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番外編・小話集
番外編 交差する想い Ⅲ
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旧96話
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気がつくと、いつの間にか指が三本に増やされていた。
きっと私が口の中を這い回る舌や、突起を弄ぶ手に気を取られている間だと思う。
男の太い指を三本も受け入れたそこはいっぱいいっぱいで、とても窮屈だというのが自分でもわかる。
けれどそれなのに、私の中はお腹の奥が疼くたびに、蜜を零し、広げるように抜き差しを繰り返すその指を無意識のうちに締めつけようとする。
「……んぅ……ん、ん……」
うまく息ができなくて苦しかった。どこもかしこもいっぱいで、窮屈で。息が詰まる。
……なのに、苦しさの片隅に、どういうわけか甘く陶然となるような何が確かにあって、それがどんどん広がっていくのが分かった。
苦しいのに、気持ちいい。
「……んっ、あ……ふ……」
無意識のうちに彰人さんのシャツを握り締める手に力が入る。
その反対に、下半身は痺れ、ただただ彰人さんの手の動きに合わせて勝手に反応してしまう。
私の身体なのに、私の自由にはならない。彰人さんの思うままだ。
彼は私のどこをどう触れればどういう反応を示すのか、この短い触れあいの中であっという間に習得して、容赦なくそれを私に振るう。
さっきまではそれが怖かったはずなのに、今はもう何も考えられない。
私の中で彰人さんと、彼から与えられる感覚以外全部抜け落ちていった。
お腹の奥がぎゅうっと引き絞られていくような気がした。
彰人さんの手がうごめくたびに体がビクンと跳ね、そこから全身に疼きがさざなみのように広がっていく。
そして、その波の向こうで何かがやってこようとしていた。
「……ふぅ……んうっ……」
声を漏らし、身体をぶるっと震わせると、それに目ざとく気づいた彰人さんがようやくキスを中断して顔を上げた。
「イキそう? 中がヒクヒクしてるよ」
そう言いながら、空気を求めて涙目で喘ぐ私の中を浅くかき混ぜる。
「……んんっ、んっ」
のけぞった私の下半身でぐじゅっと湿った音がいっそう大きくなった。
ギリギリと私の中でますます何かが引き絞られていって、背筋を駆け上がっていく。
「いいよ、イッて?」
私の頭の横に片手をついて体重を支え、もう片方の手を動かして、その手に反応する私を見下ろしながら、彰人さんが嫣然と笑った。
なんて意地悪なんだろう。そう抗議したかった。でも私の口は喘ぐだけで言葉にはならなかった。
私の蜜にまぶされ濡れた親指が、私の敏感な花芯をぐりっと撫でさする。
それは今までの触れ方よりも強かったように思う。
それなのに私の身体はそれを快感として拾い上げ、脳髄に伝えてくる。
「……ふっ、あ、ああっ……!」
ぴくぴくと足が震えて、私の喉から勝手に甘い声が漏れた。
もうキスされていないのに、息が苦しい。なのにその息苦しさの合間に、勝手に喉から嬌声が漏れていく。
私の中で急速に更に何かがせり上がってきていた。
「……や、何か……変……」
喘ぎながらようやくそう口にすると、彰人さんが私の額にチュッとキスをして言った。
「大丈夫。変じゃないから。でも、もし怖いなら、俺の名前を呼ぶといい」
「……名前……? あ、あき、ひと、さん……?」
「そう。イクとき、俺に縋って、俺の事だけ見てて、俺の名前呼んで?」
平素だったら「何ですか、それ? どこの俺様ですか?」って突っ込み入れていたと思う。
だけどこの時の私は本当に何も考えられず、目の前で私という楽器を奏でている彰人さんが全てで。
「彰、人さん……」
「そう、それでいい」
……その言葉に逆らうことなんてできなかった。
胎内に入れた指が感じる所を掠める。と同時に親指がぐりぐりと強めにその蕾を押しつぶす。
