4番目の許婚候補

富樫 聖夜

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番外編・小話集

番外編 交差する想い Ⅰ

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前回消したR18シーンです。
書籍4巻P230からの続きになっております。旧94話。
(書籍版の方とは若干相違がありますがその辺りはあらかじめご了承下さい)
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 気づいたらワンピースはすでに引きはがされて、キャミソールとショーツだけの姿になっていた。けれど恥ずかしがる間もなかった。
 彰人さんの唇が肌を滑る。
 ベールピンクのキャミソールの胸元を押し下げられて、少しずつ露わになっていく素肌にそれこそ一センチ刻みでキスをされていく。
「……んっ……」
 もう唇はふさがれていないのに、私の口からは息をつめたような呻きしか出てこなかった。
 油断すると変な声がでてしまうので、一生懸命押し殺している結果だ。けれど、どうしても籠ったような声が出てしまう。
 本当は手で口を塞いでしまい。こんな変な自分の声なんて聞きたくないし、彰人さんにも聞かせたくない。
 けれど、
「声、我慢しなくていいからね」
 なんて言いながら、気づいたら手を頭上でひとくくりに抑えられていてそれもかなわなかった。
 本当に、腹が立つくらい手慣れていると思う。
 だって、片手で難なく私の手を押さえながら、もう片方の手で器用にキャミソールを下げながらそこにキスしているんだから。 
「ふぁ……!」
 ブラジャーからのぞく胸の谷間に唇が押し付けられる。その温かい濡れた感触と、胸に触れる柔らかな髪の毛の感触に肌が粟立った。
 前に彰人さんの部屋の玄関で触れられた時のことが脳裏に蘇る。
 約束通りあの時以来、彰人さんがこんな風に触ったことは一度もなかった。せいぜいが胸にキスマークをつけるくらい。
 だから私もあの直後はすごくビクビクしていたけど、いつしかその記憶も薄れて、日常に埋もれていった。
 けれど、私の身体はその時の記憶も反応も忘れてなかったみたい。こうして素肌に触れられるだけで、全身があの時をなぞるように熱くなっていく。
 お腹の奥がズキズキ痛むように疼き出し、ブラの中で胸の先端が固く張りつめていく。
 まるでついさっきあの時のように触れられたみたいに。あるいは彰人さんに触れられるのを待っているかのように。
 私はそんな自分の反応に恥ずかしくて居たたまれなくなった。
 だって、あの時のようにまだ直接触られてもいないのに。なのに身体が勝手に覚えているその先を期待して反応してしまうだなんて。
 ……本当に私の身体はどうしてしまったのだろう? いつの間にそんなことになってしまっていたのだろう。
 けれどその身体の反応も、彰人さんの行為も待ってはくれなかった。
「……んっ……」
 胸のふくらみを覆うブラの淵をなぞるように舌が這い、そのざらりとした感触に敏感になった肌がちりちりと疼いた。
 両足の付け根がじわりと潤っていく。
 お腹の奥がむずむずして、じっとしていられなくて足を動かしたら、目ざとく気づいた彰人がさんが私の肌の上でふっと笑った。
「感じてる? あの時のことを思い出した?」
 かぁと顔に熱が集中する。
 彰人さんの言う「あの時」が何を意味するのは明白だ。だってあの時以来こんな風には触れられていないのだから。
「違……。そ、そんなの、もう覚えてませんっ」」
 私は思わず首を横に振って言っていた。
 自分がそんなに反応しているって知られたくなかった。
 だって……たった一回だけの触れ合いで、しかもあれからだいぶ時間が経っているのに、この自分の反応は異常だと思ったから。
 けれど……どうやらこれはマズイ返答だったらしい。
「ふーん」
 私の胸の谷間でそう呟く彰人さんの口調に、どことなく意地悪そうな響きがあった。
 不意に胸にチクリとした痛みを感じて慌てて見下ろす。
 彰人さんが鎖骨のほんの下の所に強く吸い付いていた。いつもの場所に。すでにうっすらと赤くなっていた彰人さん曰く「彼の印」をつけた場所に。
 何度も上書きされた印に新しい朱を散らすと、彰人さんは顔をあげ、笑みを浮かべて言った。
「じゃあ、思い出させてあげよう」
 そして、いきなりブラ越しにその頂をきゅっと摘む。
「ひゃ……!」 
 ブラジャーという決して薄くはない生地越しだったとはいえ、疼き出していたそこに与えられた刺激は強烈で、私の喉奥で悲鳴が上がった。

