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第四章 宗教国奪還編

プロローグ

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 ———人生ってものは本当に呆気なく終わるんだな……。


 と、俺は目の前に迫る階段の段差を朧げに眺めながらそう思った。




<><><>
 

 

 突然だが、俺、鈴木晴人すずきはるとは生粋のオタクである。
 家の自分の部屋は漫画と小説が大量に入っている本棚が何個とあるし、グッズもショーケースがいっぱいになり、本棚の上にも所狭しと置いてあり、そこらのオタクなどとは比べ物にならないほどだ。

 そして数少ない友達が言うには、俺は厨二病らしい。
 だがこれに関しては違うと声を大にして言える。

 いや本当に絶対厨二病じゃないと思うんだ。
 流石に高校で厨二病を表に出す奴は、余程のバカかメンタルが強い人だと思うね。

 勿論俺は、あんな『ふふっ……我は暗黒に愛されし者……』とかみたいなことは言わないし、オッドアイにしたり眼帯をしたり腕に包帯巻いたりなんてしてない。
 まぁそんなのしてくる奴なんて漫画か小説くらいしかないと思うけど。
 だから正直、厨二病となぜ呼ばれているのかわからないんだがね。

 それに厨二病など中学3年生で既に終わっている……はずだ。
 え? 終わってるよね? もしかしてそれが終わってないから友達に言われてるのか?
 まぁもしそうなら俺に友達がいない理由が判明するんだけど。
 うん、悲しみ。

 閑話休題そんなことは置いといて

 俺は学校では話す友達も少ないため、常にライトノベルを読んでいる。
 ジャンルは、異世界転生や異世界転移系のファンタジー作品やラブコメが殆どかな。
 ファンタジーは、自身が体験することが絶対にできないことを主人公を通して疑似体験が出来るのが、ワクワクして俺にとって1番楽しいと思っている。
 それに悲しい現実を読んでいる時は忘れれるしな。

 ラブコメはファンタジーと同じくらいめちゃくちゃ好きだが、現実世界が舞台のため、現実ではこんなこと起きないんだろうなぁ……とどうしても思ってしまう。
 だって顔が普通なのに優しいってだけで美少女達が寄ってくるか?

 答えは否だ。

 そんなんで寄ってくるなら、全国のフツメン男子は——もちろん俺も含めて、めっちゃ紳士になるぞ。
 だってそれで可愛い彼女が出来るんだぞ?
 そんな奴人生ヌルゲーすぎるだろ。

 しかしそんなラブコメだが、俺は批判するわけではないが、ナヨナヨした主人公になぜ美少女が寄ってくるのかがわからない。
 そんな奴現実にいたら普通に面倒じゃないか?
 俺の偏見だが。

 それに優しいだけならフツメンよりも絶対イケメンを選ぶだろ。
 男子が、優しいフツメン女子より優しい美少女の方がいいと思うのと一緒だ。
 まぁこの世に本当にそんな人間がいるのか甚だ疑問だがな。

 だから俺は純愛系や、顔がフツメンでも芯が通っている奴が主人公のラブコメが好きだ。
 勿論見ていて悲しくなってしまうのは避けられないのだが、それでも楽しいのでやめられない。

 そんな素晴らしいオタ生活を満喫していたある日。
 それは俺が放課後の下校中に、いつも行く本屋でラノベを買おうとしている時だった。

 その日は念願の大好きなラノベの新刊の発売日だったため、走って向かっていた。

「はぁはぁ……毎日この時のために走っておいて良かったぜ……。少しでも早く読みたいと思うのがオタクだからな……」

 俺は毎日30分くらいランニングをしているので、そこいらの帰宅部よりもだいぶ体力がある。
 オタクは引き篭もりの体力弱者だと思われているが——勿論そう言う人が殆どだろうけど——実はオタクにも体力は必須なのだ。
 秋葉に行けば争奪戦、人気のくじは朝早くから行かないと売り切れるし。
 大人は車と言う最強の道具があるが、俺達学生にはよくて自転車しかない。
 そのため車勢に勝つには体力が必要なのだ。

 まぁそんな感じで体力はある俺は冬の道を舐めていたのだ。
 歩道橋の階段を駆け上がっていた時、最後の2段くらいの所で滑ってしまった。

 全ての時間がゆっくり流れる。
 そして何故だが分からないが、俺はひどく冷静だった。

 ああ……これは死んだな、間違いない。
 だって何十段も落ちるんだぜ?
 それも頭から一直線に。

 でもさ、本当は死ぬ前って走馬灯見るもんじゃないのかな?
 今全く走馬灯なんて見てないんだけど。
 なんなら目の前の階段の段しか見えないんですけど。

 嗚呼……俺が居なくなったら母さんと父さんと可愛い妹である瑞稀に迷惑をかけるだろうなぁ……。
 悲しんでくれると嬉しいけど……悲しんでほしくないとも思ってしまう。

 本当にごめんなさい、父さん母さん。
 こんな親不孝な息子で。
 そしてごめんな瑞稀……。
 一緒に買い物行こうって約束したのに。
 兄ちゃんは守れそうにないや……。

 そのまま俺は何もする事が出来ず、目の前が真っ暗になった。
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