その直後、脳天から背中、足先にまで一気にビリビリと電流が駆け抜けた。
「や! あ、ああっ、ん、……あ、ああああ……!」
シャツに縋った手にぐっと力が入り、その次の瞬間、私の中でその堰が一気に崩壊した。
「あ、彰人、さん……! 彰人さん……!」
私は言われた通りに彰人さんの名前を呼びながら、その白い波にさらわれていった。
彰人さんのシャツを掴んでいた手がシーツに落ちる。
ただ横になっていただけなのに、全力疾走したみたいに息が上がっていた。
頭も中も真っ白で、手も足もまったく力が入らなくて、こんにゃくみたいにフニャフニャだ。
だけど、ズキズキと疼くあそこの感覚だけはやけに敏感で、彰人さんの指が抜けていくその感触だけで声が漏れる。
「……んっ……」
力が入らないはずの内股がびくびくと震えた。
「可愛いね、本当に君は」
どこか嬉しさを含んだ声が上から降ってくる。
涙でにじんだ目を向けると、頬を緩めた彰人さんが私を見下ろしていて、目が合うと顔を寄せ頬に唇を押し当ててきた。
けれど触れるだけですぐに起き上がってしまう。
「……あ……」
ずっと上にあった重みと素肌にぬくもりを与えてくれていた体温が私の上からなくなった。
ぼうっとしながらも、私はそれがさびしいと思う。けれどすぐにその思いは霧散する。
なぜなら、私から身を起こした彰人さんがシャツを脱ぎ始めたからだ。
衣擦れの音に気づいてそっちに目を向けた私は、ベッド脇で露わになっていく裸体に思わず息を飲んだ。
それは適度に筋肉のついた、均整のとれたとても美しい肉体だった。
アスリートのようにガッチリした筋肉ではないけれど、スポーツとか何かをやって鍛えているのが一目で分かる。
この身体がグラビアを飾ったら、きっと目が肥えた女性たちですら足を止めて思わず見入ってしまうに違いない。
文句のつけようもないその裸体に思わず見とれていると、それに気づいた彰人さんがシャツを脱ぎすて床に脱ぎ捨てながら笑みを浮かべた。
そのとたん、自分のしてることに気づいて恥ずかしくなり、私はかぁと顔に血をのぼらせて顔をそむける。
クスクス笑う声が響いた。
「見ていていいのに。それどころか触ってくれても一向に構わないよ」
「……え、遠慮します!」
私は顔を背けたまま答えた。いくら覚悟を決めたとはいえ、裸体を触るほど開き直れるわけもない。見ているのだって恥ずかしいのに……。
いや、見たくないと言ったら嘘になるけど!
ただこんな間近じゃなくて心臓に負担かけない距離で観賞したいかなと……あああ、私こんな時に何考えてるの?
などと一人悶えていると、ガチガチという金属音が聞こえてきてハッとした。
次いで、衣擦れの音がして……。
顔を背けているから私からは何も見えない。けれど、その音が暗示していることは明らかだ。
私の身体がふるっと震えた。もちろん寒かったからじゃない。未知の事への不安と……期待で。
ギシッとベッドが軋み、男の重みで少しベッドの表面が傾ぐ。
脱ぎ終えた彰人さんが戻ってきたのだろう。見えないのに、力を失くし開いたままの足の間に彰人さんが再び身体を落ち着けたのが何となく気配で分かった。
ごくりと喉が鳴る。
肌が触れ合ったわけでも体温を感じたわけでもないのに、全身で彰人さんの存在と私を見下ろす視線を感じて、全身の皮膚がチリチリと疼いた。
「愛美」
「ひゃっ」
呼びかけられるのと同時に両足の膝を掬い上げられて、私は変な声を漏らす。
そのまま膝を持ち上げられて、お尻がシーツから浮き上がるのを感じて思わず彰人さんの方に顔を向けた私はすぐに後悔した。
だって、持ち上がって空に浮いた自分の両足と、その間に彰人さんが見えるって構図だよ?
それだけでも狼狽える理由としては十分なのに、今度は持ち上がった太ももの下に彰人さんの膝を入れられ、そのままの姿勢で固定された。
取らされた恥ずかしい姿勢に狼狽えるどころか今度は悲鳴を上げたくなった。
例えるならひっくり返ったカエル、だ。
ううん、もしくはおしめを替える赤ん坊の姿?