「思い出した? あの時、俺はこうしなかったかい?」
 そう言って、今度はブラのカップを押し下げて、戒めから解放された先端を口に含む。
「ああっ……!」
 今しがたの刺激でジンジンと熱を持って疼いていたそこに歯を立てられて、私の背中に電流が走る。
 ビクンと腰が跳ねた。
 優しく歯で甘噛みされた後、更にしこったそこを今度はざらざらとした舌にねっとりと舐めあげられ、唇で吸われる。そうして片方の胸の頂が舌と唇で嬲られる一方で、ブラを押し下げた手はもう片方の無防備な膨らみを捕えて掬うように揉みしだく。
「ふぁ、ん、や、あ、んんっ」
 両方の胸に与えられる刺激に私の喉からは喘ぎ声が漏れた。 
 ……それは、あの時の再現だった。玄関で立ったままとベッドに横たわっているという違いはあるものの、されていることはあの時とまったく同じ。
 手と口と舌によって与えられる甘い責め苦に、自然と丸まった足の爪先がシーツをかく。
「ねぇ、これでも思い出さない?」
 頂を口に含みながら、彰人さんがからかうように言った。何だか妙に意地悪だ。
「そ、そこで、しゃべら、ないでっ」
 彰人さんが口を動かすたびに唇と歯が固く張りつめている頂に当たって刺激され、きゅんきゅんと下腹部に痛みにも似たものが走る。
 触られているのは胸なのに、疼くのはお腹の奥だなんて変。だけど、止まらない。
 お腹から広がっていく甘い痺れに喘ぎながら私は泣き声を上げた。
「お、思い出した、から。だからっ」 
 言わないと延々に責められると思った。だけど、彰人さんは顔をあげて私を見ると、にっこり笑う。
「じゃあ、もっと感じて。おかしくなるくらいに、俺のことしか考えられなくなるくらいに」
 ……そうだった。この人、ドSだったよ!
 この期に及んで思い出せないだなんて言った私を無罪放免にするわけがなかった。

 胸をつかんで弄っていた手が離れて下に向かう。
 その手がどこに向かうのか明らかだ。だって、前の時もそうだったから。
 けれど前とは違うのは、あの時はスカートがあったけど、今はショーツ一枚の限りなく無防備な姿を晒しているということだ。
  私はハッとして両足を閉じた。
 身を委ねるって決めたのに、なんでこんな抵抗しているのかと自分でも思う。
 けれど、未知のことに身体が怯えてどうしても反射的に避けようとしてしまう。
 ……ううん、正確に言うなら、その片鱗を知っているからこそ、自分の反応が怖くなってしまうんだ。
 だって、今も、ほら……。
「……ふぁっ……」
 閉じられたそこに指が到達して、ショーツ越しにやさしく撫でられただけで、変な声がでてしまう。喘ぐような籠ったような、それでいてどこか悦を含んだ声が。
 自分の声じゃないみたい。けれど、それは紛れもなく私の口から零れていた。
 彰人さんはクロッチに続く狭い部分をやんわり指で撫でながら囁く。
「愛美、足を開いて」
 それは優しくも甘い口調だった。けれど、明らかに命令の意を含んだもので……。
 私は撫でられたところから湧き上がるにゾワゾワした疼きに息を飲みながらも、首をふるふると振った。
 何てハードル高いことを求めるんだろう。
 足を開くだなんて、その……自ら彰人さんの愛撫を求めるようなものじゃないか!
 それに足を開いたらそこが私から染み出したもので濡れているって、彰人さんにもきっと分かってしまう。
 できれば永遠に閉じていたいくらいだ!
「困ったね、強引にはしたくないのに」
 そう呟く彰人さんの声は笑いを含んでいて、ちっとも困ったようには聞こえない。
 ……何だか嫌な予感がした。
「愛美、膝を開いて」
 もう一度促しながら、彰人さんはカリッと胸の先端に歯を立てる。
「はぅっ」
 背中にぴりぴりと電流が走って、私は頤を逸らした。閉じた膝がガクガクと震えだす。
 だから多分、ほんのちょっと力を入れれば簡単に足を開かせることができるに違いない。
 けれど、彰人さんはあくまで私が自ら足を開くのを待っている。
「愛美」
 今度は胸の下側の膨らみの部分を舌で舐め上げながら、彰人さんは私の名前を紡ぐ。口にしているのは名前だけ。けれど促していることは、望んでいることは明らかで……。
 思いも寄らず胸の下側も妙に感じてしまう場所だったみたいで、胸の頂を愛撫されたほどの刺激ではないものの、ざわざわとした疼きがさざ波のように全身を巡った。
「愛美」
「……ふぁ」
 足の指先にまでくすぐったいようなしびれが広がり、力が抜けると共に私は――屈服した。
 震える足をほんの少しだけ広げる。広げたといっても拳一個分だけ。でもそれで彰人さんには分かったみたいで、胸から顔をあげると淫靡に笑った。
「いい子だ」

