為に彼女に赤の守りの魔法をかけているのだ!神経を集中させろ。シャーリーの声を聞いたんだろ?意識が探せるはずだ。しかしお前はまだ15歳だ。この魔法はかなり難しいぞ。やれるか?』
そうだ。やれるべきことをやらなきゃいけない。とにかくシャーリーを探さないといけない。
「やる!」
ちなみにこの守りの魔法は僕はシャーリーの声を聞けるがどうもシャーリーには聞こえないようだ。
まあ、そういうものなんだと父上は説明してくれた。
まあ、父上や母上のようにお互いが赤の魔法を使い、お互いが赤の守りの魔法をかければ可能らしい。
父上は魔法石の向こうからみんなに指示を出す。とにかくやるべきことは1つ、シャーリーを探し出すこと。
『ルース、間違えないで欲しい。お前を信頼していないから騎士団長の息子から聞いた情報をお前に教えなかったんじゃない。
私達はお前が大事なんだ。シャーリーの前で年相応に笑うお前を見ていると私達は嬉しいんだ。常にお前は私達から一歩引いている。笑っていつもどこかよそよそしく思えた。だからシャーリーと一緒にいる時のお前を…お前の無邪気な笑顔を守りたかっただけなんだよ。』
「父上…」
隣から大きな手で頭をワシャワシャされた。
「兄様!いつの間に!」
「ルース、すまない。私達だけで簡単に片付けられると思っていたが、少し手間取っている内にシャーリーを巻き込んでしまった。」
『カール、終わったのか?』
「はい、遅くなり申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。」
魔法石の向こうの父上は安心したように息を吐いた。
『タチヒア子供達を頼んだ。陛下に許可をもらったらすぐに戻る。ひとまずルース!何とかシャーリーを探せ。彼女に意識が有ればわずかでもわかるはずだ。なるべく早くだ!シャーリーの意識が無くなればもう探せなくなる。』
「わかってる。今やってる!遠くはなさそうだ。」
『ルース、とにかく一人では行くなよ。』
「ありがとう。父上…」
僕は一人じゃない…。ありがとう。
僕はあなたの息子でよかったと思います。
神経を集中させる。魔力を体の中で湧き上がらせる。
お願いだシャーリー…無事でいて!
かすかにシャーリーの意識を感じる。
さっきより弱くなっている。
必ず見つける。必ず助ける。
だから頑張って。絶対に君を離さない。
まだ僕は君から言葉を貰ってない。
『…….ぅ』
小さな声だ。聞き取れない。
しかし間違えない。絶対。彼女の声を僕が間違えるわけない。
「シャーリー!!」
かすかに聞こえた。シャーリーの声だ。
母上と姉様が同時に僕の方を向いていた。
「シャーリー!どこ?どこにいるの?」
『…ルー…す…ス…』
「シャーリー!答えて!?」
姉様が駆け寄って僕の肩を大きく揺らす。
「ルース!!もしかしてあんたシャーリーに守りの魔法をかけている?それもザイン家の赤の守りの魔法を!!」
ザイン家の赤の守りの魔法はまだ僕には使いこなせない。
難しいんだ。だから未完成なんだ。
普通の守りの魔法なら簡単にかけられるのにな。
しかしザイン家の赤の守りの魔法はかなりの魔力が必要になる。
王家の闇として動く以上、当然そのパートナーにも危険がおよぶ場合も考えられるから常に魔力を少しだけ相手に流しておかなければならない。
魔力的、精神的に負担になる。
だから18歳を超えた後、結婚した相手にしかかけられない。
僕は決まりを破っていた。怒られて、あきられて当然だ。
僕は姉様の問いに頷くしかなかった。
「ルース…どうして…あの魔法はあなたにはまだ使いこなせないはず。」
母上が少し悲しそうな顔をして言った。
ザイン家は代々飛び抜けて魔力が高い。
養子の僕にはザイン家本来の強い魔力はない。
それでも人より少し強い魔力で何とかできた。
でも、赤の魔法は難しい。
特に守りの魔法は難しい魔法のトップ10に入るくらいだ。
多分無理なんだ。
僕にザイン家の赤の魔法を使いこなすのは無理なんだ。
それでもこの家がよかった。この家が好きだった。