でもどっちでもいい。とにかく、普通生活するにはあり得ない姿勢で、しかも、空で両足開いて彰人さんの目前にぱっくり割れた秘部をさらしている状態なのだ。
恥ずかしさのあまりに目の前がクラクラしてきた。
息があがっているとか、足を持ち上げられたせいでお腹がちょっと圧迫されて苦しいとか、そんな物理的な理由だけじゃない。絶対違う。
「や、嫌です! こんな、格好っ……!」
首を横に振りながらぶわっと目に涙がにじむ。けれどそんな私に彰人さんは言った。
「ごめんね。でも、この姿勢と角度が多分一番楽だから……」
ごめんね、と言いつつ、ちっともすまない口調じゃない。
彰人さんは、私の膝から手を離して、片方は私の頭の横に置いて自分を支え、もう片方の手を滑らせて秘裂に指を這わせた。
「……あ、んっ……」
お腹の奥がざわめき、私の口から甘ったるい声が零れる。けれど、その手はすぐに引いてしまい、次に濡れたそこに押し当てられたのは指じゃなかった。
もっと太くて、もっと硬くて熱い、何かだ。
「……あ……」
私は息を飲んだ。真上から彰人さんの声が降ってくる。
「本当はもっとここを可愛がって慣らせてあげたかったけど……もう俺の方が限界。これ以上煽られると多分、君をメチャメチャにしてしまうから……初めての君に苦痛を植え付けたくない。だからごめんね、愛美」
言い方はとても穏やかだった。限界と言いつつその顔には笑みも浮かんでいる。
でも、その熱っぽく見下ろしてくる目がそれが表面だけのことだと私に知らしめる。
余裕があるように見えてそうじゃなかった。そう見せかけているだけ。
おそらく初めてで怯えている私に対する気遣いだろう。
顔の横につけている彰人さんの手にも力が入り、うっすらと筋肉が浮き出ているのに気づいた時、私は躊躇いを捨てた。
そっと手を持ち上げて、彰人さんの肩に、そして首に滑らせる。
「彰人さん……好き……」
大丈夫だから来てって。その思いをこの手に、その言葉にこめて。
「……ありがとう、愛美」
彰人さんの顔が一瞬だけくしゃっと歪んだ。
「愛してる。だから……俺のものになってくれ」
真剣なまなざしになってそう告げた後、彰人さんは腰を慎重に進めた。
「……ぐっ……!」
狭い入り口が押し広げられる感覚に息が詰まる。
引きつったような痛みを感じたけど、その次に襲ってきた圧迫感と異物感の方がすごくて、痛みはわけないと思えた。
けれどすぐにブチッという小さくない衝撃の後に強烈な痛みがやってくる。
私の中の狭い道が悲鳴を上げている、そんな気がした。男性の指を三本も受け入れたのに、指とは質量も形も何もかもが違う灼熱の棒に焼かれているみたいで、中がギチギチと軋んで悲鳴を上げる。
「い、痛っ」
痛いのは分かっていたから言うつもりなかったのに、つい口に出てしまう。
これ以上苦痛の声を漏らすまいと唇を噛みしめたけれど、その端から獣じみた声が零れていく。
痛みに喘ぎ、思わず彰人さんの肩にぎゅっと縋りついて目を閉じる。その拍子に目の端から涙がこぼれていった。さっきまでの生理的なものではなくて、痛みによる涙だ。
「痛い? ごめんね」
彰人さんは痛々しそうな表情を浮かべてそう言った。
けれど腰の動きは止まらない。慎重に、けれど確実にじりじりと中に進んでいく。
「君の中は狭いから、俺の方も正直言ってキツイ」
どこかつらそうな笑みを浮かべる彰人さんに、私はこんな時なのに、男性でもこの行為がつらいことがあるのだろうかとふと思ってしまった。
けれど、どうやらちょっと違うらしい。
彰人さんは急ににやりと笑みを浮かべたと思ったら、頭を下げて私の唇にキスをして言った。
「でも、狭くてキツイけど、すごく気持ちいい。今、最高にいい気分だ……だってようやく君が手に入る」
その言葉が終わるか終わらないうちに彰人さんは腰をぐっと進めた。