 ――次の瞬間、私の腰が跳ねあがった。

「ひっ……!」
 喉の奥でくぐもった悲鳴が漏れる。
 ソコに触れるだろうということは分かっていた。だけど、それはショーツ越しだと信じて疑わなかった。
 けれど、彰人さんはショーツの中にサッと手をもぐりこませ、直接触ったのだ。あそこを!
「や、いやぁ!」
 密かに蜜をたたえたその場所を彰人さんの指が撫でる。物心ついた時から誰にも触らせたことのない、自分だって身体を洗う時くらいにか触れないその密やかな場所を。
「や、あ、あ、あぁぁ!」
 ショーツ越しに触れられるのと、直接触れられるのでは全く違っていた。
 手が蠢くたびに背筋に電流みたいなのが走って腰がぴくぴく跳ねる。まるで陸に打ち上げられた魚みたいに。
 腰をずりあげ避けようとしても、元々手を頭上で括られて固定されてて、逃れることもかなわず、私は自分の秘部を這うその指を受け入れるしかなかった。
「んっ、あ、んん、ん、ふぁ……」
 抑えても抑えても声が漏れた。
 蜜を纏った指が探るように花弁をなぞり、蜜口を這う。
 ぬるぬるとしたその感触に、それが自分の身体から溢れたものだと思うとたまらなく恥ずかしい。
 それなのに、身体は敏感に反応してしまう。
 絶え間なく背筋から震えが駆けあがる。足の先が丸まって、何度もシーツをかいた。
「や、いや……」
 慣れない感覚に目に涙がにじんだ。
 そんな私の顔に彰人さんはやさしくキスを落とす。額、瞼、頬、そして唇に。
「愛美、大丈夫、怯えないで」
 でもそう言いながらも私を秘部を探る手は止まることはない。「逃してあげられない」という宣言通りに止めるつもりはないのだ。
「ふ、う……」
 怯えさせているのは彰人さんなのに。慰めて大丈夫だと言いながら、一方では私を蹂躙している。
 その矛盾に涙が零れそうになる。
 逃げるつもりなんかない。つい避けちゃうけど、それは初めての経験からくる本能的なもので、彰人さんが嫌だと言うわけじゃない。ただほんの少し慣れる時間が欲しいだけなのに。
 ……そう言ってしまおうか。もう少しゆっくり進んで欲しいって。
 彰人さんなら、言えばきっと……。
 けれど見上げた私の涙で滲んだ目に映ったのは、くすぶるような目で私を見下ろす彰人さんだった。
 うっすらと上気したその顔は男の色気に溢れていて、こんな状況なのに一瞬見とれそうになる。
 でも、それより何より私が気になったのは、その目に見え隠れする飢えたような眼差しだった。
 今にも襲いかかってきそうな、熱のこもった……。
 宥めるように優しいキスをしながら、微笑みながら、ずっとそんな目で私を見ているのだ。

 ……思えば時間はずっと与えられていたように思う。
 付き合い始めは強引でも、ずっと彰人さんは私のペースに合わせてくれていた。
 学生のお付き合いじゃないんだもの、すぐにも身体の関係に至ってもおかしくない状況なのに、戸惑って気持ちが固まらない私に合わせてずっと自分を抑えてくれていたのだ。
 今だってそう。もっと強引にやろうと思えばいくらでもできる。
 ……ううん、私が戸惑いを感じさせる暇などないくらいに翻弄することだってできただろう。
 でもこんな時でも彰人さんは初めての私に気遣って自分の欲望を押さえてくれている。
 それなのに私は、自分の反応が怖いって理由で……。
 ダメだな、私、委ねるって決めたのは自分なのに。
 私は喘ぎながら彰人さんに言った。
 時間が欲しいというためじゃない。ただ、肌を重ねるのが嫌だとか、彰人さんが嫌だから抵抗してるんじゃないってことを伝えなきゃって思ったから。
「お、怯えているのは、自分の、反応、なんです。だ、だって、彰人さんに触れられると、変な声、出ちゃうし、身体は変になるし、それに、何か自分が自分じゃなくなっていく気が、して……」
「愛美」
 秘部を撫でる彰人さんの手が止まった。その顔に浮かんでいるのは……苦笑?
「まったく、君はどこまでも俺を煽ってくれるね。俺に触れられるとおかしくなるだなんて、最高の殺し文句じゃないか?」
「え? え?」
 私は目を丸くさせた。
 煽る? 煽ったつもりは一ミリグラムもありませんけど!?
「それと、経験のない君には分からないだろうけど、それは別におかしいことじゃない。欲望に駆られて自分をコントロールするのが難しいのは男も変わらないのだから。怯える必要はないんだ」
 そう言って私の唇に触れるくらいの軽いキスを落とす。
 私が特別おかしいわけじゃなくて、みんなこんな風になるもの?
 そう安堵しかけたのに、顔を上げた彰人さんはにやりと笑ってその雰囲気を一転させた。
 ぶわっと一気に警戒モードのスイッチが入る。
「それに、こっちは最初からそのつもりで触っているんだから当然だ。言っただろう? 俺のことしか考えられなくなるくらい、感じさせてあげるって」
「え?」
「愛美。よく覚えておきなさい。男というのは女が自分の手で快楽に溺れるのを見て悦ぶ生き物だってね」
 いや、そんな艶やかな笑みを浮かべて言われても困りますから!
 ものすごくマズイ流れになっているのを感じて、私はあわあわと視線を泳がせながら身をよじった。
 けれど、それを反抗と取った彰人さんが淫靡に笑う。

「逃がさないよ。煽った責任、取ってもらうからね?」
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