だから僕はこの家の子だと思いたかった。
更に
「シャーリーが僕のものだって、もうシャーリーは僕のものなんだって思いたかった…」
「愚弟!よくやった!」
「は?」
母上と姉様からとにかく父上の書斎に来るように言われた。
慌てて階段を降りてリビングに行った。リビングの奥に父上の仕事用の書斎がある。
階段を降りながら、廊下を走りながら考えていた。
ルピアがどうして……リンデトレスって言ってた。
彼らは青の魔法を使う。
ザインの赤の魔法と相反する青の魔法。
赤と青、大昔ザイン家の兄と弟に分けられた力だったはずだ。
二つの力で王家を支えていた。
青の魔法を持つ弟が氷の魔族の国リンデトレスの王女と結婚した。
しかしその国は内乱で滅んだ。
弟、その子孫の行方はわからなかった。
青の魔法は繋いでいたのか…。
ザインの赤の魔法とリンデトレスの青の魔法は元は同じ。しかし相反する魔法だ。
赤の魔法で壊されたルピアの精神を青の魔法が直してしまったんだ。
赤、青の魔法で壊れたものをお互い元に戻すことのできる魔法もある。しかしかなり難度は高い。うちでは兄様でなければ使えない。そんな魔法を使える人がいたなんて…。
殺しておけばよかった。情なんてかけなきゃよかった。僕の心が弱いから。
僕のせいだ……。
『ルース!大丈夫か?』
はっと我にかえる。
父上が魔法石から話しかける。
母上と姉様は魔法石の前にいる。
僕は開けっぱなしの扉の前に立っていた。
『ルース、しっかりしろ!お前ならシャーリーを探せるはずだ。何の為に彼女に赤の守りの魔法をかけているのだ!神経を集中させろ。シャーリーの声を聞いたんだろ?意識が探せるはずだ。しかしお前はまだ15歳だ。この魔法はかなり難しいぞ。やれるか?』
そうだ。やれるべきことをやらなきゃいけない。とにかくシャーリーを探さないといけない。
「やる!」
ちなみにこの守りの魔法は僕はシャーリーの声を聞けるがどうもシャーリーには聞こえないようだ。
まあ、そういうものなんだと父上は説明してくれた。
まあ、父上や母上のようにお互いが赤の魔法を使い、お互いが赤の守りの魔法をかければ可能らしい。
父上は魔法石の向こうからみんなに指示を出す。とにかくやるべきことは1つ、シャーリーを探し出すこと。
『ルース、間違えないで欲しい。お前を信頼していないから騎士団長の息子から聞いた情報をお前に教えなかったんじゃない。
私達はお前が大事なんだ。シャーリーの前で年相応に笑うお前を見ていると私達は嬉しいんだ。常にお前は私達から一歩引いている。笑っていつもどこかよそよそしく思えた。だからシャーリーと一緒にいる時のお前を…お前の無邪気な笑顔を守りたかっただけなんだよ。』
「父上…」
隣から大きな手で頭をワシャワシャされた。
「兄様!いつの間に!」
「ルース、すまない。私達だけで簡単に片付けられると思っていたが、少し手間取っている内にシャーリーを巻き込んでしまった。」
『カール、終わったのか?』
「はい、遅くなり申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。」
魔法石の向こうの父上は安心したように息を吐いた。
『タチヒア子供達を頼んだ。陛下に許可をもらったらすぐに戻る。ひとまずルース!何とかシャーリーを探せ。彼女に意識が有ればわずかでもわかるはずだ。なるべく早くだ!シャーリーの意識が無くなればもう探せなくなる。』
「わかってる。今やってる!遠くはなさそうだ。」
『ルース、とにかく一人では行くなよ。』
「ありがとう。父上…」
僕は一人じゃない…。ありがとう。
僕はあなたの息子でよかったと思います。
神経を集中させる。魔力を体の中で湧き上がらせる。
お願いだシャーリー…無事でいて!
かすかにシャーリーの意識を感じる。
さっきより弱くなっている。
必ず見つける。必ず助ける。
だから頑張って。絶対に君を離さない。
まだ僕は君から言葉を貰ってない。
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