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気がつくと、いつの間にか指が三本に増やされていた。
きっと私が口の中を這い回る舌や、突起を弄ぶ手に気を取られている間だと思う。
男の太い指を三本も受け入れたそこはいっぱいいっぱいで、とても窮屈だというのが自分でもわかる。
けれどそれなのに、私の中はお腹の奥が疼くたびに、蜜を零し、広げるように抜き差しを繰り返すその指を無意識のうちに締めつけようとする。
「……んぅ……ん、ん……」
うまく息ができなくて苦しかった。どこもかしこもいっぱいで、窮屈で。息が詰まる。
……なのに、苦しさの片隅に、どういうわけか甘く陶然となるような何が確かにあって、それがどんどん広がっていくのが分かった。
苦しいのに、気持ちいい。
「……んっ、あ……ふ……」
無意識のうちに彰人さんのシャツを握り締める手に力が入る。
その反対に、下半身は痺れ、ただただ彰人さんの手の動きに合わせて勝手に反応してしまう。
私の身体なのに、私の自由にはならない。彰人さんの思うままだ。
彼は私のどこをどう触れればどういう反応を示すのか、この短い触れあいの中であっという間に習得して、容赦なくそれを私に振るう。
さっきまではそれが怖かったはずなのに、今はもう何も考えられない。
私の中で彰人さんと、彼から与えられる感覚以外全部抜け落ちていった。
お腹の奥がぎゅうっと引き絞られていくような気がした。
彰人さんの手がうごめくたびに体がビクンと跳ね、そこから全身に疼きがさざなみのように広がっていく。
そして、その波の向こうで何かがやってこようとしていた。
「……ふぅ……んうっ……」
声を漏らし、身体をぶるっと震わせると、それに目ざとく気づいた彰人さんがようやくキスを中断して顔を上げた。
「イキそう? 中がヒクヒクしてるよ」
そう言いながら、空気を求めて涙目で喘ぐ私の中を浅くかき混ぜる。
「……んんっ、んっ」
のけぞった私の下半身でぐじゅっと湿った音がいっそう大きくなった。
ギリギリと私の中でますます何かが引き絞られていって、背筋を駆け上がっていく。
「いいよ、イッて?」
私の頭の横に片手をついて体重を支え、もう片方の手を動かして、その手に反応する私を見下ろしながら、彰人さんが嫣然と笑った。
なんて意地悪なんだろう。そう抗議したかった。でも私の口は喘ぐだけで言葉にはならなかった。
私の蜜にまぶされ濡れた親指が、私の敏感な花芯をぐりっと撫でさする。
それは今までの触れ方よりも強かったように思う。
それなのに私の身体はそれを快感として拾い上げ、脳髄に伝えてくる。
「……ふっ、あ、ああっ……!」
ぴくぴくと足が震えて、私の喉から勝手に甘い声が漏れた。
もうキスされていないのに、息が苦しい。なのにその息苦しさの合間に、勝手に喉から嬌声が漏れていく。
私の中で急速に更に何かがせり上がってきていた。
「……や、何か……変……」
喘ぎながらようやくそう口にすると、彰人さんが私の額にチュッとキスをして言った。
「大丈夫。変じゃないから。でも、もし怖いなら、俺の名前を呼ぶといい」
「……名前……? あ、あき、ひと、さん……?」
「そう。イクとき、俺に縋って、俺の事だけ見てて、俺の名前呼んで?」
平素だったら「何ですか、それ? どこの俺様ですか?」って突っ込み入れていたと思う。
だけどこの時の私は本当に何も考えられず、目の前で私という楽器を奏でている彰人さんが全てで。
「彰、人さん……」
「そう、それでいい」
……その言葉に逆らうことなんてできなかった。
胎内に入れた指が感じる所を掠める。と同時に親指がぐりぐりと強めにその蕾を押しつぶす。
その直後、脳天から背中、足先にまで一気にビリビリと電流が駆け抜けた。
「や! あ、ああっ、ん、……あ、ああああ……!」
シャツに縋った手にぐっと力が入り、その次の瞬間、私の中でその堰が一気に崩壊した。
「あ、彰人、さん……! 彰人さん……!」
私は言われた通りに彰人さんの名前を呼びながら、その白い波にさらわれていった。
彰人さんのシャツを掴んでいた手がシーツに落ちる。
ただ横になっていただけなのに、全力疾走したみたいに息が上がっていた。
頭も中も真っ白で、手も足もまったく力が入らなくて、こんにゃくみたいにフニャフニャだ。
だけど、ズキズキと疼くあそこの感覚だけはやけに敏感で、彰人さんの指が抜けていくその感触だけで声が漏れる。
「……んっ……」
力が入らないはずの内股がびくびくと震えた。
「可愛いね、本当に君は」
どこか嬉しさを含んだ声が上から降ってくる。
涙でにじんだ目を向けると、頬を緩めた彰人さんが私を見下ろしていて、目が合うと顔を寄せ頬に唇を押し当ててきた。
けれど触れるだけですぐに起き上がってしまう。
「……あ……」
ずっと上にあった重みと素肌にぬくもりを与えてくれていた体温が私の上からなくなった。
ぼうっとしながらも、私はそれがさびしいと思う。けれどすぐにその思いは霧散する。
なぜなら、私から身を起こした彰人さんがシャツを脱ぎ始めたからだ。
衣擦れの音に気づいてそっちに目を向けた私は、ベッド脇で露わになっていく裸体に思わず息を飲んだ。
それは適度に筋肉のついた、均整のとれたとても美しい肉体だった。
アスリートのようにガッチリした筋肉ではないけれど、スポーツとか何かをやって鍛えているのが一目で分かる。
この身体がグラビアを飾ったら、きっと目が肥えた女性たちですら足を止めて思わず見入ってしまうに違いない。
文句のつけようもないその裸体に思わず見とれていると、それに気づいた彰人さんがシャツを脱ぎすて床に脱ぎ捨てながら笑みを浮かべた。
そのとたん、自分のしてることに気づいて恥ずかしくなり、私はかぁと顔に血をのぼらせて顔をそむける。
クスクス笑う声が響いた。
「見ていていいのに。それどころか触ってくれても一向に構わないよ」
「……え、遠慮します!」
私は顔を背けたまま答えた。いくら覚悟を決めたとはいえ、裸体を触るほど開き直れるわけもない。見ているのだって恥ずかしいのに……。
いや、見たくないと言ったら嘘になるけど!
ただこんな間近じゃなくて心臓に負担かけない距離で観賞したいかなと……あああ、私こんな時に何考えてるの?
などと一人悶えていると、ガチガチという金属音が聞こえてきてハッとした。
次いで、衣擦れの音がして……。
顔を背けているから私からは何も見えない。けれど、その音が暗示していることは明らかだ。
私の身体がふるっと震えた。もちろん寒かったからじゃない。未知の事への不安と……期待で。
ギシッとベッドが軋み、男の重みで少しベッドの表面が傾ぐ。
脱ぎ終えた彰人さんが戻ってきたのだろう。見えないのに、力を失くし開いたままの足の間に彰人さんが再び身体を落ち着けたのが何となく気配で分かった。
ごくりと喉が鳴る。
肌が触れ合ったわけでも体温を感じたわけでもないのに、全身で彰人さんの存在と私を見下ろす視線を感じて、全身の皮膚がチリチリと疼いた。
「愛美」
「ひゃっ」
呼びかけられるのと同時に両足の膝を掬い上げられて、私は変な声を漏らす。
そのまま膝を持ち上げられて、お尻がシーツから浮き上がるのを感じて思わず彰人さんの方に顔を向けた私はすぐに後悔した。
だって、持ち上がって空に浮いた自分の両足と、その間に彰人さんが見えるって構図だよ?
それだけでも狼狽える理由としては十分なのに、今度は持ち上がった太ももの下に彰人さんの膝を入れられ、そのままの姿勢で固定された。
取らされた恥ずかしい姿勢に狼狽えるどころか今度は悲鳴を上げたくなった。
例えるならひっくり返ったカエル、だ。
ううん、もしくはおしめを替える赤ん坊の姿?
でもどっちでもいい。とにかく、普通生活するにはあり得ない姿勢で、しかも、空で両足開いて彰人さんの目前にぱっくり割れた秘部をさらしている状態なのだ。
恥ずかしさのあまりに目の前がクラクラしてきた。
息があがっているとか、足を持ち上げられたせいでお腹がちょっと圧迫されて苦しいとか、そんな物理的な理由だけじゃない。絶対違う。
「や、嫌です! こんな、格好っ……!」
首を横に振りながらぶわっと目に涙がにじむ。けれどそんな私に彰人さんは言った。
「ごめんね。でも、この姿勢と角度が多分一番楽だから……」
ごめんね、と言いつつ、ちっともすまない口調じゃない。
彰人さんは、私の膝から手を離して、片方は私の頭の横に置いて自分を支え、もう片方の手を滑らせて秘裂に指を這わせた。
「……あ、んっ……」
お腹の奥がざわめき、私の口から甘ったるい声が零れる。けれど、その手はすぐに引いてしまい、次に濡れたそこに押し当てられたのは指じゃなかった。
もっと太くて、もっと硬くて熱い、何かだ。
「……あ……」
私は息を飲んだ。真上から彰人さんの声が降ってくる。
「本当はもっとここを可愛がって慣らせてあげたかったけど……もう俺の方が限界。これ以上煽られると多分、君をメチャメチャにしてしまうから……初めての君に苦痛を植え付けたくない。だからごめんね、愛美」
言い方はとても穏やかだった。限界と言いつつその顔には笑みも浮かんでいる。
でも、その熱っぽく見下ろしてくる目がそれが表面だけのことだと私に知らしめる。
余裕があるように見えてそうじゃなかった。そう見せかけているだけ。
おそらく初めてで怯えている私に対する気遣いだろう。
顔の横につけている彰人さんの手にも力が入り、うっすらと筋肉が浮き出ているのに気づいた時、私は躊躇いを捨てた。
そっと手を持ち上げて、彰人さんの肩に、そして首に滑らせる。
「彰人さん……好き……」
大丈夫だから来てって。その思いをこの手に、その言葉にこめて。
「……ありがとう、愛美」
彰人さんの顔が一瞬だけくしゃっと歪んだ。
「愛してる。だから……俺のものになってくれ」
真剣なまなざしになってそう告げた後、彰人さんは腰を慎重に進めた。
「……ぐっ……!」
狭い入り口が押し広げられる感覚に息が詰まる。
引きつったような痛みを感じたけど、その次に襲ってきた圧迫感と異物感の方がすごくて、痛みはわけないと思えた。
けれどすぐにブチッという小さくない衝撃の後に強烈な痛みがやってくる。
私の中の狭い道が悲鳴を上げている、そんな気がした。男性の指を三本も受け入れたのに、指とは質量も形も何もかもが違う灼熱の棒に焼かれているみたいで、中がギチギチと軋んで悲鳴を上げる。
「い、痛っ」
痛いのは分かっていたから言うつもりなかったのに、つい口に出てしまう。
これ以上苦痛の声を漏らすまいと唇を噛みしめたけれど、その端から獣じみた声が零れていく。
痛みに喘ぎ、思わず彰人さんの肩にぎゅっと縋りついて目を閉じる。その拍子に目の端から涙がこぼれていった。さっきまでの生理的なものではなくて、痛みによる涙だ。
「痛い? ごめんね」
彰人さんは痛々しそうな表情を浮かべてそう言った。
けれど腰の動きは止まらない。慎重に、けれど確実にじりじりと中に進んでいく。
「君の中は狭いから、俺の方も正直言ってキツイ」
どこかつらそうな笑みを浮かべる彰人さんに、私はこんな時なのに、男性でもこの行為がつらいことがあるのだろうかとふと思ってしまった。
けれど、どうやらちょっと違うらしい。
彰人さんは急ににやりと笑みを浮かべたと思ったら、頭を下げて私の唇にキスをして言った。
「でも、狭くてキツイけど、すごく気持ちいい。今、最高にいい気分だ……だってようやく君が手に入る」
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